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7-3 不安な気持ち

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 その後もニコラスはジェニファー達と一緒に過ごす時間を積極的にとるようにしていた。
仕事の合間にジョナサンの元を訪ねては絵本の読み聞かせをしたり、ボール投げで遊んであげたりと積極的に子育てに関わるようにしていた。

今もニコラスはジョナサンに積み木で遊ばせ、その傍らではジェニファーが2人の様子を見守っている。

ジェニファーはニコラスとジョナサンの間に徐々に信頼関係が出来上がってきているのを感じとっていた。
それは同時に、苦労ばかりしてきた自分の人生で一番穏やかな気持ちで過ごせる時間でもあったのだ。

(この幸せな時がいつまでも続けばいいのに……)

けれど近い将来、ここを出て行かなければならない。その事を考えるだけで、胸が締め付けられそうになる。
思わず目頭が熱くなりかけた時……。

「ジェニファー。どうかしたのか?」

不意にニコラスに声をかけられ、我に返った。

「マァマ?」

ジョナサンも不思議そうに首を傾げ、ジェニファーを見つめている。

「わ、私が何か?」

「いや……何故涙ぐんでいるのかと思って」

「あ、こ、これはちょっと目にゴミが入っただけです」

ゴシゴシ目をこすると、ジョナサンが近づいてきてジェニファーの顔を覗き込んできた。

「マァマ? イタイ?」

小さな手でジェニファーの頬に触れてくる。

「ジョナサン……」

ジェニファーは自分を心配するジョナサンが愛しくて、抱き寄せた。

「ジョナサン、あなたはとても優しい子ね。大好きよ」

「マァマ、スキ」

抱きあう2人をニコラスはじっと見つめている。

(本当に2人は親子のようだ。出来ればずっとここに残って貰いたいが……それは俺の身勝手な考えだ。彼女には彼女の生きる道があるのだから……)

そのとき。

「ニコラス様、少々よろしいでしょうか」

開いていた扉から執事長が現れた。

「どうかしたのか?」

「はい。フォルクマン伯爵から電話が入っております」

「!」

その言葉にジェニファーの肩がピクリと動く。

「分かった、すぐに行く」

ニコラスは立ち上がると、ジェニファーに声をかけた。

「ジェニファー。すまないが、ジョナサンを頼む」

「はい、分かりました」

頷くジェニファーの声が震えている。

「大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。いってらっしゃいませ」

「ああ」

ニコラスは頷くと、執事長と一緒に部屋を出て行った。

「フォルクマン伯爵から電話……」

明日はいよいよ伯爵がこの城へ来る日だ。
今でも目を閉じれば、伯爵が激怒して自分を怒鳴りつける姿が思い浮かぶ。

「……今も、私のことを憎んでいるのでしょうね……」

明日のことを考えると不安でたまらない。

「マァマ?」

すると、ジェニファーの不安な気持ちを感じ取ったのかジョナサンが顔を近付けてき
た。

「ごめんなさい、何でもないわ。それじゃ、積み木遊びの続きをしましょうか?」

「ウン!」

ジョナサンは笑顔で大きく頷き、ジェニファーは愛しい子の頭をそっと撫でた。

(そうよ、ジョナサンの前で不安な様子を見せてはいけないわ。この子の為にもしっかりしないと)


そして翌日。
フォルクマン伯爵が城に現れた。

招かれざる客人たちと共に――
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