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6-25 その日が来るまで

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 今、ジョナサンはジェニファーのベッドの上でスヤスヤと気持ちよさそうに眠りに就いている。

「……よく眠っているな。今迄は何度も愚図って目を覚ましていたのに」

「そうだったのですか?」

ニコラスの呟きに、ジェニファーは驚いて振り向く。

「ああ。それで俺もその度に起きてジョナサンを寝かせつけるのに苦労していたのだが……今夜はいつも以上に酷かった」

「……」

その話をジェニファーは黙って聞いていたが……やがて、意を決したようにニコラスを見上げた。

「その事ですが……私がここを去る日まで、ジョナサン様の傍に居させて頂けないでようか? どうかお願いいたします」

「去る日までって?」

本当は、ずっとここにいて欲しいと告げたい気持ちを押し殺してニコラスは尋ねた。

「それは、私がいなくてもジョナサンが大丈夫になるときまでです……。だから、提案させてください。3人で一緒に過ごす時間を作って欲しいのです。 私とニコラス様2人で面倒をみれば……いずれジョナサンは私がいなくてもニコラス様だけで大丈夫になる……と思うんです」

ジェニファーは精一杯の勇気を振り絞って自分の考えを口にした。

(ニコラスは私のことを良く思っていないのは分かっているわ。だけど……こうでもしなければ……)

ニコラスの反応が怖くてジェニファーは俯いた。
すると……。

「……いいのか?」

「え?」

予想外の言葉にジェニファーは顔を上げた。
すると目を見開いて自分を見つめているニコラスがいる。

「本当に、ジェニファーはそれでいいのか? 俺が2人の傍に居ても……」

ニコラスの瞳にはジェニファーの姿がはっきり映し出されている。こんなに真っすぐな瞳で見つめてくるニコラスは子供の頃以来に感じられた。

「は、はい。お願いします」

ジェニファーは思わず赤くなり、顔を背けた。

「分かった。では明日から、なるべく3人で一緒に過ごすことにしよう。書斎にジョナサンが遊べる場所を作ればいいな。いや、それよりも俺がジョナサンの部屋で仕事をすればいいだろうか?」

その言葉に、ジェニファーは慌てた。

「い、いえ。そこまでして頂かなくても大丈夫です。1日数時間の間でも一緒の時間が取れればいいので」

「いいや、それでも足りない。出来るだけ長く一緒にいたいから」

じっとジェニファーを見つめるニコラス。

まるで自分自身に向けられている言葉のように感じられたが、ジェニファーはすぐに心の中で否定した。

(まさかね、そんなはずないわ。だってニコラスが今も愛している人は……ジェニーなのだから。きっとジョナサンのことを言っているのよ)

「わ、分かりました……では明日から、どうぞよろしくお願いいたします」

「ああ。こちらこそよろしく。……それじゃ、悪いがジョナサンをよろしく頼む」

「はい、お任せください」

するとニコラスはベッドに跪くと、眠っているジョナサンの頬にキスした。

「おやすみ、ジョナサン」

「……」

その様子をじっと見つめるジェニファー。

(ニコラスは、本当にジョナサンを愛しているのね。……ジェニーとの愛の結晶の……)

ニコラスは立ち上がると、ジェニファーに視線を移す。

「おやすみ、ジェニファー」

「はい、お休みなさいませ」

短い挨拶を交わすと、ニコラスは部屋を後にした。


――パタン

扉を閉め、顔を上げたニコラスは驚いた。何故なら、シドが待っていたからだ。

「シド、何故ここにいるんだ? もう休むように言ったはずだが?」

「申し訳ございません。どうしても気になってしまったので。それでジェニファー様は……」

躊躇いがちにシドが尋ねる。

「大丈夫だ。暫くの間、ジェニファーはここに残ることになった」

「え? そうなのですか?」

「ああ。俺はもう休む。シドも今度こそ休めよ?」

「分かりました。失礼いたします」

シドが去って行く姿を見届けると、ニコラスも自分の部屋へ足を向けた――
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