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6-24 願い叶って
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「だが、もうジェニファーに頼らないと決めたんだ。これ以上、俺の都合で迷惑をかけるわけには……」
ためらうニコラスにシドは叱責する。
「そんなことを言っている場合ですか!? ジョナサン様がそんなに激しく泣いているのに、泣き止ませることが出来ないではありませんか!」
「そ、それは……」
「ウワアアアアンッ! マァマッ! ドコ? マァマァ~ッ!」
顔を真っ赤にさせ、増々激しく泣きじゃくるジョナサン。
「ジョナサン様はジェニファー様を自分の母親だと信じてやみません。今だって、こんなにママと呼んで求めているではありませんか? それにジェニファー様がジョナサン様に会いたいと申し出てきたのですよ!?」
「え……? ジェニファーがそう言ったのか……?」
「はい、そうです。ジェニファー様が俺に、ジョナサン様に会わせてもらいたと願い出てきたのです!」
「そんな……ジェニファーが……? 俺には願いは何もないと言っていたのに……」
泣きじゃくるジョナサンを抱きしめるニコラス。
「それは、自分からはニコラス様に頼みにくいからと話されていました」
「成程……やはりジェニファーに会いに行ってたのか。まぁ多分、あの様子ではそうだろうとは思ったが」
「……申し訳ございません。ですが、どうしてもジェニファー様を放っておくことが出来なかったので」
シドは頭を下げた。
「いや、謝ることはない。確かにシドの言う通り、俺ではジョナサンをどうにかできそうにないからな。それでは今すぐ、ジェニファーの元へ行こう」
ニコラスは泣いているジョナサンを抱きかかえたまま部屋を出ると、シドも後をついてきた。
そこでニコラスは足を止め、振り向いた。
「シド」
「はい」
「ジェニファーの部屋には俺が1人で行く」
「え? ですが……」
「これは俺とジェニファーの問題だからな」
「!」
その言葉にシドの肩がピクリと跳ねる。
「シド、今夜の仕事はもう終わりにしていい。部屋でゆっくり休んでくれ」
「……分かりました。では、俺はこれで失礼いたします」
「ああ。又明日」
ニコラスはそれだけ告げるとシドをその場に残し、ジェニファーの部屋へ向かった。
「ジェニファー様……」
シドは遠ざかるニコラスの背中を見つめ……唇を噛みしめるのだった――
****
その頃。
ジェニファーはポリーが淹れてくれたハーブティーを飲んでいた。
「いかがですか? ジェニファー様」
トレーを手にしたポリーが尋ねる。
「とても美味しいわ。ありがとう、ポリー」
「あの、それでジェニファー様……まだお休みにならないのですか?」
「ええ。……待っているの」
「え? 待っているって……?」
怪訝そうに首を傾げるポリー。
「私はもう大丈夫だから、ポリーはもう休んで?」
「はい。では失礼致します」
ポリーが部屋を出て行こうと扉を開けたとき、眼前にジョナサンを腕に抱いたニコラスと遭遇した。
「旦那様! 一体どうされたのですか!?」
「ジョナサンを連れて来た。ジェニファーに会わせてくれ!」
「ウワァアアア~ンッ! マァマ~ッ!」
「え!? ジョナサンッ!?」
ジェニファーは椅子から立ち上がると、よろめきながら泣いているジョナサンの元へ向かった。
「ジェニファー……」
その姿を見つめるニコラス。
「マァマッ!!」
ジョナサンがジェニファーに気付き、小さな手を伸ばした。
「ジョナサンッ! あっ!」
駆け寄ろうとしたジェニファーが転びそうになった次の瞬間。
「危ないっ!」
ニコラスは片手でジェニファーを受け止めた。
「ウワアアアンッ! マァマッ! マァマ~ッ!」
ニコラスの腕の中で、ようやく会えたジェニファーにジョナサンがしがみつく。
「ジョナサン……ずっとあなたに会いたかったわ」
困惑するニコラスの腕の中で、ジェニファーはジョナサンをしっかり抱きしめるのだった――
ためらうニコラスにシドは叱責する。
「そんなことを言っている場合ですか!? ジョナサン様がそんなに激しく泣いているのに、泣き止ませることが出来ないではありませんか!」
「そ、それは……」
「ウワアアアアンッ! マァマッ! ドコ? マァマァ~ッ!」
顔を真っ赤にさせ、増々激しく泣きじゃくるジョナサン。
「ジョナサン様はジェニファー様を自分の母親だと信じてやみません。今だって、こんなにママと呼んで求めているではありませんか? それにジェニファー様がジョナサン様に会いたいと申し出てきたのですよ!?」
「え……? ジェニファーがそう言ったのか……?」
「はい、そうです。ジェニファー様が俺に、ジョナサン様に会わせてもらいたと願い出てきたのです!」
「そんな……ジェニファーが……? 俺には願いは何もないと言っていたのに……」
泣きじゃくるジョナサンを抱きしめるニコラス。
「それは、自分からはニコラス様に頼みにくいからと話されていました」
「成程……やはりジェニファーに会いに行ってたのか。まぁ多分、あの様子ではそうだろうとは思ったが」
「……申し訳ございません。ですが、どうしてもジェニファー様を放っておくことが出来なかったので」
シドは頭を下げた。
「いや、謝ることはない。確かにシドの言う通り、俺ではジョナサンをどうにかできそうにないからな。それでは今すぐ、ジェニファーの元へ行こう」
ニコラスは泣いているジョナサンを抱きかかえたまま部屋を出ると、シドも後をついてきた。
そこでニコラスは足を止め、振り向いた。
「シド」
「はい」
「ジェニファーの部屋には俺が1人で行く」
「え? ですが……」
「これは俺とジェニファーの問題だからな」
「!」
その言葉にシドの肩がピクリと跳ねる。
「シド、今夜の仕事はもう終わりにしていい。部屋でゆっくり休んでくれ」
「……分かりました。では、俺はこれで失礼いたします」
「ああ。又明日」
ニコラスはそれだけ告げるとシドをその場に残し、ジェニファーの部屋へ向かった。
「ジェニファー様……」
シドは遠ざかるニコラスの背中を見つめ……唇を噛みしめるのだった――
****
その頃。
ジェニファーはポリーが淹れてくれたハーブティーを飲んでいた。
「いかがですか? ジェニファー様」
トレーを手にしたポリーが尋ねる。
「とても美味しいわ。ありがとう、ポリー」
「あの、それでジェニファー様……まだお休みにならないのですか?」
「ええ。……待っているの」
「え? 待っているって……?」
怪訝そうに首を傾げるポリー。
「私はもう大丈夫だから、ポリーはもう休んで?」
「はい。では失礼致します」
ポリーが部屋を出て行こうと扉を開けたとき、眼前にジョナサンを腕に抱いたニコラスと遭遇した。
「旦那様! 一体どうされたのですか!?」
「ジョナサンを連れて来た。ジェニファーに会わせてくれ!」
「ウワァアアア~ンッ! マァマ~ッ!」
「え!? ジョナサンッ!?」
ジェニファーは椅子から立ち上がると、よろめきながら泣いているジョナサンの元へ向かった。
「ジェニファー……」
その姿を見つめるニコラス。
「マァマッ!!」
ジョナサンがジェニファーに気付き、小さな手を伸ばした。
「ジョナサンッ! あっ!」
駆け寄ろうとしたジェニファーが転びそうになった次の瞬間。
「危ないっ!」
ニコラスは片手でジェニファーを受け止めた。
「ウワアアアンッ! マァマッ! マァマ~ッ!」
ニコラスの腕の中で、ようやく会えたジェニファーにジョナサンがしがみつく。
「ジョナサン……ずっとあなたに会いたかったわ」
困惑するニコラスの腕の中で、ジェニファーはジョナサンをしっかり抱きしめるのだった――
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