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6-19 夕食の席
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――17時
執事長のカルロスがジェニファーの部屋を訪ねてきた。傍にはココが控えている。
「ジェニファー様、お身体の具合はいかがですか?」
ソファに座っていたジェニファーは笑顔で返事をした。
「はい。ゆっくり休ませていただいたお陰で良くなりました。お城の皆様には感謝の気持ちで一杯です」
「いえ、ジェニファー様のお世話をするのは当然のことですから。では今夜の夕食はニコラス様と御一緒でもよろしいでしょうか?」
その言葉にジェニファーは驚いた。
「え? 私とですか? ニコラス様がおっしゃったのでしょうか?」
「ええ、勿論です。では18時半になりましたら、お迎えに参ります」
カルロスが部屋を去ると、ココがジェニファーに話しかけてきた。
「ジェニファー様。ニコラス様とお食事なら、お着換えいたしましょう!」
「え? 着替え……そうね」
ジェニファーは白いブラウスにブラウンのロングスカートという、いつもの普段着姿だった。
(そうね……ニコラスの前で、あまり失礼な格好はしてはいけないわね)
「分かったわ。それなら着替えることにするわ」
幸いクローゼットの中には、『ボニート』へ来る前に購入した服が入っている。
「ではお手伝いさせて下さい!」
こうしてジェニファーはココの助けを借りて着替えを始めた――
****
――18時半
一足早く、ダイニングルームでニコラスはジェニファーが来るのを待っていた。
ジェニファーとの食事は今回で2度目だが、前回とは訳が違う。
何しろ今回はジェニファーが実は、あの時のジェニーだったことが発覚して初めて共にする食事だったからだ。
(前回は冷たい態度で接してしまったからな……)
そんなことを考えていた時。
「ニコラス様、ジェニファー様をお連れいたしました」
執事長が車いすに乗ったジェニファーを連れてダイニングルームに現れた。
「あぁ、御苦労……!」
車椅子に乗ったジェニファーはネイビーカラーのスリーピースドレスを着ていた。
その有様は、生前のジェニーを彷彿させる。
思わず途中で言葉を失うニコラス。
執事長はジェニファーをテーブルの前まで車椅子を押して連れて来た。
「ありがとうございます」
「いえ、それでは失礼いたします」
ジェニファーが執事長に礼を述べると、彼はニコリと笑みを浮かべて去っていった。
「あの、ニコラス様。わざわざ車椅子まで用意して頂き、ありがとうございます」
早速ジェニファーは礼を述べ、今まで彼女に見惚れていたニコラスは我に返った。
「あ、ああ。気にしないでくれ。その車椅子はジェニーが使っていた物なんだ」
「え……? ジェニーが使っていたのですか?」
「だからわざわざ用意したとか、思う必要はないからな?」
「そうですね……お気遣いいただき、ありがとうございます」
シドから聞いた話が頭にまだ残っているジェニファーは複雑な心境になる。
ニコラスはそんなジェニファーの気持ちに気付くことなく、テーブルに置かれたベルを鳴らすと、次々と給仕たちの手によって料理が並べられていく。
料理が運ばれる度に、恐縮そうに会釈するジェニファーを見つめながらニコラスは思った。
やはりフォルクマン伯爵は自分に嘘をついていたのだと――
執事長のカルロスがジェニファーの部屋を訪ねてきた。傍にはココが控えている。
「ジェニファー様、お身体の具合はいかがですか?」
ソファに座っていたジェニファーは笑顔で返事をした。
「はい。ゆっくり休ませていただいたお陰で良くなりました。お城の皆様には感謝の気持ちで一杯です」
「いえ、ジェニファー様のお世話をするのは当然のことですから。では今夜の夕食はニコラス様と御一緒でもよろしいでしょうか?」
その言葉にジェニファーは驚いた。
「え? 私とですか? ニコラス様がおっしゃったのでしょうか?」
「ええ、勿論です。では18時半になりましたら、お迎えに参ります」
カルロスが部屋を去ると、ココがジェニファーに話しかけてきた。
「ジェニファー様。ニコラス様とお食事なら、お着換えいたしましょう!」
「え? 着替え……そうね」
ジェニファーは白いブラウスにブラウンのロングスカートという、いつもの普段着姿だった。
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「分かったわ。それなら着替えることにするわ」
幸いクローゼットの中には、『ボニート』へ来る前に購入した服が入っている。
「ではお手伝いさせて下さい!」
こうしてジェニファーはココの助けを借りて着替えを始めた――
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――18時半
一足早く、ダイニングルームでニコラスはジェニファーが来るのを待っていた。
ジェニファーとの食事は今回で2度目だが、前回とは訳が違う。
何しろ今回はジェニファーが実は、あの時のジェニーだったことが発覚して初めて共にする食事だったからだ。
(前回は冷たい態度で接してしまったからな……)
そんなことを考えていた時。
「ニコラス様、ジェニファー様をお連れいたしました」
執事長が車いすに乗ったジェニファーを連れてダイニングルームに現れた。
「あぁ、御苦労……!」
車椅子に乗ったジェニファーはネイビーカラーのスリーピースドレスを着ていた。
その有様は、生前のジェニーを彷彿させる。
思わず途中で言葉を失うニコラス。
執事長はジェニファーをテーブルの前まで車椅子を押して連れて来た。
「ありがとうございます」
「いえ、それでは失礼いたします」
ジェニファーが執事長に礼を述べると、彼はニコリと笑みを浮かべて去っていった。
「あの、ニコラス様。わざわざ車椅子まで用意して頂き、ありがとうございます」
早速ジェニファーは礼を述べ、今まで彼女に見惚れていたニコラスは我に返った。
「あ、ああ。気にしないでくれ。その車椅子はジェニーが使っていた物なんだ」
「え……? ジェニーが使っていたのですか?」
「だからわざわざ用意したとか、思う必要はないからな?」
「そうですね……お気遣いいただき、ありがとうございます」
シドから聞いた話が頭にまだ残っているジェニファーは複雑な心境になる。
ニコラスはそんなジェニファーの気持ちに気付くことなく、テーブルに置かれたベルを鳴らすと、次々と給仕たちの手によって料理が並べられていく。
料理が運ばれる度に、恐縮そうに会釈するジェニファーを見つめながらニコラスは思った。
やはりフォルクマン伯爵は自分に嘘をついていたのだと――
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