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6-18 存在価値

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「電話って……一体、何のために?」

尋ねるジェニファーの声が震える。

「申し訳ございません。詳しくは聞いていないのですが、恐らく誤解を解く為かと思います」

「誤解を解く?」

何のことか分からなかった。

「それは恐らくフォルクマン伯爵がジェニファー様に抱いている負の感情のことだと思います」

するとポツリとジェニファーがポツリと本音を口にした。

「別に誤解では無いのに。理由はどうあれ、あの日ジェニーの具合が悪いのを分かっていて、町に遊びに行ったのは事実なのだから」

「ですが、それこそが誤解ではありませんか。ジェニファー様が町に行かれたのはジェニー様から命令されたからですよね? ジェニファー様が拒否したにも関わらず、自分の立場が上なのをいいことに、命令したようなものです!」

「シド……」

いつになく、強い口調のシドにジェニファーは言葉を無くす。

「! あ……も、申し訳ありません。つい、大声を出してしまいました。驚かれましたよね……? もしかして怖がらせてしまいましたか?」

伏し目がちに尋ねるシド。ジェニファーにだけは、どうしても自分のことを恐れられたくは無かった。

「少しは驚いたけど別に怖くは無いわ。だって子供の頃からシドは優しい人だって知っているから」

「ありがとうございます。そろそろ城の見張りの交代時間なので、失礼します」

赤くなった顔を見られない為に部屋を出て行こうと踵を返したとき、ジェニファーが呼び止めた。

「待って、シド」

「な、何か?」

「前から聞きたかったのだけど……、何故こんなに厳重に城の警備をしているの?」

「それは……ニコラス様を暗殺の危機から守る為です」

「え!? だってそれは子供の頃の話でしょう? 今はニコラスが当主になったからその心配は無くなったのでは無かったの?」

ジェニファーの顔が青ざめる。

「そうなのですが……現状は警備を怠ってはいけない状況です」

「そんな……。それじゃ、ジェニーと結婚している時もニコラスは暗殺の危機に置かれていたの?」

「それは少し違います。あの時は、そのような状況ではありませんでした」

「どうして?」

「フォルクマン伯爵という後ろ盾があったからです。あの方は伯爵家の中でも名門でした。鉱山を所有している為、かなり資産家で権力をお持ちの方だったのです。その娘であるジェニー様と婚姻されていた時は平穏なものでした」

「そう……だったの……?」

話を聞いているジェニファーの顔色が悪くなっていく。

「あの、ジェニファー様……大丈夫でしょうか?」

シドが心配そうに声をかける。

「ええ……私なら、大丈夫よ。ごめんなさい、これから見張りに行かなければならないのに引き留めてしまったわね」

「いえ。そんなことは……では、これで俺は失礼します」

シドは一礼すると扉へ向かい、部屋を出る直前に振り返った。

「あの、ジェニファー様」

「何?」

「俺は……ジェニファー様がテイラー侯爵家に来てくれたことを感謝しています。又ジェニファー様に会えて嬉しいです」

「シド……?」

ジェニファーは一瞬目を見開き、笑顔になった。

「ありがとう、シド。私もシドに再会出来て嬉しかったわ」

「! し、失礼します!」

一礼すると、シドは大股で去って行った。

「シド……私を元気づけようとしてくれたのね」

ジェニファーは改めて思った。
やはり自分との結婚は、ニコラスにとって何の得も無い物だったのだと。

そしてその夜。
ジェニファーは更なる追い打ちをかけられることになる――

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