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5-6 知られざるジェニーの過去 6
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興奮した様子で話しているため、ジェニーが何を言っているのか良く理解出来なかった。
『落ち着いて下さい、ジェニーさん』
泣いているジェニーの背中を優しく撫でると、彼女は顔を上げた。
『どういうことなのか、もう一度詳しくお話聞かせて貰えませんか?』
『はい、シスター……』
顔を上げたジェニーの頬は涙で濡れいる。その涙をジェニーはハンカチで押さえながら、ゆっくり話始めた。感情が抑えきれないのか、時折嗚咽を漏らしながら……。
**
昨年休暇で別荘に滞在していた時に、突然ニコラス・テイラーと名乗る人物が従者を連れて訪ねてきたのだ。
伝えに来た使用人から名前を聞いた時、どんな人物なのかジェニーはすぐに分かった。一度も会った事は無かったけれども、初恋の相手の名前だったからだ。
しかも何も事情を知らない父親は今、別荘にはいない。
ジェニーはすぐに応接室に通されていたニコラスに会いに行った。
初めて会うニコラスは、とても美しい青年でジェニーは一目で恋に落ちてしまい……気付けば口にしていた。
『久しぶり、ニコラス。ずっとあなたに会いたかったわ』
と——
そこから先の流れはスムーズだった。
ニコラスは定期的にジェニーに会いに来て、2人は交流を深めていくようになった。
父親にはボニートの町で偶然知り合い、互いにその場で惹かれてしまったと説明をす
ると納得してくれた。
何しろ、相手は名門の侯爵家。フォルクマン伯爵家にとっては、申し分の相手だったからだ。
そして出会って半年で婚約、来月には結婚することに決まったのだが……。
**
『私……ずっと、ずっと後悔していたんです。だってニコラスが本当に好きだった相手は私じゃない。ジェニファーだったのだから。だけど彼のことを愛してしまったんです。どうしても彼と結婚したかった。だって私はずっと病弱で、伯爵家に生まれたのに社交界に出たことも無かったんです。当然恋だって、このチャンスを逃せば誰とも恋愛も出来ないし結婚だって出来ないと思ってそれで……ゴホッゴホッ!」
興奮しすぎたせいなのか、ジェニーが激しく咳き込んだ。
『落ち着いて下さい、ジェニーさん。興奮すると身体に障りますよ?』
『……はい、御心配おかけして……すみません』
肩で息をしながら謝るジェニー。
それにしても不思議だ。いくら二人が似ていると言っても、所詮は全くの別人。
その事に相手の男性は気付かなかったのだろうか?
『ジェニーさん。一つお聞きしたいのですが、相手の男性はジェニーさんが別人であることに気付かれなかったのですか?』
『そのことですけど……ニコラスが話してくれました。彼には腹違いの弟がいて、当主の座を狙って争っていたそうです。何度も暗殺の危機にあったことがあって……ある日、毒殺されかかったことがあったそうなのです』
『毒殺ですって!?』
思わず声を上げてしまった。
『はい。それでニコラスは1週間ほど死の淵を彷徨い、目が覚めた時には記憶喪失になってしまったそうなのです。時間の経過と共に、徐々に記憶は戻って来ましたが……ジェニファーと過ごした子供の頃の記憶が今も曖昧だそうです。今回、昔の初恋相手に会いに来たのは、侯爵家の後を継ぐのが結婚の条件をつきつけられたそうなのです』
『それで、かつての初恋の相手が忘れられず……貴女を捜しあてて会いに来たのですね?』
『はい……』
ジェニーが小さく頷いた――
『落ち着いて下さい、ジェニーさん』
泣いているジェニーの背中を優しく撫でると、彼女は顔を上げた。
『どういうことなのか、もう一度詳しくお話聞かせて貰えませんか?』
『はい、シスター……』
顔を上げたジェニーの頬は涙で濡れいる。その涙をジェニーはハンカチで押さえながら、ゆっくり話始めた。感情が抑えきれないのか、時折嗚咽を漏らしながら……。
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昨年休暇で別荘に滞在していた時に、突然ニコラス・テイラーと名乗る人物が従者を連れて訪ねてきたのだ。
伝えに来た使用人から名前を聞いた時、どんな人物なのかジェニーはすぐに分かった。一度も会った事は無かったけれども、初恋の相手の名前だったからだ。
しかも何も事情を知らない父親は今、別荘にはいない。
ジェニーはすぐに応接室に通されていたニコラスに会いに行った。
初めて会うニコラスは、とても美しい青年でジェニーは一目で恋に落ちてしまい……気付けば口にしていた。
『久しぶり、ニコラス。ずっとあなたに会いたかったわ』
と——
そこから先の流れはスムーズだった。
ニコラスは定期的にジェニーに会いに来て、2人は交流を深めていくようになった。
父親にはボニートの町で偶然知り合い、互いにその場で惹かれてしまったと説明をす
ると納得してくれた。
何しろ、相手は名門の侯爵家。フォルクマン伯爵家にとっては、申し分の相手だったからだ。
そして出会って半年で婚約、来月には結婚することに決まったのだが……。
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『私……ずっと、ずっと後悔していたんです。だってニコラスが本当に好きだった相手は私じゃない。ジェニファーだったのだから。だけど彼のことを愛してしまったんです。どうしても彼と結婚したかった。だって私はずっと病弱で、伯爵家に生まれたのに社交界に出たことも無かったんです。当然恋だって、このチャンスを逃せば誰とも恋愛も出来ないし結婚だって出来ないと思ってそれで……ゴホッゴホッ!」
興奮しすぎたせいなのか、ジェニーが激しく咳き込んだ。
『落ち着いて下さい、ジェニーさん。興奮すると身体に障りますよ?』
『……はい、御心配おかけして……すみません』
肩で息をしながら謝るジェニー。
それにしても不思議だ。いくら二人が似ていると言っても、所詮は全くの別人。
その事に相手の男性は気付かなかったのだろうか?
『ジェニーさん。一つお聞きしたいのですが、相手の男性はジェニーさんが別人であることに気付かれなかったのですか?』
『そのことですけど……ニコラスが話してくれました。彼には腹違いの弟がいて、当主の座を狙って争っていたそうです。何度も暗殺の危機にあったことがあって……ある日、毒殺されかかったことがあったそうなのです』
『毒殺ですって!?』
思わず声を上げてしまった。
『はい。それでニコラスは1週間ほど死の淵を彷徨い、目が覚めた時には記憶喪失になってしまったそうなのです。時間の経過と共に、徐々に記憶は戻って来ましたが……ジェニファーと過ごした子供の頃の記憶が今も曖昧だそうです。今回、昔の初恋相手に会いに来たのは、侯爵家の後を継ぐのが結婚の条件をつきつけられたそうなのです』
『それで、かつての初恋の相手が忘れられず……貴女を捜しあてて会いに来たのですね?』
『はい……』
ジェニーが小さく頷いた――
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