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4−11 仲の良い2人
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「え? ダン?」
「ジェニファー! まさかまたこんなにすぐに会えるとは思わなかったよ!」
ダンは笑顔で駆け寄ると、ジェニファーを強く抱きしめてきた。
「え!? キャアッ!」
その様子に遠くから様子を伺っていたシドが反応したのは言うまでもない。
「あ! あいつ! ジェニファー様に何てことを……!」
自分のことは棚に上げ、嫉妬心を燃やすシド。
しかし当然の如く、2人はシドに見られている等知る由も無い。
一方、町中で強く抱きしめられたジェニファーは身をよじってダンから離れた。
「ちょ、ちょっとダン。又会えて嬉しい気持ちは分かるけど、ここは外なのよ? 人の目もあるのだから、こんなことしたら駄目じゃない。私たちはもうお互い子供じゃないのだから」
少しだけ上目遣いで注意するジェニファー。
「つまり、それって少しは俺のことを意識してくれているってことか?」
ダンは笑顔になる。シドにジェニファーを愛していることを白状したダンは、もう自分の気持ちを抑えることをやめることにしたのだ。
「勿論よ、ダン。あなたはもう立派な男の人よ。だって私がいくら背伸びしたって、もうあなたの頭を撫でてあげることが出来ないのだもの」
「あのなぁ、頭を撫でるって一体何だよ」
ダンは不満そうに唇を尖らせる。
「でも昔はよく、あなたの頭を撫でてあげていたのは事実じゃない。ダンは私の大切な弟なんだもの。それとも駄目だった?」
「駄目ってことは無いけど、弟って……」
ジェニファーに弟と言われたことはショックではあったが、それでも愛する女性から『大切』と言われたことは嬉しかった。
(まぁいいか。今は弟でも。これから俺を1人の男として意識して貰えればいいんだからな)
「ところでジェニファー。今日は何しに町へ出てきたんだ? それにみたところ1人で来ているようだけど、子供はどうしたんだ?」
「ええ、1人で来ているわ。買い物のついでに、どうしても行ってみたいところがあったのよ。ジョナサンは今日は他の人が見てくれているの」
「買い物があるのか? それは丁度良かった。俺も今品物の仕入れで、あちこち店を回っている所なんだ。ジェニファーの買い物に付き合わせてくれよ」
「そうね。ダンが一緒に買い物に付き合ってくれると助かるわ。むしろ私からお願いしたい位よ」
ジェニファーは笑顔で頷く。
「え? それって……」
(俺が必要ってことか?)
ダンの胸が高鳴ったそのとき。
「サーシャへプレゼントを買って送りたいの。一緒に選んでもらえると嬉しいわ」
「え? 買い物ってサーシャへのプレゼントを買う為だったのか? でもどうしてなんだ?」
「サーシャはね、私がニコラスの元へ嫁ぐ旅費を出してくれたのよ」
「え!? そうだったのか? サーシャの奴、俺にはそんなこと一切話さなかったぞ?」
「ダンのことを心配させたくなかったのでしょう? 本当にサーシャは心が優しい、いい子だわ。私の為に今迄働いて溜めていた大切なお金をつかわせてしまったのだから」
その横顔はどこか寂しげだった。
「ジェニファー。まさか侯爵家ではジェニファーに支度金を払わなかったのか?」
「いいえ、払ってくれたわ。だけど……」
言葉を詰まらせたジェニファーの様子に、ダンはピンときた。
「まさか、おふくろが金を奪ったのか?」
「え、ええ。そうなの」
誤魔化しても仕方がない。ジェニファーは素直に頷く。
「くそっ! おふくろの奴……俺を売っただけじゃ飽き足らず、ジェニファーの支度金にまで手を付けるなんて最低だ! いいぜ、ジェニファー。一緒にサーシャへ贈るプレゼントを買おう」
「ええ。それじゃ、この店に一緒に入らない?」
ジェニファーは目の前の店を指さした。
「アクセサリー屋か、うん。いいな。仕入れの品も見つかりそうだ。中へ入ろう」
ダンは扉を開けて中へ入るとジェニファーもその後に続いた。
扉が閉まると、物陰から2人の様子を見ていたシドが出てきた。
「アクセサリーの店か。まさか、行ってみたい場所とは、ここのことだったのだろうか?」
この店がジェニファーにとってどのような意味合いを持つ店なのか。
シドには知る由も無かった――
「ジェニファー! まさかまたこんなにすぐに会えるとは思わなかったよ!」
ダンは笑顔で駆け寄ると、ジェニファーを強く抱きしめてきた。
「え!? キャアッ!」
その様子に遠くから様子を伺っていたシドが反応したのは言うまでもない。
「あ! あいつ! ジェニファー様に何てことを……!」
自分のことは棚に上げ、嫉妬心を燃やすシド。
しかし当然の如く、2人はシドに見られている等知る由も無い。
一方、町中で強く抱きしめられたジェニファーは身をよじってダンから離れた。
「ちょ、ちょっとダン。又会えて嬉しい気持ちは分かるけど、ここは外なのよ? 人の目もあるのだから、こんなことしたら駄目じゃない。私たちはもうお互い子供じゃないのだから」
少しだけ上目遣いで注意するジェニファー。
「つまり、それって少しは俺のことを意識してくれているってことか?」
ダンは笑顔になる。シドにジェニファーを愛していることを白状したダンは、もう自分の気持ちを抑えることをやめることにしたのだ。
「勿論よ、ダン。あなたはもう立派な男の人よ。だって私がいくら背伸びしたって、もうあなたの頭を撫でてあげることが出来ないのだもの」
「あのなぁ、頭を撫でるって一体何だよ」
ダンは不満そうに唇を尖らせる。
「でも昔はよく、あなたの頭を撫でてあげていたのは事実じゃない。ダンは私の大切な弟なんだもの。それとも駄目だった?」
「駄目ってことは無いけど、弟って……」
ジェニファーに弟と言われたことはショックではあったが、それでも愛する女性から『大切』と言われたことは嬉しかった。
(まぁいいか。今は弟でも。これから俺を1人の男として意識して貰えればいいんだからな)
「ところでジェニファー。今日は何しに町へ出てきたんだ? それにみたところ1人で来ているようだけど、子供はどうしたんだ?」
「ええ、1人で来ているわ。買い物のついでに、どうしても行ってみたいところがあったのよ。ジョナサンは今日は他の人が見てくれているの」
「買い物があるのか? それは丁度良かった。俺も今品物の仕入れで、あちこち店を回っている所なんだ。ジェニファーの買い物に付き合わせてくれよ」
「そうね。ダンが一緒に買い物に付き合ってくれると助かるわ。むしろ私からお願いしたい位よ」
ジェニファーは笑顔で頷く。
「え? それって……」
(俺が必要ってことか?)
ダンの胸が高鳴ったそのとき。
「サーシャへプレゼントを買って送りたいの。一緒に選んでもらえると嬉しいわ」
「え? 買い物ってサーシャへのプレゼントを買う為だったのか? でもどうしてなんだ?」
「サーシャはね、私がニコラスの元へ嫁ぐ旅費を出してくれたのよ」
「え!? そうだったのか? サーシャの奴、俺にはそんなこと一切話さなかったぞ?」
「ダンのことを心配させたくなかったのでしょう? 本当にサーシャは心が優しい、いい子だわ。私の為に今迄働いて溜めていた大切なお金をつかわせてしまったのだから」
その横顔はどこか寂しげだった。
「ジェニファー。まさか侯爵家ではジェニファーに支度金を払わなかったのか?」
「いいえ、払ってくれたわ。だけど……」
言葉を詰まらせたジェニファーの様子に、ダンはピンときた。
「まさか、おふくろが金を奪ったのか?」
「え、ええ。そうなの」
誤魔化しても仕方がない。ジェニファーは素直に頷く。
「くそっ! おふくろの奴……俺を売っただけじゃ飽き足らず、ジェニファーの支度金にまで手を付けるなんて最低だ! いいぜ、ジェニファー。一緒にサーシャへ贈るプレゼントを買おう」
「ええ。それじゃ、この店に一緒に入らない?」
ジェニファーは目の前の店を指さした。
「アクセサリー屋か、うん。いいな。仕入れの品も見つかりそうだ。中へ入ろう」
ダンは扉を開けて中へ入るとジェニファーもその後に続いた。
扉が閉まると、物陰から2人の様子を見ていたシドが出てきた。
「アクセサリーの店か。まさか、行ってみたい場所とは、ここのことだったのだろうか?」
この店がジェニファーにとってどのような意味合いを持つ店なのか。
シドには知る由も無かった――
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