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3−24 予期せぬ事態
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ジェニファーとダンが久しぶりの再会を楽しんでいた頃――
「行ってきたわ! ガゼボに行ってお茶を出してきたわよ!」
ニコラスを伴ってジェニファーの部屋で待機していたシドとポリーの元へ、ココが慌てた様子で駆け込んできた。
「ありがとうございます! ココさん!」
「2人の様子はどうだった!?」
ポリーとココが同時に尋ねる。
「もちろん、2人はとっても良い雰囲気だったわ。……というか、男性の方が一方的にジェニファー様に好意を抱いている様子だったわ。でも、ジェニファー様もまんざらではない感じだったけど」
「何だって? ジェニファー様は結婚しているんだぞ? それなのに、好意を寄せているというのか?」
シド自身も好意を抱いているのだが、それでも他の男がジェニファーに自分と同じ気持ちを抱いているのが許せなかった。
「でも、確かダンという方はジェニファー様の従兄弟でしたよね?」
ポリーが首を傾げる。
「あら。相手が従兄弟でも結婚は出来るわ。現に私の知り合いも結婚している人たちがいるもの」
「「結婚!?」」
ココの言葉に、シドとポリーが同時に声を上げる。
「何をおかしなことを言ってるんだ? ジェニファー様はニコラス様の妻だ。結婚など出来るはずがないだろう?」
(そうだ……俺がいくらジェニファー様のことを好きでも……)
自分の胸の痛みを隠しつつ、シドは反論する。
「そうですよ、ココさん! おかしなこと言わないで下さい! 大体ジョナサン様はどうするのですか!?」
ポリーは床の上で積み木で遊んでいるジョナサンの方をちらりと見る。
「な、何よ! 2人で私を責めないでよ! ただ、私は知り合いが従兄弟と結婚したことを話しただけじゃないの!」
2人に責められ、言い返すココ。
その時、メイド長が部屋にかけつけてきた。
「皆! こんなところで、何をしているの! たった今、ニコラス様がお帰りになられたのよ!」
「「「え!?」」」
3人が驚きで声をあげたのは、言うまでもなかった――
****
――その頃
「ニコラス様、お帰りなさいませ」
執事長のカルロスが使用人たちを引き連れて、エントランスでニコラスを出迎えていた。
「ああ。皆、わざわざ出迎えありがとう。特に変わりは無かったか?」
周囲を見渡し……眉をひそめる。
「シドはどうした? いつも出迎えに来るはずなのに」
そこへ、シドがココといっしょに駆けつけてきた。
「ニコラス様! お帰りなさいませ!」
「お帰りさないませ、ニコラス様」
「シド、ジョナサンはどうした? それに、ジェニファーの姿も見えないが」
ニコラスの言葉に、シドとココは一瞬顔を見合わせた。
「どうした? 何かあったのか?」
「え、ええ。それが……実は今、ジェニファー様は……来客の方とお話中なのです」
シドは重い口を開いた。
「何? ジェニファーに客?」
眉をひそめるニコラス。
「そのような話、私は初耳だぞ? 一体、相手は誰なのだ?」
カルロスがシドに問い詰めた。
「はい……ジェニファー様の親戚です。今、ガゼボで話をしております」
「何? 話だと? それではジョナサンは今どうしている?」
「ジョナサン様は今、メイドのポリーがお世話をしております」
するとニコラスが険しい表情になる。
「ジョナサンの面倒も見ずに、来客と話をしているというのか?」
その声には苛立ちが含まれていた。
「確かに仰るとおりですが、それでもジェニファー様はとても良くジョナサン様のお世話をしておりました!」
ジェニファーの為に必死に弁明するシド。
「分かった、もういい。今からガゼボに行く。誰か荷物を頼む。シド、お前は一緒について来い」
「はい。分かりました」
シドは返事をしたが……その胸中は穏やかではいられなかった――
「行ってきたわ! ガゼボに行ってお茶を出してきたわよ!」
ニコラスを伴ってジェニファーの部屋で待機していたシドとポリーの元へ、ココが慌てた様子で駆け込んできた。
「ありがとうございます! ココさん!」
「2人の様子はどうだった!?」
ポリーとココが同時に尋ねる。
「もちろん、2人はとっても良い雰囲気だったわ。……というか、男性の方が一方的にジェニファー様に好意を抱いている様子だったわ。でも、ジェニファー様もまんざらではない感じだったけど」
「何だって? ジェニファー様は結婚しているんだぞ? それなのに、好意を寄せているというのか?」
シド自身も好意を抱いているのだが、それでも他の男がジェニファーに自分と同じ気持ちを抱いているのが許せなかった。
「でも、確かダンという方はジェニファー様の従兄弟でしたよね?」
ポリーが首を傾げる。
「あら。相手が従兄弟でも結婚は出来るわ。現に私の知り合いも結婚している人たちがいるもの」
「「結婚!?」」
ココの言葉に、シドとポリーが同時に声を上げる。
「何をおかしなことを言ってるんだ? ジェニファー様はニコラス様の妻だ。結婚など出来るはずがないだろう?」
(そうだ……俺がいくらジェニファー様のことを好きでも……)
自分の胸の痛みを隠しつつ、シドは反論する。
「そうですよ、ココさん! おかしなこと言わないで下さい! 大体ジョナサン様はどうするのですか!?」
ポリーは床の上で積み木で遊んでいるジョナサンの方をちらりと見る。
「な、何よ! 2人で私を責めないでよ! ただ、私は知り合いが従兄弟と結婚したことを話しただけじゃないの!」
2人に責められ、言い返すココ。
その時、メイド長が部屋にかけつけてきた。
「皆! こんなところで、何をしているの! たった今、ニコラス様がお帰りになられたのよ!」
「「「え!?」」」
3人が驚きで声をあげたのは、言うまでもなかった――
****
――その頃
「ニコラス様、お帰りなさいませ」
執事長のカルロスが使用人たちを引き連れて、エントランスでニコラスを出迎えていた。
「ああ。皆、わざわざ出迎えありがとう。特に変わりは無かったか?」
周囲を見渡し……眉をひそめる。
「シドはどうした? いつも出迎えに来るはずなのに」
そこへ、シドがココといっしょに駆けつけてきた。
「ニコラス様! お帰りなさいませ!」
「お帰りさないませ、ニコラス様」
「シド、ジョナサンはどうした? それに、ジェニファーの姿も見えないが」
ニコラスの言葉に、シドとココは一瞬顔を見合わせた。
「どうした? 何かあったのか?」
「え、ええ。それが……実は今、ジェニファー様は……来客の方とお話中なのです」
シドは重い口を開いた。
「何? ジェニファーに客?」
眉をひそめるニコラス。
「そのような話、私は初耳だぞ? 一体、相手は誰なのだ?」
カルロスがシドに問い詰めた。
「はい……ジェニファー様の親戚です。今、ガゼボで話をしております」
「何? 話だと? それではジョナサンは今どうしている?」
「ジョナサン様は今、メイドのポリーがお世話をしております」
するとニコラスが険しい表情になる。
「ジョナサンの面倒も見ずに、来客と話をしているというのか?」
その声には苛立ちが含まれていた。
「確かに仰るとおりですが、それでもジェニファー様はとても良くジョナサン様のお世話をしておりました!」
ジェニファーの為に必死に弁明するシド。
「分かった、もういい。今からガゼボに行く。誰か荷物を頼む。シド、お前は一緒について来い」
「はい。分かりました」
シドは返事をしたが……その胸中は穏やかではいられなかった――
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