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3-17 シド1
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「ジェニーが……あの写真を展示して良いと言ったの?」
ジェニファーの声が震える。
「はい、そうです」
「それって、いつのことなの……?」
「今から3年ほど前だったそうです。店主は15年前に撮影した写真の出来があまりに良かったので、展示をしたいと思ったそうです。ですが、名前しか聞いていなかったので連絡を取ることも出来ず、10年以上の歳月が流れてしまったのです」
「そうだったわ、あの写真は私の名前でお願いしたから……」
ジェニファーは15年前の記憶を思い出す。
「そして突然、その機会は訪れました。3年前にジェニー様があの写真店に現れました」
「3年前……それって、ニコラスとジェニーが再会した時期よね?」
「はい。3年前、お二人は婚約時期にこの城に滞在していたことがあります。恐らくその際にあの写真屋へ行ったのでしょう。店主の話だと、侍女らしき女性と二人で写真の現像を頼みたいと来店しました。その際に名前を聞いて、すぐに当時の写真を見せて、この写真に写るのはお客様でしょうかと尋ねたそうです」
「それで……ジェニーは……?」
声を押し殺してジェニファーは尋ねた。
「ジェニー様はかなり驚いていたそうです。そして、とても良く撮れているので是非展示して欲しいと返事を貰えたと話してくれました」
「そうだったの……ね……」
ジェニファーはスカートをギュッと握りしめて俯く。
(そんな……あの写真が、ジェニーに知られてしまっていたなんて……私、なんてことを……!)
「ジェニファー様? どうされたのです? 大丈夫ですか? 気分でも悪いのですか?」
ジェニファーの様子がおかしいことに気付き、シドは立ち上がって近くに来た。
「私、ジェニーを傷つけてしまっていたのだわ……なのに……謝りたくても、もうジェニーはこの世にいない……どうすればいいの……?」
どうしようもない罪悪感が胸に込み上げてくる。
「え? 何を仰っているのですか?」
シドが眉をひそめた。
「私ね……ジェニーと約束していたの。ニコラスと会ったその日の出来事は全て報告するって。だけどニコラスと写真を撮ったことは報告しなかったの。ジェニーに悪い気がして……ううん、違う。そうじゃないわ……あの写真だけは、自分が身代わりじゃなく、ジェニファーなんだと……その証が欲しかったの。さぞかしジェニーは驚いたでしょうね。だって彼女の信頼を裏切るようなことをしてしまったのだから。私って、なんて利己的なの……」
思わず俯くジェニファー。すると……。
「ジェニファー様!」
突然強く名前を呼ばれて顔を上げると、シドが両肩に手を置いてきた――
ジェニファーの声が震える。
「はい、そうです」
「それって、いつのことなの……?」
「今から3年ほど前だったそうです。店主は15年前に撮影した写真の出来があまりに良かったので、展示をしたいと思ったそうです。ですが、名前しか聞いていなかったので連絡を取ることも出来ず、10年以上の歳月が流れてしまったのです」
「そうだったわ、あの写真は私の名前でお願いしたから……」
ジェニファーは15年前の記憶を思い出す。
「そして突然、その機会は訪れました。3年前にジェニー様があの写真店に現れました」
「3年前……それって、ニコラスとジェニーが再会した時期よね?」
「はい。3年前、お二人は婚約時期にこの城に滞在していたことがあります。恐らくその際にあの写真屋へ行ったのでしょう。店主の話だと、侍女らしき女性と二人で写真の現像を頼みたいと来店しました。その際に名前を聞いて、すぐに当時の写真を見せて、この写真に写るのはお客様でしょうかと尋ねたそうです」
「それで……ジェニーは……?」
声を押し殺してジェニファーは尋ねた。
「ジェニー様はかなり驚いていたそうです。そして、とても良く撮れているので是非展示して欲しいと返事を貰えたと話してくれました」
「そうだったの……ね……」
ジェニファーはスカートをギュッと握りしめて俯く。
(そんな……あの写真が、ジェニーに知られてしまっていたなんて……私、なんてことを……!)
「ジェニファー様? どうされたのです? 大丈夫ですか? 気分でも悪いのですか?」
ジェニファーの様子がおかしいことに気付き、シドは立ち上がって近くに来た。
「私、ジェニーを傷つけてしまっていたのだわ……なのに……謝りたくても、もうジェニーはこの世にいない……どうすればいいの……?」
どうしようもない罪悪感が胸に込み上げてくる。
「え? 何を仰っているのですか?」
シドが眉をひそめた。
「私ね……ジェニーと約束していたの。ニコラスと会ったその日の出来事は全て報告するって。だけどニコラスと写真を撮ったことは報告しなかったの。ジェニーに悪い気がして……ううん、違う。そうじゃないわ……あの写真だけは、自分が身代わりじゃなく、ジェニファーなんだと……その証が欲しかったの。さぞかしジェニーは驚いたでしょうね。だって彼女の信頼を裏切るようなことをしてしまったのだから。私って、なんて利己的なの……」
思わず俯くジェニファー。すると……。
「ジェニファー様!」
突然強く名前を呼ばれて顔を上げると、シドが両肩に手を置いてきた――
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