109 / 237
3-12 ピクニック、そして寄り道
しおりを挟む
公園に到着した3人は、楽しい時を過ごした。
シドがジョナサンを抱きかかえてベンチ型ブランコに乗って遊ばせたり、芝生の上で歩く練習をさせ、シートを広げて昼食もとった。
公園には小さなふれあい動物園もあり、ウサギや羊に餌を与えたり……3人は楽しい時を過ごしたのだった――
――15時
ジョナサンはジェニファーの膝の上で、スヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。
「フフフ……遊び疲れたのかしらね。とってもよく眠っているわ」
ジェニファーはジョナサンの柔らかな髪をそっと撫でた。
「そうですね。でも本当にジョナサン様は可愛らしい方です。金色の髪の色はジェニファー様そっくりですね」
「そう? ありがとう」
まるで我が子のように愛し気にジョナサンの髪を撫で続けているジェニファーをシドは少しの間見つめ……尋ねた。
「ジェニファー様は子供が好きなのですか?」
「ええ、とっても好き。だってこんなにも可愛いんだもの。だから私もいつか……」
そこまで言うと、ジェニファーは言葉を切った。
いつか本当の自分の子供が欲しい。そう言いたかったが口に出すのは躊躇われてしまったのだ。
ニコラスと結婚はしたもののの、あくまでそれは書類上だけのこと。
彼が愛するのは亡き妻のジェニーだけであり、結婚したのもジェニーの遺言に従っただけのことなのだから。
(どう見ても私はニコラスから良く思われてはいないし…‥ジョナサンが私を必要としなくなる年齢になれば、出て行くつもりだもの)
ニコラスから疎まれている以上、ジェニファーはテイラー家に居座るつもりは毛頭無かった。
離婚をすれば戸籍が汚れる。ましてや貧しくて持参金も用意出来ない女性を妻に娶るような物好きな男性などいるはずも無い。
(多分、私は……自分で子供を持つことは一生無いのでしょうね)
そのことが無性に寂しかった。
「どうしましたか? ジェニファー様」
ジェニファーが途中で言葉を切った為、ポリーが尋ねた。
「いいえ、何でも無いわ。ジョナサンが眠ってしまったから、そろそろ帰りましょうか?」
「そうですね。……あ、その前にお店に寄らせて頂いても良いでしょうか?」
「店? どんな店だ?」
尋ねるシド。
「はい。メイド仲間に聞いたのですが、この先にあるマーケット街でクッキー専門店が出来たそうなんです。お土産に買って帰りたいのですが……いいでしょうか?」
「まぁ。クッキーの専門店? 私も行ってみたいわ」
甘いお菓子が大好きなジェニファーは目を輝かせた。
「そうですね。まだ時間もありますし、皆で行ってみましょう」
シドが賛同し、眠ってしまったジョナサンをベビーカーに乗せると3人はクッキー専門店へ向かった――
クッキー専門店に到着すると、シドは店内に入らずにベビーカーに乗って眠っているジョナサンを見守る役を買って出た。
そこでジェニファーとポリーだけが店内に入り、2人は思い思いのクッキーを購入すると店から出てきた。
「お待たせ、シド」
「すみません、お待たせしました」
「いえ、大丈夫です。それでクッキーは買えましたか?」
入り口付近で待っていたシドが尋ねる。
「ええ。色々な種類があって迷ったけど、買えたわ」
ジェニファーは紙袋を抱えている。
「見て下さい、私なんてこんなに買ってしまいました。メイド仲間たちに配ろうと思います」
ポリーは空になったバスケットの蓋を開けると、4つの紙袋が入っていた。
「お二人とも、良い買い物が出来たようですね。それでは帰りましょか」
シドが踵を返した時。
「あ、ちょっと待って。シド」
ジェニファーはポケットから小さな紙袋を取り出すとシドに差し出した。
「はい、受け取って。シド」
「え? これは……?」
訝し気に思いながら受け取るシド。
「今のお店でシドにもクッキーを買ったの。でもどんなものが良いか分からなくて、とりあえず甘さが控えめなジンジャークッキーを買ってみたのよ」
「俺の為に……ですか?」
「ええ。だってわざわざ護衛の為に今日はピクニックについてきてくれたのだもの。これはほんのお礼。ありがとう、シド」
「い、いえ。気にしないで下さい。これが俺の……仕事ですから。では行きましょう」
シドは自分の顔が熱くなるのを感じ、背を向けた。
「ええ、帰りましょう」
「そうですね」
こうして3人はクッキー専門店を後にし……その帰り道、思いがけない物を目にすることになる――
シドがジョナサンを抱きかかえてベンチ型ブランコに乗って遊ばせたり、芝生の上で歩く練習をさせ、シートを広げて昼食もとった。
公園には小さなふれあい動物園もあり、ウサギや羊に餌を与えたり……3人は楽しい時を過ごしたのだった――
――15時
ジョナサンはジェニファーの膝の上で、スヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。
「フフフ……遊び疲れたのかしらね。とってもよく眠っているわ」
ジェニファーはジョナサンの柔らかな髪をそっと撫でた。
「そうですね。でも本当にジョナサン様は可愛らしい方です。金色の髪の色はジェニファー様そっくりですね」
「そう? ありがとう」
まるで我が子のように愛し気にジョナサンの髪を撫で続けているジェニファーをシドは少しの間見つめ……尋ねた。
「ジェニファー様は子供が好きなのですか?」
「ええ、とっても好き。だってこんなにも可愛いんだもの。だから私もいつか……」
そこまで言うと、ジェニファーは言葉を切った。
いつか本当の自分の子供が欲しい。そう言いたかったが口に出すのは躊躇われてしまったのだ。
ニコラスと結婚はしたもののの、あくまでそれは書類上だけのこと。
彼が愛するのは亡き妻のジェニーだけであり、結婚したのもジェニーの遺言に従っただけのことなのだから。
(どう見ても私はニコラスから良く思われてはいないし…‥ジョナサンが私を必要としなくなる年齢になれば、出て行くつもりだもの)
ニコラスから疎まれている以上、ジェニファーはテイラー家に居座るつもりは毛頭無かった。
離婚をすれば戸籍が汚れる。ましてや貧しくて持参金も用意出来ない女性を妻に娶るような物好きな男性などいるはずも無い。
(多分、私は……自分で子供を持つことは一生無いのでしょうね)
そのことが無性に寂しかった。
「どうしましたか? ジェニファー様」
ジェニファーが途中で言葉を切った為、ポリーが尋ねた。
「いいえ、何でも無いわ。ジョナサンが眠ってしまったから、そろそろ帰りましょうか?」
「そうですね。……あ、その前にお店に寄らせて頂いても良いでしょうか?」
「店? どんな店だ?」
尋ねるシド。
「はい。メイド仲間に聞いたのですが、この先にあるマーケット街でクッキー専門店が出来たそうなんです。お土産に買って帰りたいのですが……いいでしょうか?」
「まぁ。クッキーの専門店? 私も行ってみたいわ」
甘いお菓子が大好きなジェニファーは目を輝かせた。
「そうですね。まだ時間もありますし、皆で行ってみましょう」
シドが賛同し、眠ってしまったジョナサンをベビーカーに乗せると3人はクッキー専門店へ向かった――
クッキー専門店に到着すると、シドは店内に入らずにベビーカーに乗って眠っているジョナサンを見守る役を買って出た。
そこでジェニファーとポリーだけが店内に入り、2人は思い思いのクッキーを購入すると店から出てきた。
「お待たせ、シド」
「すみません、お待たせしました」
「いえ、大丈夫です。それでクッキーは買えましたか?」
入り口付近で待っていたシドが尋ねる。
「ええ。色々な種類があって迷ったけど、買えたわ」
ジェニファーは紙袋を抱えている。
「見て下さい、私なんてこんなに買ってしまいました。メイド仲間たちに配ろうと思います」
ポリーは空になったバスケットの蓋を開けると、4つの紙袋が入っていた。
「お二人とも、良い買い物が出来たようですね。それでは帰りましょか」
シドが踵を返した時。
「あ、ちょっと待って。シド」
ジェニファーはポケットから小さな紙袋を取り出すとシドに差し出した。
「はい、受け取って。シド」
「え? これは……?」
訝し気に思いながら受け取るシド。
「今のお店でシドにもクッキーを買ったの。でもどんなものが良いか分からなくて、とりあえず甘さが控えめなジンジャークッキーを買ってみたのよ」
「俺の為に……ですか?」
「ええ。だってわざわざ護衛の為に今日はピクニックについてきてくれたのだもの。これはほんのお礼。ありがとう、シド」
「い、いえ。気にしないで下さい。これが俺の……仕事ですから。では行きましょう」
シドは自分の顔が熱くなるのを感じ、背を向けた。
「ええ、帰りましょう」
「そうですね」
こうして3人はクッキー専門店を後にし……その帰り道、思いがけない物を目にすることになる――
502
お気に入りに追加
1,791
あなたにおすすめの小説

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています

王妃候補に選ばれましたが、全く興味の無い私は野次馬に徹しようと思います
真理亜
恋愛
ここセントール王国には一風変わった習慣がある。
それは王太子の婚約者、ひいては未来の王妃となるべく女性を決める際、何人かの選ばれし令嬢達を一同に集めて合宿のようなものを行い、合宿中の振る舞いや人間関係に対する対応などを見極めて判断を下すというものである。
要は選考試験のようなものだが、かといってこれといった課題を出されるという訳では無い。あくまでも令嬢達の普段の行動を観察し、記録し、判定を下すというシステムになっている。
そんな選ばれた令嬢達が集まる中、一人だけ場違いな令嬢が居た。彼女は他の候補者達の観察に徹しているのだ。どうしてそんなことをしているのかと尋ねられたその令嬢は、
「お構い無く。私は王妃の座なんか微塵も興味有りませんので。ここには野次馬として来ました」
と言い放ったのだった。
少し長くなって来たので短編から長編に変更しました。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
腹を痛めて産んだ子を蔑ろにする身勝手な旦那様、離縁してくださいませ!
完璧な人生だと思っていた。優しい夫、大切にしてくれる義父母……待望の跡取り息子を産んだ私は、彼らの仕打ちに打ちのめされた。腹を痛めて産んだ我が子を取り戻すため、バレンティナは離縁を選ぶ。復讐する気のなかった彼女だが、新しく出会った隣国貴族に一目惚れで口説かれる。身勝手な元婚家は、嘘がバレて自業自得で没落していった。
崩壊する幸せ⇒異国での出会い⇒ハッピーエンド
元婚家の自業自得ざまぁ有りです。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/07……アルファポリス、女性向けHOT4位
2022/10/05……カクヨム、恋愛週間13位
2022/10/04……小説家になろう、恋愛日間63位
2022/09/30……エブリスタ、トレンド恋愛19位
2022/09/28……連載開始
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
牢で死ぬはずだった公爵令嬢
鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。
表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。
小説家になろうさんにも投稿しています。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる