100 / 237
3-3 出迎えた使用人
しおりを挟む
シドが呼び鈴を鳴らし、少し待つと扉が開いてスーツ姿の初老の男性が現れた。
「どちら様でしょうか……え!?」
男性はジェニファーを見ると目を見開く。その様子にジェニファーはすぐに気付いた。
(きっとジェニーはこのお城に滞在したことがあるのだわ)
「お久しぶりです、執事長。俺のこと覚えていますか?」
そこへシドが男性に声をかけた。
「あ……もしや、君は……」
「はい、ニコラス様の護衛騎士のシドです」
「これは驚きましたね。この城へ来るのは3年ぶりでは無かったかな?」
「はい、お久しぶりです。連絡もせずに突然伺って申し訳ございません。実は本日より一月ほどこちらの城に滞在するようにニコラス様から言われて参りました。手紙を預かっております」
シドは丁寧に挨拶すると、ニコラスから預かっていた手紙を手渡した。
「では、拝見させて頂きましょう。……確かに封蝋はテイラー家の物で間違いないようですね」
執事長は手紙を預かると確認し、その場で開封した。
「確かに筆跡にもニコラス様の……」
少しの間、執事長は手紙に目を通すと頷いた。
「用件は分かりました。それでは、あなた様が…‥?」
執事長はジェニファーに視線を移すと、シドが先に紹介した。
「こちらはジェニファー・テイラー様です。そして隣にいるのはメイドのポリーです」
「はい、ジェニファーと申します。この度、縁あってジョナサン様の母親代わりになりました。どうぞよろしくお願いいたします」
(とてもではないけれど、自分の口からニコラスの妻だなんて、おこがましくて口に出せないわ)
ニコラスから拒絶されていることが身に染みて分かっているジェニファー。あえて妻とは言わずにジョナサンの代理母だと自己紹介したのだ。
「ジェニファー様の専属メイドとなったポリーです。初めまして」
2人が挨拶すると、執事長も自ら挨拶をした。
「私はこの城の執事長を務めるカルロス・ベンソンと申します。では、そちらの方がニコラス様のお子であらせられるジョナサン様ですか。……確かにニコラス様の小さい頃に面立ちがよく似ていらっしゃる」
カルロスは目を細めてジョナサンを見つめ……我に返った。
「これは失礼いたしました。遠路はるばるお越しいただいたのに、いつまでも中にお通しせずに申し訳ございません。どうぞ、お入り下さい。お荷物は後で使用人に運ばせますので」
「「「ありがとうございます」」」
3人は声を揃えてお礼を述べる。
「ではご案内いたします。どうぞこちらへ」
カルロスは笑みを浮かべた――
****
眠りに就いたジョナサンをベビーカーに乗せると、3人は応接室に案内された。
「どうぞお掛け下さい」
カルロスに促されて全員が着席すると、すぐにメイドがお茶を運んで来た。
「失礼致しま……え? も、申し訳ございませんでした」
紅茶を置こうとしたメイドが一瞬ジェニファーの顔を見て驚きの表情を浮かべ、慌てた様子で足早に去って行った。
「皆さん、お疲れでしょう。どうぞお茶をお飲みください。疲労回復効果のあるハーブティーを淹れさせましたので」
カルロスが笑顔で3人に話しかけるも、ジェニファーは先ほどから気がかりなことがあった。
(今の人……私を見て驚いていたみたい。多分ジェニーはこの城に来たことがあるのだわ)
そこでジェニファーは思い切って尋ねることにした。
「あの、カルロスさん。ジェニーはこの城へ来たことがありますか?」
「ええ、ございます。結婚式を挙げてすぐに新婚旅行としてこちらの城に一月ほど滞在されておりました。とても愛らしい方で、誰もがジェニー様を大切に思っておりましたよ」
笑顔で答えるカルロス。
「そう……ですか」
ジェニファーもその言葉に笑顔で頷くも、心境は穏やかではなかった。
(このお城でもジェニーは皆から大切に思われていたのね……だったら、ここでも私は憎まれてしまうのかも……)
不安な気持ちを押し殺しながら、ジェニファーは紅茶を口にした――
「どちら様でしょうか……え!?」
男性はジェニファーを見ると目を見開く。その様子にジェニファーはすぐに気付いた。
(きっとジェニーはこのお城に滞在したことがあるのだわ)
「お久しぶりです、執事長。俺のこと覚えていますか?」
そこへシドが男性に声をかけた。
「あ……もしや、君は……」
「はい、ニコラス様の護衛騎士のシドです」
「これは驚きましたね。この城へ来るのは3年ぶりでは無かったかな?」
「はい、お久しぶりです。連絡もせずに突然伺って申し訳ございません。実は本日より一月ほどこちらの城に滞在するようにニコラス様から言われて参りました。手紙を預かっております」
シドは丁寧に挨拶すると、ニコラスから預かっていた手紙を手渡した。
「では、拝見させて頂きましょう。……確かに封蝋はテイラー家の物で間違いないようですね」
執事長は手紙を預かると確認し、その場で開封した。
「確かに筆跡にもニコラス様の……」
少しの間、執事長は手紙に目を通すと頷いた。
「用件は分かりました。それでは、あなた様が…‥?」
執事長はジェニファーに視線を移すと、シドが先に紹介した。
「こちらはジェニファー・テイラー様です。そして隣にいるのはメイドのポリーです」
「はい、ジェニファーと申します。この度、縁あってジョナサン様の母親代わりになりました。どうぞよろしくお願いいたします」
(とてもではないけれど、自分の口からニコラスの妻だなんて、おこがましくて口に出せないわ)
ニコラスから拒絶されていることが身に染みて分かっているジェニファー。あえて妻とは言わずにジョナサンの代理母だと自己紹介したのだ。
「ジェニファー様の専属メイドとなったポリーです。初めまして」
2人が挨拶すると、執事長も自ら挨拶をした。
「私はこの城の執事長を務めるカルロス・ベンソンと申します。では、そちらの方がニコラス様のお子であらせられるジョナサン様ですか。……確かにニコラス様の小さい頃に面立ちがよく似ていらっしゃる」
カルロスは目を細めてジョナサンを見つめ……我に返った。
「これは失礼いたしました。遠路はるばるお越しいただいたのに、いつまでも中にお通しせずに申し訳ございません。どうぞ、お入り下さい。お荷物は後で使用人に運ばせますので」
「「「ありがとうございます」」」
3人は声を揃えてお礼を述べる。
「ではご案内いたします。どうぞこちらへ」
カルロスは笑みを浮かべた――
****
眠りに就いたジョナサンをベビーカーに乗せると、3人は応接室に案内された。
「どうぞお掛け下さい」
カルロスに促されて全員が着席すると、すぐにメイドがお茶を運んで来た。
「失礼致しま……え? も、申し訳ございませんでした」
紅茶を置こうとしたメイドが一瞬ジェニファーの顔を見て驚きの表情を浮かべ、慌てた様子で足早に去って行った。
「皆さん、お疲れでしょう。どうぞお茶をお飲みください。疲労回復効果のあるハーブティーを淹れさせましたので」
カルロスが笑顔で3人に話しかけるも、ジェニファーは先ほどから気がかりなことがあった。
(今の人……私を見て驚いていたみたい。多分ジェニーはこの城に来たことがあるのだわ)
そこでジェニファーは思い切って尋ねることにした。
「あの、カルロスさん。ジェニーはこの城へ来たことがありますか?」
「ええ、ございます。結婚式を挙げてすぐに新婚旅行としてこちらの城に一月ほど滞在されておりました。とても愛らしい方で、誰もがジェニー様を大切に思っておりましたよ」
笑顔で答えるカルロス。
「そう……ですか」
ジェニファーもその言葉に笑顔で頷くも、心境は穏やかではなかった。
(このお城でもジェニーは皆から大切に思われていたのね……だったら、ここでも私は憎まれてしまうのかも……)
不安な気持ちを押し殺しながら、ジェニファーは紅茶を口にした――
411
お気に入りに追加
1,791
あなたにおすすめの小説

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています

王妃候補に選ばれましたが、全く興味の無い私は野次馬に徹しようと思います
真理亜
恋愛
ここセントール王国には一風変わった習慣がある。
それは王太子の婚約者、ひいては未来の王妃となるべく女性を決める際、何人かの選ばれし令嬢達を一同に集めて合宿のようなものを行い、合宿中の振る舞いや人間関係に対する対応などを見極めて判断を下すというものである。
要は選考試験のようなものだが、かといってこれといった課題を出されるという訳では無い。あくまでも令嬢達の普段の行動を観察し、記録し、判定を下すというシステムになっている。
そんな選ばれた令嬢達が集まる中、一人だけ場違いな令嬢が居た。彼女は他の候補者達の観察に徹しているのだ。どうしてそんなことをしているのかと尋ねられたその令嬢は、
「お構い無く。私は王妃の座なんか微塵も興味有りませんので。ここには野次馬として来ました」
と言い放ったのだった。
少し長くなって来たので短編から長編に変更しました。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
腹を痛めて産んだ子を蔑ろにする身勝手な旦那様、離縁してくださいませ!
完璧な人生だと思っていた。優しい夫、大切にしてくれる義父母……待望の跡取り息子を産んだ私は、彼らの仕打ちに打ちのめされた。腹を痛めて産んだ我が子を取り戻すため、バレンティナは離縁を選ぶ。復讐する気のなかった彼女だが、新しく出会った隣国貴族に一目惚れで口説かれる。身勝手な元婚家は、嘘がバレて自業自得で没落していった。
崩壊する幸せ⇒異国での出会い⇒ハッピーエンド
元婚家の自業自得ざまぁ有りです。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/07……アルファポリス、女性向けHOT4位
2022/10/05……カクヨム、恋愛週間13位
2022/10/04……小説家になろう、恋愛日間63位
2022/09/30……エブリスタ、トレンド恋愛19位
2022/09/28……連載開始
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
牢で死ぬはずだった公爵令嬢
鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。
表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。
小説家になろうさんにも投稿しています。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる