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3-2 過去の記憶と複雑な思い
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ガタガタと揺れる辻馬車の中で、シドが謝ってきた。
「申し訳ございません、ジェニファー様」
「え? 突然どうしたの?」
シドが何故謝ってきたのか分からず、ジェニファーは目を見開く。
「このように乗り心地の悪い辻馬車しか見つけることが出来なかったからです」
シドは余程申し訳ないと思っているのか、少し俯いた。
「私は少しも乗り心地が悪いなんて思っていないわよ? だって私、郷里では荷車に乗って移動していたのだから」
ジェニファーは『キリコ』で暮らしたいたときのことを少しだけ思い出した。町に行くときや仕事に行くときに、時々ダンが荷車に乗せてくれた懐かしい記憶。
(ダンも結婚して、3年ね。暫くの間、便りが無いけれども元気にしているでしょうね。子供は生まれたのかしら……そうだわ、久しぶりにダンに手紙でも書いてみましょう。家族のことを尋ねてみたいし)
そして腕の中にいるジョナサンを見つめた。
ジョナサンは外の景色が珍しいのか、窓の外をご機嫌な様子で眺めている。
「フフフ。ジョナサン様は、すっかり『ボニート』が気に入られたようですね。でも気持ちは分かります。本当に素敵な光景ですから」
ポリーも外の景色にすっかり見惚れている。
『ボニート』は広大な森を切り開いて作られた町であった。町の周囲を覆うように美しい川が流れ、観光用の渡し船が行き交っている。建物は全て壁の色は白でオレンジの屋根で統一されて景観を保っていた。。
すぐ近くに見える巨大な山脈はまさに圧巻の光景だ。
「ええ、とても素敵な景色よね」
ジェニファーはどこか少し寂しそうに呟く。
何しろ、ここ『ボニート』はジェニファーにとって、楽しい思い出と苦しい思い出が混在した場所なのだから。
そんなジェニファーを向かい側に座るシドはじっと見つめていた。
(ジェニファー様の表情が優れない……やはり、ここに連れてくるべきで無かったのだろうか?)
実は汽車の中でジェニファーから15年前の出来事を聞かされてから、ずっとシドは悩んでいた。
(事前に何があったのか、知っていれば他の場所を提案したのに……)
シドは拳を握りしめるのだった――
****
15時半を少し過ぎた頃、辻馬車は小高い丘に建つ小さな城に到着した。
周囲を森に囲われ3階建ての城は真っ白な壁に、青いとんがり屋根が特徴的だった。
「まぁ……何て素敵なお城なのでしょう。そう思いませんか? ジェニファー様」
ポリーが興奮気味に話しかけてくる。
「ええ、そうね。テイラー侯爵家の屋敷はとても大きくて荘厳だけど、このお城はまるで絵本の中に出てきそうだわ」
ジェニファーも目の前の小さな美しい城に目を奪われていると、シドが説明した。
「この城は、ニコラス様の母方の別荘として建てられたお城です。10年ほど前までは、ニコラス様の2歳年下の従弟が住んでおりましたが今はもう住んではおりません」
「え? それではこの城には誰も住んでいないってことなの?」
「いいえ。城を管理する使用人達が住んでおります」
「そうなの? だけど、連絡も無しにいきなり押しかけるような真似をして……大丈夫だったのかしら?」
心配するジェニファーにシドは首を振る。
「そのような心配はいりません。城を管理している使用人達が住んでいますので。では参りましょう」
シドは扉の前に立つと目の前の呼び鈴を鳴らした――
「申し訳ございません、ジェニファー様」
「え? 突然どうしたの?」
シドが何故謝ってきたのか分からず、ジェニファーは目を見開く。
「このように乗り心地の悪い辻馬車しか見つけることが出来なかったからです」
シドは余程申し訳ないと思っているのか、少し俯いた。
「私は少しも乗り心地が悪いなんて思っていないわよ? だって私、郷里では荷車に乗って移動していたのだから」
ジェニファーは『キリコ』で暮らしたいたときのことを少しだけ思い出した。町に行くときや仕事に行くときに、時々ダンが荷車に乗せてくれた懐かしい記憶。
(ダンも結婚して、3年ね。暫くの間、便りが無いけれども元気にしているでしょうね。子供は生まれたのかしら……そうだわ、久しぶりにダンに手紙でも書いてみましょう。家族のことを尋ねてみたいし)
そして腕の中にいるジョナサンを見つめた。
ジョナサンは外の景色が珍しいのか、窓の外をご機嫌な様子で眺めている。
「フフフ。ジョナサン様は、すっかり『ボニート』が気に入られたようですね。でも気持ちは分かります。本当に素敵な光景ですから」
ポリーも外の景色にすっかり見惚れている。
『ボニート』は広大な森を切り開いて作られた町であった。町の周囲を覆うように美しい川が流れ、観光用の渡し船が行き交っている。建物は全て壁の色は白でオレンジの屋根で統一されて景観を保っていた。。
すぐ近くに見える巨大な山脈はまさに圧巻の光景だ。
「ええ、とても素敵な景色よね」
ジェニファーはどこか少し寂しそうに呟く。
何しろ、ここ『ボニート』はジェニファーにとって、楽しい思い出と苦しい思い出が混在した場所なのだから。
そんなジェニファーを向かい側に座るシドはじっと見つめていた。
(ジェニファー様の表情が優れない……やはり、ここに連れてくるべきで無かったのだろうか?)
実は汽車の中でジェニファーから15年前の出来事を聞かされてから、ずっとシドは悩んでいた。
(事前に何があったのか、知っていれば他の場所を提案したのに……)
シドは拳を握りしめるのだった――
****
15時半を少し過ぎた頃、辻馬車は小高い丘に建つ小さな城に到着した。
周囲を森に囲われ3階建ての城は真っ白な壁に、青いとんがり屋根が特徴的だった。
「まぁ……何て素敵なお城なのでしょう。そう思いませんか? ジェニファー様」
ポリーが興奮気味に話しかけてくる。
「ええ、そうね。テイラー侯爵家の屋敷はとても大きくて荘厳だけど、このお城はまるで絵本の中に出てきそうだわ」
ジェニファーも目の前の小さな美しい城に目を奪われていると、シドが説明した。
「この城は、ニコラス様の母方の別荘として建てられたお城です。10年ほど前までは、ニコラス様の2歳年下の従弟が住んでおりましたが今はもう住んではおりません」
「え? それではこの城には誰も住んでいないってことなの?」
「いいえ。城を管理する使用人達が住んでおります」
「そうなの? だけど、連絡も無しにいきなり押しかけるような真似をして……大丈夫だったのかしら?」
心配するジェニファーにシドは首を振る。
「そのような心配はいりません。城を管理している使用人達が住んでいますので。では参りましょう」
シドは扉の前に立つと目の前の呼び鈴を鳴らした――
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