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2−15 ニコラスからの伝言
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ろくにニコラスと挨拶を交わすこともないまま、慌ただしくテイラー侯爵家を後にすることになったジェニファーたち。
既に迎えに来ていたのはとても豪華な馬車だった。
ジョナサンを抱いて乗り込んだジェニファーはすぐに馬車の中を見渡した。豪華な内装は目を引くばかりだ。
(そういえば、フォルクマン伯爵と一緒に乗った馬車もこれくらい立派だったわね)
「素敵な馬車だわ……内装も立派だし、座り心地も良いわ」
ジェニファーがふと15年前のことを思い出して、口にするとシドが驚きの表情を浮かべる。
「それは一体どういうことですか? ジェニファー様は、この屋敷までどのようにしていらしたのです?」
「ニコラスから小切手が送られてきたので、自分で汽車に乗って辻馬車を拾って来たのよ」
けれど叔母のアンに小切手を全て奪われてしまい、旅費が足りなくなって辻馬車代を出してもらったことは流石に恥ずかしくて言えなかった。
するとポリーが目を見開く。
「え!? ジェニファー様は、たったお一人で侯爵家まで来られたのですか!?」
「え、ええ……そうよ
恥ずかしそうに俯くジェニファーをシドは、自身の膝を強く握りしめながら話を聞いていた。
(ニコラス様は何故そんな仕打ちをジェニファー様にしたのだろう? ジェニファー様と突然連絡が途絶えてしまったとき、あれほど必死になって捜していたのに……! もし、今冷遇しているジェニファー様が自分の捜していた相手だと知ればニコラス様はどう思われるのだろう?)
けれどジェニファー本人からニコラスには言わないで欲しいと口止めされている以上、シドからはどうすることも出来なかった。
シドはポリーと楽しげに話をしているジェニファーを見つめる。
貧しい身なりは、とてもではないが候爵夫人には見えなかったが、ジェニファーの美しさは損なわれることは無かった。
ジェニーとシドは殆ど交流したことは無かったが、顔を合わせたことは何度かある。
2人は驚くほど良く似ていたが、それでもシドにとってはジェニファーの方が美しく見えた。
(駅に到着したら汽車に乗り込む前に、まずはジェニファー様の身なりを整えなくては……)
揺れる馬車の中で、シドは色々と思い巡らせるのだった――
****
馬車はドレイク王国の首都、『ソレイユ』に到着した。ジョナサンは馬車の揺れが気持ちよかったのか、ベビーカーの中でスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。
「ジェニファー様。『ボニータ』までは汽車で丸1日かかります。なので、色々この町で必要な物を買い揃えましょう」
「ええ、それが良いと思います」
ポリーも笑顔で頷くが、ジェニファーは焦った。
「え? ま、待ってシド。つまり、それって私の買い物をするってことなのよね?」
「勿論です。まずはジェニファー様の身なりを整えたほうが良さそうですね」
「駄目よ。買物は……出来ないわ。だって、私……その、持ち合わせがなくて……」
その言葉にシドは反論した。
「何を仰っているのです? ジェニファー様は侯爵夫人になられたのですよ? 俺がニコラス様から小切手を預かっています。ニコラス様は『ボニート』へ向かうにあたり、必要な物を買うようにと話されていました」
「え……? 本当に? ニコラスが私のために……?」
「良かったですね。ジェニファー様」
ポリーが笑顔で声をかける。
「ええ、そうね。ニコラスに感謝しないと」
頬を赤く染めるジェニファーを、シドは複雑な思いで見つめるのだった――
既に迎えに来ていたのはとても豪華な馬車だった。
ジョナサンを抱いて乗り込んだジェニファーはすぐに馬車の中を見渡した。豪華な内装は目を引くばかりだ。
(そういえば、フォルクマン伯爵と一緒に乗った馬車もこれくらい立派だったわね)
「素敵な馬車だわ……内装も立派だし、座り心地も良いわ」
ジェニファーがふと15年前のことを思い出して、口にするとシドが驚きの表情を浮かべる。
「それは一体どういうことですか? ジェニファー様は、この屋敷までどのようにしていらしたのです?」
「ニコラスから小切手が送られてきたので、自分で汽車に乗って辻馬車を拾って来たのよ」
けれど叔母のアンに小切手を全て奪われてしまい、旅費が足りなくなって辻馬車代を出してもらったことは流石に恥ずかしくて言えなかった。
するとポリーが目を見開く。
「え!? ジェニファー様は、たったお一人で侯爵家まで来られたのですか!?」
「え、ええ……そうよ
恥ずかしそうに俯くジェニファーをシドは、自身の膝を強く握りしめながら話を聞いていた。
(ニコラス様は何故そんな仕打ちをジェニファー様にしたのだろう? ジェニファー様と突然連絡が途絶えてしまったとき、あれほど必死になって捜していたのに……! もし、今冷遇しているジェニファー様が自分の捜していた相手だと知ればニコラス様はどう思われるのだろう?)
けれどジェニファー本人からニコラスには言わないで欲しいと口止めされている以上、シドからはどうすることも出来なかった。
シドはポリーと楽しげに話をしているジェニファーを見つめる。
貧しい身なりは、とてもではないが候爵夫人には見えなかったが、ジェニファーの美しさは損なわれることは無かった。
ジェニーとシドは殆ど交流したことは無かったが、顔を合わせたことは何度かある。
2人は驚くほど良く似ていたが、それでもシドにとってはジェニファーの方が美しく見えた。
(駅に到着したら汽車に乗り込む前に、まずはジェニファー様の身なりを整えなくては……)
揺れる馬車の中で、シドは色々と思い巡らせるのだった――
****
馬車はドレイク王国の首都、『ソレイユ』に到着した。ジョナサンは馬車の揺れが気持ちよかったのか、ベビーカーの中でスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。
「ジェニファー様。『ボニータ』までは汽車で丸1日かかります。なので、色々この町で必要な物を買い揃えましょう」
「ええ、それが良いと思います」
ポリーも笑顔で頷くが、ジェニファーは焦った。
「え? ま、待ってシド。つまり、それって私の買い物をするってことなのよね?」
「勿論です。まずはジェニファー様の身なりを整えたほうが良さそうですね」
「駄目よ。買物は……出来ないわ。だって、私……その、持ち合わせがなくて……」
その言葉にシドは反論した。
「何を仰っているのです? ジェニファー様は侯爵夫人になられたのですよ? 俺がニコラス様から小切手を預かっています。ニコラス様は『ボニート』へ向かうにあたり、必要な物を買うようにと話されていました」
「え……? 本当に? ニコラスが私のために……?」
「良かったですね。ジェニファー様」
ポリーが笑顔で声をかける。
「ええ、そうね。ニコラスに感謝しないと」
頬を赤く染めるジェニファーを、シドは複雑な思いで見つめるのだった――
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