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1−7 悲しみの知らせ
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ダンが商家の娘と結婚し、それから少しの時が流れた。
美しい容姿を持つジェニファーは、既に24歳となっていたが未だに未婚だった。
近隣に住む年頃の娘たちは皆嫁いでいったが、未だに彼女はブルック家で暮らしている。
それは貧しさゆえ、自分の持参金を準備することが出来なかったからだ。
一時は婿入り先の商家から十分な援助金を貰えて、生活にゆとりがあった。
しかしアンの浪費が激しく、あっという間にお金は消えて無くなり、再びブルック家は貧しい生活を強いられることになってしまったのだった。
そんな貧しい生活の中でも、ジェニファーはアンに内緒で僅かばかりの給料から節約して少しずつ貯金をしていた。
たとえ自分は結婚出来なくても、サーシャだけは嫁がせてあげたいと考えていたからであった……。
ある日のことだった。
仕事から帰ってきたジェニファーは、いつものようにポストを覗いてみると1通の手紙が入っていた。
「あら? ひょっとしてダンからの手紙かしら?」
アンとの折り合いが悪かったダンは、結婚後一度もブルック家に来たことはない。
その代わり、月に1度は手紙を寄越していたのだ。
ポストから手紙を取り出し、差出人の名前を目にしたジェニファーの顔色が変わる。
それはフォルクマン伯爵家からジェニファーにあてた手紙だったのだ。
「ど、どうして今頃……」
2年前ジェニーからニコラスと結婚した知らせを受けてはいたが、伯爵とは屋敷をでて以来一切の関わりが無かった。
14年ぶりの連絡にジェニファーは驚いていた。
(伯爵様は……何と言ってきたのかしら……)
叔母に姿が見られないように、家の裏手に回ると手紙を開封して目を通し……ジェニファーは衝撃で目を見開いた。
『先月ジェニーが病気で亡くなった。葬儀も既に済んで、埋葬も終わった』
手紙にはただそれだけが記されいた
「そ……ん、な……」
あまりにも素っ気ない手紙。感情のまるで伴わない、単なる連絡事項のように綴られていたジェニーが亡くなった知らせ。
ジェニーが亡くなったこともショックだったが、未だにフォルクマン伯爵からも憎まれているのだとジェニファーは悟った。
ジェニファーの目に涙が浮かぶ。
(伯爵様は、今も私のことを憎んでいるのね……結婚の知らせも教えてくれなかった。それどころか、ジェニーのお葬式の知らせもくれなかったわ)
手紙にフォルクマン伯爵のアドレスも記載されていなかったし、ジェニーが埋葬されたお墓の場所も書かれていない。
これだけでも、はっきり自分が拒絶されていることを理解してしまった。
「私は伯爵にとって……ジェニーのお葬式さえも呼びたくないほど憎い相手ということなのね……それに、お墓……参りさえも許されないのだわ……」
ジェニファーの緑の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
「……ごめんなさい……ジェニー……伯爵様……」
手紙を握りしめると、誰にも知られないように声を殺して泣き続けた。
この時のジェニファーはまだ何も知らない。
ジェニーがニコラスに託した遺言状のことを。
そして初恋の相手であるニコラスにまで、激しく憎悪されているという事実を――
美しい容姿を持つジェニファーは、既に24歳となっていたが未だに未婚だった。
近隣に住む年頃の娘たちは皆嫁いでいったが、未だに彼女はブルック家で暮らしている。
それは貧しさゆえ、自分の持参金を準備することが出来なかったからだ。
一時は婿入り先の商家から十分な援助金を貰えて、生活にゆとりがあった。
しかしアンの浪費が激しく、あっという間にお金は消えて無くなり、再びブルック家は貧しい生活を強いられることになってしまったのだった。
そんな貧しい生活の中でも、ジェニファーはアンに内緒で僅かばかりの給料から節約して少しずつ貯金をしていた。
たとえ自分は結婚出来なくても、サーシャだけは嫁がせてあげたいと考えていたからであった……。
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その代わり、月に1度は手紙を寄越していたのだ。
ポストから手紙を取り出し、差出人の名前を目にしたジェニファーの顔色が変わる。
それはフォルクマン伯爵家からジェニファーにあてた手紙だったのだ。
「ど、どうして今頃……」
2年前ジェニーからニコラスと結婚した知らせを受けてはいたが、伯爵とは屋敷をでて以来一切の関わりが無かった。
14年ぶりの連絡にジェニファーは驚いていた。
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叔母に姿が見られないように、家の裏手に回ると手紙を開封して目を通し……ジェニファーは衝撃で目を見開いた。
『先月ジェニーが病気で亡くなった。葬儀も既に済んで、埋葬も終わった』
手紙にはただそれだけが記されいた
「そ……ん、な……」
あまりにも素っ気ない手紙。感情のまるで伴わない、単なる連絡事項のように綴られていたジェニーが亡くなった知らせ。
ジェニーが亡くなったこともショックだったが、未だにフォルクマン伯爵からも憎まれているのだとジェニファーは悟った。
ジェニファーの目に涙が浮かぶ。
(伯爵様は、今も私のことを憎んでいるのね……結婚の知らせも教えてくれなかった。それどころか、ジェニーのお葬式の知らせもくれなかったわ)
手紙にフォルクマン伯爵のアドレスも記載されていなかったし、ジェニーが埋葬されたお墓の場所も書かれていない。
これだけでも、はっきり自分が拒絶されていることを理解してしまった。
「私は伯爵にとって……ジェニーのお葬式さえも呼びたくないほど憎い相手ということなのね……それに、お墓……参りさえも許されないのだわ……」
ジェニファーの緑の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
「……ごめんなさい……ジェニー……伯爵様……」
手紙を握りしめると、誰にも知られないように声を殺して泣き続けた。
この時のジェニファーはまだ何も知らない。
ジェニーがニコラスに託した遺言状のことを。
そして初恋の相手であるニコラスにまで、激しく憎悪されているという事実を――
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