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2−10 知らなかったこと
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使用人の勝手口から外に出てきたジェニファーは、思い切り空気を吸い込んだ。
「何て、気持ちいいのかしら。山はあんなに近くに見えるし、緑がとても綺麗」
病弱なジェニーのために、伯爵は自然が美しい高原の別荘で療養させている。
ジェニファーはここに連れてこられたときから、この自然溢れる場所を散策したいと思っていたのだ。
「伯爵家の人たちに心配しないように、遠くに行くのはやめておかなくちゃね」
そこで、ジェニーは屋敷の周辺を散策することにした。……ある目的のために。
「あ、ここにも見つけたわ」
ジェニファーは屋敷の周辺に咲き乱れる美しい花々を見つけると、一輪摘んでカゴの中に入れた。
既にカゴの中には色とりどりの美しい花々が収められている。
「フフフ……綺麗。ジェニー喜んでくれるかしら……」
ジェニーの部屋は、少女らしく夢がいっぱい詰まったような部屋だった。
ぬいぐるみや人形で溢れ、壁紙もカーテンも家具も何もかもが淡いピンク色で統一されている。
ため息が出るほどに素晴らしい部屋だったけれども、ジェニファーはただ一つ気になっていた。
それは部屋に花が無かったことだ。
ジェニファーは花がとても好きだった。
貧しい彼女は、着ている服も部屋もみすぼらしかった。だから、せめてもの自分の慰みに部屋のいたるところに花を飾っていた。
花なら、道端に何処にでも生えている。
美しい野花を摘んで、花瓶に差して花を愛でることがジェニファーの密かな楽しみだったのだ。
花を見れば辛い毎日も、惨めな生活も耐える事が出来る。癒やしのような存在だったのである。
「……これだけ摘めば、きっとジェニーは喜んでくれるはずだわ」
ジェニファーはカゴいっぱいになった花を見つめると、屋敷へと戻って行った――
****
――7時半
カゴを持ったジェニファーは朝食を一緒にとるために、ジェニーの部屋を訪れた。
扉をノックすると、すぐにメイドが開けてくれた。
「おはようございます、ジェニファー様」
メイドが笑顔でジェニファーを迎え入れる。
「おはようございます。ジェニーは起きていますか?」
「はい、もう席に着いてジェニファー様をお待ちしております。どうぞお入りください」
「はい」
メイドに促されて部屋に入ると、既にテーブルに向かって座っているジェニーの姿があった。
「おはよう、ジェニファー。待ってたわ」
「おはよう、ジェニー」
2人は笑顔で挨拶を交わし、ジェニファーは向かい側の席に着席すると早速質問した。
「ジェニー、今日の具合はどう?」
「ええ。大丈夫よ。ジェニファーは良く眠れたかしら?」
「ベッドが気持ちよくて、ぐっすり眠れたわ。それでね、今朝はジェニーにプレゼントを持ってきたの」
「え? 私に? 何かしら」
「ほら、見て」
ジェニファーはバスケットをテーブルに置くと、ジェニーが見えるようにカゴを傾けた。
「お花を沢山摘んできたの、ジェニーの部屋には花が無いでしょう? 花瓶に生けたらどうかと思って」
すると、途端にジェニーの顔が青ざめた。
「だ、だめ……」
「え?」
「いやっ! 花は駄目なの!! どこかへやって!!」
ジェニファーは鼻と口を両手で抑えると、顔をそむけた。
「え? ジェニー?」
何が起こったのか、分からないジェニファーは戸惑っていると騒ぎを聞きつけたメイドが慌ててやってきた。
「ジェニファー様、ジェニー様は花のアレルギーを持っているのです。花粉によって喘息発作がおきてしまいます」
「え!? そうだったの!? ごめんなさい、ジェニー! 私、何も知らなくて……」
けれど、口元を抑えたジェニーは背を向けたまま返事をしない。
(どうしよう……ジェニーを怒らせてしまったわ)
「ほ、本当にごめんなさい……ジェニー。このお花、持って出ていくわ」
それだけ告げるとジェニファーは席を立ち、逃げるようにジェニーの部屋を飛び出していった――
「何て、気持ちいいのかしら。山はあんなに近くに見えるし、緑がとても綺麗」
病弱なジェニーのために、伯爵は自然が美しい高原の別荘で療養させている。
ジェニファーはここに連れてこられたときから、この自然溢れる場所を散策したいと思っていたのだ。
「伯爵家の人たちに心配しないように、遠くに行くのはやめておかなくちゃね」
そこで、ジェニーは屋敷の周辺を散策することにした。……ある目的のために。
「あ、ここにも見つけたわ」
ジェニファーは屋敷の周辺に咲き乱れる美しい花々を見つけると、一輪摘んでカゴの中に入れた。
既にカゴの中には色とりどりの美しい花々が収められている。
「フフフ……綺麗。ジェニー喜んでくれるかしら……」
ジェニーの部屋は、少女らしく夢がいっぱい詰まったような部屋だった。
ぬいぐるみや人形で溢れ、壁紙もカーテンも家具も何もかもが淡いピンク色で統一されている。
ため息が出るほどに素晴らしい部屋だったけれども、ジェニファーはただ一つ気になっていた。
それは部屋に花が無かったことだ。
ジェニファーは花がとても好きだった。
貧しい彼女は、着ている服も部屋もみすぼらしかった。だから、せめてもの自分の慰みに部屋のいたるところに花を飾っていた。
花なら、道端に何処にでも生えている。
美しい野花を摘んで、花瓶に差して花を愛でることがジェニファーの密かな楽しみだったのだ。
花を見れば辛い毎日も、惨めな生活も耐える事が出来る。癒やしのような存在だったのである。
「……これだけ摘めば、きっとジェニーは喜んでくれるはずだわ」
ジェニファーはカゴいっぱいになった花を見つめると、屋敷へと戻って行った――
****
――7時半
カゴを持ったジェニファーは朝食を一緒にとるために、ジェニーの部屋を訪れた。
扉をノックすると、すぐにメイドが開けてくれた。
「おはようございます、ジェニファー様」
メイドが笑顔でジェニファーを迎え入れる。
「おはようございます。ジェニーは起きていますか?」
「はい、もう席に着いてジェニファー様をお待ちしております。どうぞお入りください」
「はい」
メイドに促されて部屋に入ると、既にテーブルに向かって座っているジェニーの姿があった。
「おはよう、ジェニファー。待ってたわ」
「おはよう、ジェニー」
2人は笑顔で挨拶を交わし、ジェニファーは向かい側の席に着席すると早速質問した。
「ジェニー、今日の具合はどう?」
「ええ。大丈夫よ。ジェニファーは良く眠れたかしら?」
「ベッドが気持ちよくて、ぐっすり眠れたわ。それでね、今朝はジェニーにプレゼントを持ってきたの」
「え? 私に? 何かしら」
「ほら、見て」
ジェニファーはバスケットをテーブルに置くと、ジェニーが見えるようにカゴを傾けた。
「お花を沢山摘んできたの、ジェニーの部屋には花が無いでしょう? 花瓶に生けたらどうかと思って」
すると、途端にジェニーの顔が青ざめた。
「だ、だめ……」
「え?」
「いやっ! 花は駄目なの!! どこかへやって!!」
ジェニファーは鼻と口を両手で抑えると、顔をそむけた。
「え? ジェニー?」
何が起こったのか、分からないジェニファーは戸惑っていると騒ぎを聞きつけたメイドが慌ててやってきた。
「ジェニファー様、ジェニー様は花のアレルギーを持っているのです。花粉によって喘息発作がおきてしまいます」
「え!? そうだったの!? ごめんなさい、ジェニー! 私、何も知らなくて……」
けれど、口元を抑えたジェニーは背を向けたまま返事をしない。
(どうしよう……ジェニーを怒らせてしまったわ)
「ほ、本当にごめんなさい……ジェニー。このお花、持って出ていくわ」
それだけ告げるとジェニファーは席を立ち、逃げるようにジェニーの部屋を飛び出していった――
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