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第8章 2 告白

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「こちらをどうぞ」

スカーレットは椅子に座ったアリオスに薄い色の着いた飲み物を差し出して来た。

「ああ、ありがとう…ところでこの飲み物は何だ?ただの水ではなさそうだが…」

「はい。それはベルガモットのハーブティーを冷ましたものです」

スカーレットもテーブルを挟んでアリオスの向かい側の席に座ると言った。

「そうか…これはハーブティーだったのか。ありがとう、頂くよ」

そしてアリオスはグラスの飲み物を口にした。ハーブの香りが心を落ち着かせてくれるように感じた。

「うん。すっきりして…おいしいな。ありがとう」

そして席を立とうとしたが、スカーレットが何やら言いたげな顔で自分を見ていることに気が付いた。

「…どうした?何か言いたい事でもあるのなら話を聞くぞ?」

「え?あ、あの…よ、宜しいのでしょうか…?」

躊躇いがちにスカーレットが尋ねて来る。

「ああ、いいぞ」

本当はもう少しスカーレットと話がしたかったアリオスにとってはまたとないチャンスだった。例え、それがどんな話であろうとも…。

「あの…アリオス様。何故…最近私達と一緒に食事を召し上がらないのでしょうか…?」

「え…?」

予想もしていなかった質問にアリオスは戸惑った。

(てっきり父親の話が出て来るかと思っていたのに…)

「アリオス様…?」

「あ、じ、実は…最近仕事が忙しくてね。ザヒムとも仕事の付き合いで飲んでるんだ」

俺を勝手に引き合に出すなと文句を言っているザヒムの姿がアリオスの頭をよぎる。

「そうですか…カール様が寂しがっておられました。…私も」

「え?」

最後にポツリと言ったスカーレットの言葉にアリオスは反応した。

「あ!い、今のは聞かなかったことにして下さい!」

スカーレットは自分が失言した事に気付き、真っ赤になって俯いた。

「スカーレット…」

その時、ザヒムの言葉がアリオスの頭の中で蘇った。

『俺は間違いなく彼女はお前に好意を持っていると思うぞ?』

(本当に…?本当にスカーレットは俺に好意を寄せてくれているのだろうか…?)

アリオスは緊張しながら言った。

「実は…食事を一緒に取ることを避けていた本当の訳は俺自身の問題なんだ。君はいずれ近いうちにシュバルツ家へ戻る事になるだろう?」

「そ…それは…」

しかし、それを言い出したのは父リヒャルトの意見である。スカーレットの気持ちとしてはまだカールの…そしてアリオスのそばにいたかったのだ。しかし、ここは自分の家では無い。決めるのは当主であるアリオスなのだ。

スカーレットの困った様子にアリオスは勇気を振り絞って言った。

「あまり親しくなりすぎると…別れが辛くなってしまう。手放したくないと言う気持ちがますます強くなっていってしまうから…線を引こうと思ったんだ」

「アリオス様…?」

(そ、それってもしかして…?)

スカーレットの心臓が高鳴る。その時―。

「好きだ」

「え?」

いきなりの告白だった。

「スカーレット…。俺は君が好きだ。出来ればずっとこのまま本当の婚約者としてここに残っていて欲しいと思っていた。けれど…君は過去のトラウマから男性恐怖症になってしまっていただろう?だから俺は…気持ちを打ち明けられずにいたんだ」

「アリオス様…」

スカーレットの両目に涙が溢れて来た。それを見たアリオスは焦ってしまった。

「す、すまなかった!俺は君を泣かせるつもりは全く無かったんだ。もし不快に感じたなら…」

「いいえ、そうじゃありません。う、嬉しくて…」

スカーレットは首を振った。

「私も…私もアリオス様が好きです」

涙に濡れた瞳でアリオスをじっと見つめて来た。

「そ、その話…本当か‥‥?」

アリオスは声を震わせてスカーレットに近付いた―。
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