175 / 199
第8章 2 告白
しおりを挟む
「こちらをどうぞ」
スカーレットは椅子に座ったアリオスに薄い色の着いた飲み物を差し出して来た。
「ああ、ありがとう…ところでこの飲み物は何だ?ただの水ではなさそうだが…」
「はい。それはベルガモットのハーブティーを冷ましたものです」
スカーレットもテーブルを挟んでアリオスの向かい側の席に座ると言った。
「そうか…これはハーブティーだったのか。ありがとう、頂くよ」
そしてアリオスはグラスの飲み物を口にした。ハーブの香りが心を落ち着かせてくれるように感じた。
「うん。すっきりして…おいしいな。ありがとう」
そして席を立とうとしたが、スカーレットが何やら言いたげな顔で自分を見ていることに気が付いた。
「…どうした?何か言いたい事でもあるのなら話を聞くぞ?」
「え?あ、あの…よ、宜しいのでしょうか…?」
躊躇いがちにスカーレットが尋ねて来る。
「ああ、いいぞ」
本当はもう少しスカーレットと話がしたかったアリオスにとってはまたとないチャンスだった。例え、それがどんな話であろうとも…。
「あの…アリオス様。何故…最近私達と一緒に食事を召し上がらないのでしょうか…?」
「え…?」
予想もしていなかった質問にアリオスは戸惑った。
(てっきり父親の話が出て来るかと思っていたのに…)
「アリオス様…?」
「あ、じ、実は…最近仕事が忙しくてね。ザヒムとも仕事の付き合いで飲んでるんだ」
俺を勝手に引き合に出すなと文句を言っているザヒムの姿がアリオスの頭をよぎる。
「そうですか…カール様が寂しがっておられました。…私も」
「え?」
最後にポツリと言ったスカーレットの言葉にアリオスは反応した。
「あ!い、今のは聞かなかったことにして下さい!」
スカーレットは自分が失言した事に気付き、真っ赤になって俯いた。
「スカーレット…」
その時、ザヒムの言葉がアリオスの頭の中で蘇った。
『俺は間違いなく彼女はお前に好意を持っていると思うぞ?』
(本当に…?本当にスカーレットは俺に好意を寄せてくれているのだろうか…?)
アリオスは緊張しながら言った。
「実は…食事を一緒に取ることを避けていた本当の訳は俺自身の問題なんだ。君はいずれ近いうちにシュバルツ家へ戻る事になるだろう?」
「そ…それは…」
しかし、それを言い出したのは父リヒャルトの意見である。スカーレットの気持ちとしてはまだカールの…そしてアリオスのそばにいたかったのだ。しかし、ここは自分の家では無い。決めるのは当主であるアリオスなのだ。
スカーレットの困った様子にアリオスは勇気を振り絞って言った。
「あまり親しくなりすぎると…別れが辛くなってしまう。手放したくないと言う気持ちがますます強くなっていってしまうから…線を引こうと思ったんだ」
「アリオス様…?」
(そ、それってもしかして…?)
スカーレットの心臓が高鳴る。その時―。
「好きだ」
「え?」
いきなりの告白だった。
「スカーレット…。俺は君が好きだ。出来ればずっとこのまま本当の婚約者としてここに残っていて欲しいと思っていた。けれど…君は過去のトラウマから男性恐怖症になってしまっていただろう?だから俺は…気持ちを打ち明けられずにいたんだ」
「アリオス様…」
スカーレットの両目に涙が溢れて来た。それを見たアリオスは焦ってしまった。
「す、すまなかった!俺は君を泣かせるつもりは全く無かったんだ。もし不快に感じたなら…」
「いいえ、そうじゃありません。う、嬉しくて…」
スカーレットは首を振った。
「私も…私もアリオス様が好きです」
涙に濡れた瞳でアリオスをじっと見つめて来た。
「そ、その話…本当か‥‥?」
アリオスは声を震わせてスカーレットに近付いた―。
スカーレットは椅子に座ったアリオスに薄い色の着いた飲み物を差し出して来た。
「ああ、ありがとう…ところでこの飲み物は何だ?ただの水ではなさそうだが…」
「はい。それはベルガモットのハーブティーを冷ましたものです」
スカーレットもテーブルを挟んでアリオスの向かい側の席に座ると言った。
「そうか…これはハーブティーだったのか。ありがとう、頂くよ」
そしてアリオスはグラスの飲み物を口にした。ハーブの香りが心を落ち着かせてくれるように感じた。
「うん。すっきりして…おいしいな。ありがとう」
そして席を立とうとしたが、スカーレットが何やら言いたげな顔で自分を見ていることに気が付いた。
「…どうした?何か言いたい事でもあるのなら話を聞くぞ?」
「え?あ、あの…よ、宜しいのでしょうか…?」
躊躇いがちにスカーレットが尋ねて来る。
「ああ、いいぞ」
本当はもう少しスカーレットと話がしたかったアリオスにとってはまたとないチャンスだった。例え、それがどんな話であろうとも…。
「あの…アリオス様。何故…最近私達と一緒に食事を召し上がらないのでしょうか…?」
「え…?」
予想もしていなかった質問にアリオスは戸惑った。
(てっきり父親の話が出て来るかと思っていたのに…)
「アリオス様…?」
「あ、じ、実は…最近仕事が忙しくてね。ザヒムとも仕事の付き合いで飲んでるんだ」
俺を勝手に引き合に出すなと文句を言っているザヒムの姿がアリオスの頭をよぎる。
「そうですか…カール様が寂しがっておられました。…私も」
「え?」
最後にポツリと言ったスカーレットの言葉にアリオスは反応した。
「あ!い、今のは聞かなかったことにして下さい!」
スカーレットは自分が失言した事に気付き、真っ赤になって俯いた。
「スカーレット…」
その時、ザヒムの言葉がアリオスの頭の中で蘇った。
『俺は間違いなく彼女はお前に好意を持っていると思うぞ?』
(本当に…?本当にスカーレットは俺に好意を寄せてくれているのだろうか…?)
アリオスは緊張しながら言った。
「実は…食事を一緒に取ることを避けていた本当の訳は俺自身の問題なんだ。君はいずれ近いうちにシュバルツ家へ戻る事になるだろう?」
「そ…それは…」
しかし、それを言い出したのは父リヒャルトの意見である。スカーレットの気持ちとしてはまだカールの…そしてアリオスのそばにいたかったのだ。しかし、ここは自分の家では無い。決めるのは当主であるアリオスなのだ。
スカーレットの困った様子にアリオスは勇気を振り絞って言った。
「あまり親しくなりすぎると…別れが辛くなってしまう。手放したくないと言う気持ちがますます強くなっていってしまうから…線を引こうと思ったんだ」
「アリオス様…?」
(そ、それってもしかして…?)
スカーレットの心臓が高鳴る。その時―。
「好きだ」
「え?」
いきなりの告白だった。
「スカーレット…。俺は君が好きだ。出来ればずっとこのまま本当の婚約者としてここに残っていて欲しいと思っていた。けれど…君は過去のトラウマから男性恐怖症になってしまっていただろう?だから俺は…気持ちを打ち明けられずにいたんだ」
「アリオス様…」
スカーレットの両目に涙が溢れて来た。それを見たアリオスは焦ってしまった。
「す、すまなかった!俺は君を泣かせるつもりは全く無かったんだ。もし不快に感じたなら…」
「いいえ、そうじゃありません。う、嬉しくて…」
スカーレットは首を振った。
「私も…私もアリオス様が好きです」
涙に濡れた瞳でアリオスをじっと見つめて来た。
「そ、その話…本当か‥‥?」
アリオスは声を震わせてスカーレットに近付いた―。
1
お気に入りに追加
706
あなたにおすすめの小説
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった
Blue
恋愛
王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。
「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」
シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。
アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。
「優秀すぎて鼻につく」と婚約破棄された公爵令嬢は弟殿下に独占される
杓子ねこ
恋愛
公爵令嬢ソフィア・ファビアスは完璧な淑女だった。
婚約者のギルバートよりはるかに優秀なことを隠し、いずれ夫となり国王となるギルバートを立て、常に控えめにふるまっていた。
にもかかわらず、ある日、婚約破棄を宣言される。
「お前が陰で俺を嘲笑っているのはわかっている! お前のような偏屈な女は、婚約破棄だ!」
どうやらギルバートは男爵令嬢エミリーから真実の愛を吹き込まれたらしい。
事を荒立てまいとするソフィアの態度にギルバートは「申し開きもしない」とさらに激昂するが、そこへ第二王子のルイスが現れる。
「では、ソフィア嬢を俺にください」
ルイスはソフィアを抱きしめ、「やっと手に入れた、愛しい人」と囁き始め……?
※ヒーローがだいぶ暗躍します。
侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。
二位関りをん
恋愛
子爵令嬢メアリーが侯爵家当主ウィルソンに嫁いで、はや1年。その間挨拶くらいしか会話は無く、夜の営みも無かった。
そんな中ウィルソンから子供が出来たと語る男爵令嬢アンナを愛人として迎えたいと言われたメアリーはショックを受ける。しかもアンナはウィルソンにメアリーを陥れる嘘を付き、ウィルソンはそれを信じていたのだった。
ある日、色々あって職業案内所へ訪れたメアリーは秒速で王宮の女官に合格。結婚生活は1年を過ぎ、離婚成立の条件も整っていたため、メアリーは思い切ってウィルソンに離婚届をつきつけた。
そして王宮の女官になったメアリーは、王太子レアードからある提案を受けて……?
※世界観などゆるゆるです。温かい目で見てください
妹に人生を狂わされた代わりに、ハイスペックな夫が出来ました
コトミ
恋愛
子爵令嬢のソフィアは成人する直前に婚約者に浮気をされ婚約破棄を告げられた。そしてその婚約者を奪ったのはソフィアの妹であるミアだった。ミアや周りの人間に散々に罵倒され、元婚約者にビンタまでされ、何も考えられなくなったソフィアは屋敷から逃げ出した。すぐに追いつかれて屋敷に連れ戻されると覚悟していたソフィアは一人の青年に助けられ、屋敷で一晩を過ごす。その後にその青年と…
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる