母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

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第7章 15 彼らの正体

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「お父様、アリオス様がお父様にお話があるそうです」

スカーレットは部屋に戻ると荷物整理をしていたリヒャルトに声を掛けて来た。

「え?私に?」

「はい、実は『ベルンヘル』の3人の警察官がリヒャルト様にお会いしたいと尋ねて来ているのです。一応、応接室に案内はしてあるのですが、ひょっとするとリヒャルト様なら警察官の顔を御存じではないかと思ったのですが…」

躊躇いがちに言うアリオスの言葉にリヒャルトは反応した。

「え?『ベルンヘル』の警察官…ですか?」

「はい、それでヴィクトールからの手紙も持参していました。お父様ならこの手紙が本物かどうか分りますよね?」

スカーレットはリヒャルトに手紙を渡した。

「分った…中身をみてみよう」

リヒャルトは封筒から手紙を取り出すと目を走らせた。そこには今、リヒャルトは娘一緒にチェスター家で世話になっているとの内容が記されていた。

「これは…」

「どうですか?お父様」

スカーレットは心配そうに尋ねた。

「ああ、間違いない。この手紙はヴィクトールだ。彼が書いた手紙だ」

「そうなのですね?良かった…」

スカーレットは安堵の溜息をついた。

「それでは…警察官にはどうされますか?一応、念の為に遠くから顔だけは見てみるのはいかがでしょう?」

アリオスの提案にリヒャルトは難色を示した。

「ええ…顔を見るのは構いませんが…私はあの時、アヘン中毒で自我が全くない状況でした。そんな中、彼等の顔を見ても覚えているかどうか…」

リヒャルトの意見も最もであった。

「お父様…遠目から顔を見るだけなら宜しいのではありませんか?本当に会った事があるなら何か思い出されるかもしれませんし」

スカーレットの言葉にリヒャルトは悩んだ。

「確かに…顔を見る事で何かが思い出されるかもしれない…、よし、分った」

そしてリヒャルトは顔を上げるとアリオスを見た。

「アリオス様…私をその3人の警察官の元へ案内して頂けますか?」

「ええ、勿論です」

こうして3人は警察官が待つ応接室へと向かった。



****

「どうです?見覚えはありますか?」

アリオスは壁穴を覗きこんでいるリヒャルトに声を掛けた。

「そうですね…」

リヒャルトはじっと3人の様子をみつめていた。この部屋は隣の応接室を監視できるように壁に穴があけられて、中の様子を見る事が出来た。穴の部分はカモフラージュの為に絵画が飾られている。実は警察官達が通された部屋は特別な造りをしており、不審客を観察する為の部屋だったのだ。すると、突如リヒャルトが声を上げた。

「あ!あの人物…知っています!私を見つけてくれた…男性です。彼は何となく見覚えがあります」

リヒャルトの潜在意識で覚えていたのは『リー』と呼ばれた男だった。

「本当ですか?それならあの人達は…」

スカーレットの言葉の後にリヒャルトは続いた。

「ああ。恐らく信頼しても大丈夫だと思う」

リヒャルトが頷くと、アリオスは安堵のため息をついた。

「ああ…良かった。リヒャルト様を監禁した警察官では無くて」

「はい、多分彼は信用してもいいと思います」

リヒャルトは頷く。

「では彼らの前に姿を現しましょうか?」

「はい」

アリオスの言葉にリヒャルトは返事をした―。


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