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第7章 10 リヒャルトの過去 6
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ふと薄暗い部屋の中でリヒャルトの意識が目覚めた。気づけば両手、両足を縛られて床の上に転がされていた。
「な、何だ?!これはっ!」
自分の状況がすっかり分からずにリヒャルトは声を上げた。その時―
ガチャリ
目の前の扉が開かれた。
「だ、誰だ?!」
リヒャルトが顔を上げるとそこにカンテラを持った男とアグネスが立っていた。男はよく見るとリヒャルトに書類を渡してきた男である。
「ああ…ようやく目が覚めたようですね。それにしても貴方は根が素直な方なのですね?こんなにたやすく催眠暗示にかかるのですから」
「催眠…暗示…?」
リヒャルトは男を…そしてアグネスを見ると言った。
「おい!一体…これはどういう事だっ!私の縄を解けっ!」
するとアグネスが部屋に入ってきた。そしてリヒャルトの前にやってきてしゃがみ込むと言った。
「ありがとう、リヒャルト様。貴方のお陰で私達はシュバルツ家を手に入れることが出来ますわ」
「え…?何だって…?」
リヒャルトにはアグネスが言っている意味がさっぱり分からなかった。だが、自分が気を失っている間に重大な何かが起きてしまったことだけは感じ取れた。
「これが何かお分かりになりますか?」
男は書類をヒラヒラとさせた。それは…。
「あ!そ、それは…先程の婚姻届ではないかっ?!」
「ええ、そうですよ。ありがとうございます。サインをしていただいて」
アグネスは笑みを浮かべなが言う。
「な、何だって…サイン…?嘘だ!私がそんなものにサインをするはずがない!」
「おや?これでもまだそのような事を仰るのですか?」
男はリヒャルトの前に婚姻届を突きつけた。そこには、はっきりとリヒャルトのサインが記されていた。
「そ、そんな…馬鹿な…」
(一体…いつの間に私は婚姻届にサインをしてしまったのだ…っ?!)
するとさらに男が言う。
「それだけではありません。貴方の今の生活状況を聞かせて頂いたのでたった1人の娘…スカーレットお嬢様にお手紙を書くことが出来ました。とても感謝しておりますよ?」
「え…?て、手紙…一体何のことだっ?!」
リヒャルトは叫ぶように言った。
「ああ…そうですね。貴方は催眠暗示に掛けられた状態でしたからどんな内容の手紙がご存知ありませんよね?一人娘に宛てた手紙の内容をリヒャルト様がご存知ないということはあまりにお気の毒ですから、ここは一つ私がお手紙を読み上げてさしあげましょう」
男は笑みを浮かべると手紙を読み始めた。
『スカーレット、元気にしているか?私は単身赴任先の『ベルンヘル』に来ている…』
男が読み上げる手紙の内容を耳にしてリヒャルトは顔色が青ざめていった。夫をなくした未亡人と恋仲になり、再婚をした。女性には17歳の娘がいるのでスカーレットに母と妹が出来たこと。そして近々3人で屋敷に帰るという旨が記されていた。
「な、何と言うことだ…その手紙をスカーレットに送るつもりか…そんな事はさせるか!」
リヒャルトは両手両足を縛られた状態でありながら上半身を起こすと、男の身体に体当たりをした。
ガツンッ!!
激しい音が鳴り響き、男が床に倒れた。
「こ、こいつ!大人しくしていればつけあがりやがって!」
起き上がった男はそれまでの丁寧な口調とは違い、ぞんざいな言葉遣いになった。
「しばらく眠っていろっ!」
男はリヒャルトの腹を蹴り上げた。
ドスッ!!
激しい痛みがリヒャルトを襲う。
「う…」
リヒャルトはそのまま意識を失ってしまった―。
「な、何だ?!これはっ!」
自分の状況がすっかり分からずにリヒャルトは声を上げた。その時―
ガチャリ
目の前の扉が開かれた。
「だ、誰だ?!」
リヒャルトが顔を上げるとそこにカンテラを持った男とアグネスが立っていた。男はよく見るとリヒャルトに書類を渡してきた男である。
「ああ…ようやく目が覚めたようですね。それにしても貴方は根が素直な方なのですね?こんなにたやすく催眠暗示にかかるのですから」
「催眠…暗示…?」
リヒャルトは男を…そしてアグネスを見ると言った。
「おい!一体…これはどういう事だっ!私の縄を解けっ!」
するとアグネスが部屋に入ってきた。そしてリヒャルトの前にやってきてしゃがみ込むと言った。
「ありがとう、リヒャルト様。貴方のお陰で私達はシュバルツ家を手に入れることが出来ますわ」
「え…?何だって…?」
リヒャルトにはアグネスが言っている意味がさっぱり分からなかった。だが、自分が気を失っている間に重大な何かが起きてしまったことだけは感じ取れた。
「これが何かお分かりになりますか?」
男は書類をヒラヒラとさせた。それは…。
「あ!そ、それは…先程の婚姻届ではないかっ?!」
「ええ、そうですよ。ありがとうございます。サインをしていただいて」
アグネスは笑みを浮かべなが言う。
「な、何だって…サイン…?嘘だ!私がそんなものにサインをするはずがない!」
「おや?これでもまだそのような事を仰るのですか?」
男はリヒャルトの前に婚姻届を突きつけた。そこには、はっきりとリヒャルトのサインが記されていた。
「そ、そんな…馬鹿な…」
(一体…いつの間に私は婚姻届にサインをしてしまったのだ…っ?!)
するとさらに男が言う。
「それだけではありません。貴方の今の生活状況を聞かせて頂いたのでたった1人の娘…スカーレットお嬢様にお手紙を書くことが出来ました。とても感謝しておりますよ?」
「え…?て、手紙…一体何のことだっ?!」
リヒャルトは叫ぶように言った。
「ああ…そうですね。貴方は催眠暗示に掛けられた状態でしたからどんな内容の手紙がご存知ありませんよね?一人娘に宛てた手紙の内容をリヒャルト様がご存知ないということはあまりにお気の毒ですから、ここは一つ私がお手紙を読み上げてさしあげましょう」
男は笑みを浮かべると手紙を読み始めた。
『スカーレット、元気にしているか?私は単身赴任先の『ベルンヘル』に来ている…』
男が読み上げる手紙の内容を耳にしてリヒャルトは顔色が青ざめていった。夫をなくした未亡人と恋仲になり、再婚をした。女性には17歳の娘がいるのでスカーレットに母と妹が出来たこと。そして近々3人で屋敷に帰るという旨が記されていた。
「な、何と言うことだ…その手紙をスカーレットに送るつもりか…そんな事はさせるか!」
リヒャルトは両手両足を縛られた状態でありながら上半身を起こすと、男の身体に体当たりをした。
ガツンッ!!
激しい音が鳴り響き、男が床に倒れた。
「こ、こいつ!大人しくしていればつけあがりやがって!」
起き上がった男はそれまでの丁寧な口調とは違い、ぞんざいな言葉遣いになった。
「しばらく眠っていろっ!」
男はリヒャルトの腹を蹴り上げた。
ドスッ!!
激しい痛みがリヒャルトを襲う。
「う…」
リヒャルトはそのまま意識を失ってしまった―。
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