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第5章 11 アグネスとエーリカ
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その頃アグネスとエーリカは宝石商を招き入れ、どのアクセサリーを購入するか選んでいた。
「う~ん‥‥どれもあまりパッとしないわね…」
アグネスはダイヤの指輪を手に取るとボソリと言った。
「あら?お母様、でもこの紫のダイヤのイヤリングは素敵よ」
エーリカはイヤリングを手に取るとアグネスに見せた。
「どうでしょうか?お気に召しませんか?まだ他にも色々お持ちしておりますよ」
本日、5回目の呼び出しでアグネスに招かれて屋敷にやって来た宝石商は何とか宝石を買ってもらう為に必死だった。今まで5回も招かれているにも関わらず、まだ一度も宝石を買ってもらった事は無かった。
「あら、そう?なら早く出して頂戴」
アグネスの言葉に宝石商は足元に置いたアタッシュケースから宝石を取り出すためにかがんだその瞬間、アグネスとエーリカは隠し持っていたイミテーションダイヤを素早くすり替え、本物の宝石をポケットにしまった。
「さぁ、どうぞ。こちらが本日新しくお持ちしたダイヤですが…」
「いえ!もう結構よ!」
アグネスはピシャリと言った。
「え?え?それは一体どういう意味でしょうか?」
「分らないの?気に入ったダイヤが無かったから、帰れって言ってるのよ?」
嘲笑いしながらエーリカは商人を指さした。
「う…そ、そんな…っ!」
宝石商はがっくり首をうなだれると、落胆した様子で持ってきたダイヤをアタッシュケースに全てしまい、ゆっくりと部屋を出て行った。
商人が部屋を出て行き、少しの間アグネスとエーリカは無言でソファに座っていたが、やがてアグネスが口を開いた。
「エーリカ、あの商人が完全にいなくなったか見ておいで」
「ええ」
エーリカはソファから立ち上がり、扉へ向かった。そしてドアを開けようとしたとき、突然眼前で扉がノックされた。
コンコン
「キャアッ!」
エーリカは突然眼前で扉をノックされ、驚いてドアを開けた。するとそこには派遣されてこの屋敷でメイドとして働く女性が立っていた。
「あ、あの…すみません。お客様がいらしたのですが‥もう応接室でお待ちです」
「客?客って一体誰よ?」
すると背後でアグネスがヒステリックに喚いた。
「お前!何て役立たずなのっ?!主の許可も得ずに勝手に屋敷にあげるなんて!クビにされたいのかしらっ?!全く…これかだら派遣メイドは使えないのよっ!さっさとおい返しなさい!」
「で、ですが…こちらが止める間もなく上がり込んでしまわれて…!」
「物乞いだったらどうするのよっ!」
エーリカも目を吊り上げてメイドを怒鳴りつける。
「も、申し訳ございません…た、ただ身なりがあまりに立派だったので、貴族の方ではないかと思ったのです…」
震えながら答えるメイドにアグネスとエーリカの眉がピクリと動いた。
「何?貴族ですって?…名前は何と言うのかしら?」
アグネスはソファから立ち上がるとメイドに近付いた。
「あ、お・お名前はアリオス・チェスターと名乗っておりました」
「アリオス・チェスターと名乗っておられました」
「アリオス・チェスター…聞いたことが無いわね?」
無知なアグネスは貴族の苗字など知る由も無かった。
「ねぇ、それでどんな男なのよ?若いの?年取ってるの?」
勿論エーリカも母親同様、無知な娘である。チェスター家がどれ程有名で有力貴族なのか、知るはずは無い。
「あの、お若い方です。それでどうしても奥様とお嬢様に会って話をしたいと突然訪ねられたのです」
「お母さん!会いに行きましょうよ!貴族社会からつまはじきにされてしまった私達にとって、またとないチャンスかもしれないのよ!」
「ええ。そうね!すぐに行きましょうっ!」
アグネスとエーリカはメイドを置押しのけ、アリオスの待つ応接室へと向かった―。
「う~ん‥‥どれもあまりパッとしないわね…」
アグネスはダイヤの指輪を手に取るとボソリと言った。
「あら?お母様、でもこの紫のダイヤのイヤリングは素敵よ」
エーリカはイヤリングを手に取るとアグネスに見せた。
「どうでしょうか?お気に召しませんか?まだ他にも色々お持ちしておりますよ」
本日、5回目の呼び出しでアグネスに招かれて屋敷にやって来た宝石商は何とか宝石を買ってもらう為に必死だった。今まで5回も招かれているにも関わらず、まだ一度も宝石を買ってもらった事は無かった。
「あら、そう?なら早く出して頂戴」
アグネスの言葉に宝石商は足元に置いたアタッシュケースから宝石を取り出すためにかがんだその瞬間、アグネスとエーリカは隠し持っていたイミテーションダイヤを素早くすり替え、本物の宝石をポケットにしまった。
「さぁ、どうぞ。こちらが本日新しくお持ちしたダイヤですが…」
「いえ!もう結構よ!」
アグネスはピシャリと言った。
「え?え?それは一体どういう意味でしょうか?」
「分らないの?気に入ったダイヤが無かったから、帰れって言ってるのよ?」
嘲笑いしながらエーリカは商人を指さした。
「う…そ、そんな…っ!」
宝石商はがっくり首をうなだれると、落胆した様子で持ってきたダイヤをアタッシュケースに全てしまい、ゆっくりと部屋を出て行った。
商人が部屋を出て行き、少しの間アグネスとエーリカは無言でソファに座っていたが、やがてアグネスが口を開いた。
「エーリカ、あの商人が完全にいなくなったか見ておいで」
「ええ」
エーリカはソファから立ち上がり、扉へ向かった。そしてドアを開けようとしたとき、突然眼前で扉がノックされた。
コンコン
「キャアッ!」
エーリカは突然眼前で扉をノックされ、驚いてドアを開けた。するとそこには派遣されてこの屋敷でメイドとして働く女性が立っていた。
「あ、あの…すみません。お客様がいらしたのですが‥もう応接室でお待ちです」
「客?客って一体誰よ?」
すると背後でアグネスがヒステリックに喚いた。
「お前!何て役立たずなのっ?!主の許可も得ずに勝手に屋敷にあげるなんて!クビにされたいのかしらっ?!全く…これかだら派遣メイドは使えないのよっ!さっさとおい返しなさい!」
「で、ですが…こちらが止める間もなく上がり込んでしまわれて…!」
「物乞いだったらどうするのよっ!」
エーリカも目を吊り上げてメイドを怒鳴りつける。
「も、申し訳ございません…た、ただ身なりがあまりに立派だったので、貴族の方ではないかと思ったのです…」
震えながら答えるメイドにアグネスとエーリカの眉がピクリと動いた。
「何?貴族ですって?…名前は何と言うのかしら?」
アグネスはソファから立ち上がるとメイドに近付いた。
「あ、お・お名前はアリオス・チェスターと名乗っておりました」
「アリオス・チェスターと名乗っておられました」
「アリオス・チェスター…聞いたことが無いわね?」
無知なアグネスは貴族の苗字など知る由も無かった。
「ねぇ、それでどんな男なのよ?若いの?年取ってるの?」
勿論エーリカも母親同様、無知な娘である。チェスター家がどれ程有名で有力貴族なのか、知るはずは無い。
「あの、お若い方です。それでどうしても奥様とお嬢様に会って話をしたいと突然訪ねられたのです」
「お母さん!会いに行きましょうよ!貴族社会からつまはじきにされてしまった私達にとって、またとないチャンスかもしれないのよ!」
「ええ。そうね!すぐに行きましょうっ!」
アグネスとエーリカはメイドを置押しのけ、アリオスの待つ応接室へと向かった―。
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