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第4章 10 2人だけのお茶会
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「え…?ここは…?」
スカーレットが連れて来られた部屋は何とも豪奢な部屋だった。高い天井にはクリスタルガラスのシャンデリアが揺れ、大きな掃き出し窓から見えるのはこの王宮の庭を一望できた。へやには天蓋付きの大きなベッドが置かれ、床は濃紺の重厚そうなカーペットが敷かれている。中央には大理石のテーブルセットが置かれ、応接セットもおかれている。それでも有り余るほどの広さを有する部屋であった。
スカーレットは部屋の中を見渡し、壁に掛けられた絵画を見てピタリと視線を止めた。そこに飾られていたのは他でもない、アイザックの肖像画だったのだ。
(肖像画…まさか…!)
スカーレットは驚いてアイザックを見た。すると彼は笑みを浮かべてスカーレットを見ると言った。
「気付いたのかい?そう、君が思った通りここは私の部屋さ」
「え…?な、何故アイザック皇子様のお部屋に…?」
スカーレットは嫌な予感がして、顔が青ざめ身体が小刻みに震えてきた。そんな様子のスカーレットをアイザックは楽し気に見た。
(フフフ…随分怖がっているみたいだ。今まで相手をしてきた女性達とは全く違う反応だ‥)
アイザックはスカーレットが怯えて震えているにも拘らず、むしろ好ましい姿に感じてしまった。今までに無い反応をするスカーレットが新鮮に映って見えたのだ。
「今、お茶の準備をさせるから座ろうか?」
アイザックがスカーレットに手を伸ばそうとした途端、スカーレットの身体がビクリと大きく跳ねて、数歩後ずさった。それを見てアイザックは大げさに溜息をついた。
「やれやれ…随分怖がられたものだね。でも大丈夫、そんなに怖がる事は無いよ。ただ2人でお茶を飲んで話がしたいだけなのだから。さあ、あの椅子に座ろう。」
アイザックは部屋の中央に置かれた大理石のテーブルに自分から近付き、椅子をひいて座った。
「スカーレット、君も座りなよ」
そして手招きをする。皇子の命令は絶対だ。スカーレットは恐怖を押さえ、震えながらアイザックの正面に座った。
するとどこで見ていたのか、タイミングよく部屋のドアがノックされた。
「殿下、お茶をお持ちしました」
扉の外で女性の声が聞こえる。
「ああ。入ってくれ」
「失礼致します」
ワゴンを押して部屋に入って来たのはこの城に勤めるメイドだった。メイドはワゴンを押して近付くと、チラリとスカーレットを見る。
「…?」
メイドの視線が気になったスカーレットは首を傾げると、女性はハッとした顔になり視線をそらせると2人の前でカップに紅茶を注ぎ、カチャリカチャリと大理石のテーブルの上に置く。その時、スカーレットはあることに気付いた。何故かメイドが小刻みに震えているのだ。
(一体どうしたのかしら…?)
「ご苦労、下がっていいよ」
アイザックはメイドに伝えると、一瞬メイドの肩がピクリと跳ねた。
「は、はい。失礼致します」
メイドは慌てて頭を下げると、ワゴンを押して部屋を足早に出て行った。その後ろ姿をぼんやりスカーレットは見つめていると、アイザックに声を掛けられた。
「どうしたのだ?スカーレット」
「い、いえ。何でもありません。」
「そうか。この紅茶は王室専用の茶葉で淹れた紅茶なんだ。是非飲んでみて欲しいな」
「はい…頂きます」
スカーレットはカップを手に取り、フウフウと冷ましながら紅茶を口に入れた。
「…どうだい?スカーレット」
「はい。とても美味しいです」
スカーレットは紅茶の入ったティーカップをテーブルに上に置くと、震えている手を握りしめた―。
スカーレットが連れて来られた部屋は何とも豪奢な部屋だった。高い天井にはクリスタルガラスのシャンデリアが揺れ、大きな掃き出し窓から見えるのはこの王宮の庭を一望できた。へやには天蓋付きの大きなベッドが置かれ、床は濃紺の重厚そうなカーペットが敷かれている。中央には大理石のテーブルセットが置かれ、応接セットもおかれている。それでも有り余るほどの広さを有する部屋であった。
スカーレットは部屋の中を見渡し、壁に掛けられた絵画を見てピタリと視線を止めた。そこに飾られていたのは他でもない、アイザックの肖像画だったのだ。
(肖像画…まさか…!)
スカーレットは驚いてアイザックを見た。すると彼は笑みを浮かべてスカーレットを見ると言った。
「気付いたのかい?そう、君が思った通りここは私の部屋さ」
「え…?な、何故アイザック皇子様のお部屋に…?」
スカーレットは嫌な予感がして、顔が青ざめ身体が小刻みに震えてきた。そんな様子のスカーレットをアイザックは楽し気に見た。
(フフフ…随分怖がっているみたいだ。今まで相手をしてきた女性達とは全く違う反応だ‥)
アイザックはスカーレットが怯えて震えているにも拘らず、むしろ好ましい姿に感じてしまった。今までに無い反応をするスカーレットが新鮮に映って見えたのだ。
「今、お茶の準備をさせるから座ろうか?」
アイザックがスカーレットに手を伸ばそうとした途端、スカーレットの身体がビクリと大きく跳ねて、数歩後ずさった。それを見てアイザックは大げさに溜息をついた。
「やれやれ…随分怖がられたものだね。でも大丈夫、そんなに怖がる事は無いよ。ただ2人でお茶を飲んで話がしたいだけなのだから。さあ、あの椅子に座ろう。」
アイザックは部屋の中央に置かれた大理石のテーブルに自分から近付き、椅子をひいて座った。
「スカーレット、君も座りなよ」
そして手招きをする。皇子の命令は絶対だ。スカーレットは恐怖を押さえ、震えながらアイザックの正面に座った。
するとどこで見ていたのか、タイミングよく部屋のドアがノックされた。
「殿下、お茶をお持ちしました」
扉の外で女性の声が聞こえる。
「ああ。入ってくれ」
「失礼致します」
ワゴンを押して部屋に入って来たのはこの城に勤めるメイドだった。メイドはワゴンを押して近付くと、チラリとスカーレットを見る。
「…?」
メイドの視線が気になったスカーレットは首を傾げると、女性はハッとした顔になり視線をそらせると2人の前でカップに紅茶を注ぎ、カチャリカチャリと大理石のテーブルの上に置く。その時、スカーレットはあることに気付いた。何故かメイドが小刻みに震えているのだ。
(一体どうしたのかしら…?)
「ご苦労、下がっていいよ」
アイザックはメイドに伝えると、一瞬メイドの肩がピクリと跳ねた。
「は、はい。失礼致します」
メイドは慌てて頭を下げると、ワゴンを押して部屋を足早に出て行った。その後ろ姿をぼんやりスカーレットは見つめていると、アイザックに声を掛けられた。
「どうしたのだ?スカーレット」
「い、いえ。何でもありません。」
「そうか。この紅茶は王室専用の茶葉で淹れた紅茶なんだ。是非飲んでみて欲しいな」
「はい…頂きます」
スカーレットはカップを手に取り、フウフウと冷ましながら紅茶を口に入れた。
「…どうだい?スカーレット」
「はい。とても美味しいです」
スカーレットは紅茶の入ったティーカップをテーブルに上に置くと、震えている手を握りしめた―。
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