92 / 199
第3章 22 凍りつく言葉
しおりを挟む
アイザック皇子に連れられてやってきた談話室は大広間からほど近い場所にあった。床は薄いベージュ色のカーペットが敷かれ、壁紙は抑えた色合いの淡いバラ模様、天井からはクリスタルガラスで作られた大きなシャンデリアが吊り下げられている。部屋の中央には楕円形の大きな大理石のテーブルに、肘掛け椅子が4つ並べられている。談話室にはフットマンが控えており、アイザック皇子がテーブルに近づくと椅子を引いた。そして次にヴァイオレット皇女、アリオス、最後にスカーレットが着席すると頭を下げて去っていく。
そして次に別のフットマンがワインを持って現れると、アイザック皇子から順番にワインを置いていき、全員分配り終えると、一例して去って行った。
「では、みんなでワインでも飲みながら話をしようか?」
アイザック皇子はワイングラスを手に取ると全員を見渡した。
「お兄様、乾杯の挨拶はどうしましょうか?」
「うむ…そうだな。では4人の出会いを祝して乾杯…というのはどうだろう?スカーレット」
「え?あ、はい。そうですね。そちらでよろしいかと思います」
いきなり話をふられたスカーレットは戸惑いながら返事をした。そしてチラリとアリオスを見た。アリオスは不機嫌な様子で黙って座っている。
(困ったわ…私の行動がアリオス様を怒らせてしまったのかしら)
しかし、相手は皇子と皇女である。伯爵家であるスカーレットが誘いを断れるはずもなかった。
「よし、それでは我々の出会いを祝して…乾杯」
アイザック皇子はグラスを掲げると言った。
「「「乾杯」」」
3人はグラスを掲げると声を揃えて言い、全員がワインに口をつけた。アイザック皇子はよほどワインが好きなのか一気に飲み干し、テーブルの上にトンと置くとアリオスに尋ねてきた。
「それで?2人の馴れ初めを教えてくれないかな?」
「スカーレットは…私の弟の家庭教師としてやってきた女性です。」
「弟か…そう言えば確かアリオスには弟が2人いたな?どちらの方だ?」
「末の弟のカールの方です」
「カールはとっても可愛い子だったわ。今何歳になったのかしら?」
ヴァイオレット皇女がアリオスに尋ねてきた。
「カールは10歳になりました」
「まあ、もうそんなに大きくなったのね?以前貴方と恋人同士だった頃はまだ7歳だったのに」
そしてヴァイオレットはチラリとスカーレットを見た。
「…」
スカーレットは内心酷動揺していたが、平常心を保って黙って会話を聞いていた。
(ヴァイオレット皇女様とアリオス様は3年前は恋人同士だったのね…。アリオス様は身分の高い侯爵様だからお相手としては申し分ないものね)
「ねえ、スカーレットさん。私とアリオス様がかつて恋人同士だったときの馴れ初めの話…聞きたいと思わない?」
ヴァイオレット皇女はワイングラス片手にスカーレットに尋ねてきた。
「あ、あの…それは…」
スカーレットはヴァイレットの持っているワイングラスが空になっていることに気が付いた。
(もしかしたら…ヴァイオレット皇女様…ワインに酔ってしまわれたのかしら?よく見ればお顔も何だか赤くなっていらっしゃるし…)
「ヴァイレット、一体何を言い出すのだい?」
妹に甘いアイザック王子はやんわりと妹をたしなめた。
「あら、いいじゃないの。アリオス様とスカーレットさんの馴れ初めを聞かされのなら、私もアリオス様との恋の馴れ初めを話しても」
ヴァイオレット皇女は口を尖らせながら言う。
「それを言うのであれば、何故私と皇女様が破局したのかを話された方が良いのではありませんか?」
アリオスの言葉にその場にいた全員が凍りついた―。
そして次に別のフットマンがワインを持って現れると、アイザック皇子から順番にワインを置いていき、全員分配り終えると、一例して去って行った。
「では、みんなでワインでも飲みながら話をしようか?」
アイザック皇子はワイングラスを手に取ると全員を見渡した。
「お兄様、乾杯の挨拶はどうしましょうか?」
「うむ…そうだな。では4人の出会いを祝して乾杯…というのはどうだろう?スカーレット」
「え?あ、はい。そうですね。そちらでよろしいかと思います」
いきなり話をふられたスカーレットは戸惑いながら返事をした。そしてチラリとアリオスを見た。アリオスは不機嫌な様子で黙って座っている。
(困ったわ…私の行動がアリオス様を怒らせてしまったのかしら)
しかし、相手は皇子と皇女である。伯爵家であるスカーレットが誘いを断れるはずもなかった。
「よし、それでは我々の出会いを祝して…乾杯」
アイザック皇子はグラスを掲げると言った。
「「「乾杯」」」
3人はグラスを掲げると声を揃えて言い、全員がワインに口をつけた。アイザック皇子はよほどワインが好きなのか一気に飲み干し、テーブルの上にトンと置くとアリオスに尋ねてきた。
「それで?2人の馴れ初めを教えてくれないかな?」
「スカーレットは…私の弟の家庭教師としてやってきた女性です。」
「弟か…そう言えば確かアリオスには弟が2人いたな?どちらの方だ?」
「末の弟のカールの方です」
「カールはとっても可愛い子だったわ。今何歳になったのかしら?」
ヴァイオレット皇女がアリオスに尋ねてきた。
「カールは10歳になりました」
「まあ、もうそんなに大きくなったのね?以前貴方と恋人同士だった頃はまだ7歳だったのに」
そしてヴァイオレットはチラリとスカーレットを見た。
「…」
スカーレットは内心酷動揺していたが、平常心を保って黙って会話を聞いていた。
(ヴァイオレット皇女様とアリオス様は3年前は恋人同士だったのね…。アリオス様は身分の高い侯爵様だからお相手としては申し分ないものね)
「ねえ、スカーレットさん。私とアリオス様がかつて恋人同士だったときの馴れ初めの話…聞きたいと思わない?」
ヴァイオレット皇女はワイングラス片手にスカーレットに尋ねてきた。
「あ、あの…それは…」
スカーレットはヴァイレットの持っているワイングラスが空になっていることに気が付いた。
(もしかしたら…ヴァイオレット皇女様…ワインに酔ってしまわれたのかしら?よく見ればお顔も何だか赤くなっていらっしゃるし…)
「ヴァイレット、一体何を言い出すのだい?」
妹に甘いアイザック王子はやんわりと妹をたしなめた。
「あら、いいじゃないの。アリオス様とスカーレットさんの馴れ初めを聞かされのなら、私もアリオス様との恋の馴れ初めを話しても」
ヴァイオレット皇女は口を尖らせながら言う。
「それを言うのであれば、何故私と皇女様が破局したのかを話された方が良いのではありませんか?」
アリオスの言葉にその場にいた全員が凍りついた―。
4
お気に入りに追加
706
あなたにおすすめの小説
辺境伯へ嫁ぎます。
アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。
隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。
私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。
辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。
本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。
辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。
辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。
それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか?
そんな望みを抱いてしまいます。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 設定はゆるいです。
(言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)
❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。
(出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)
【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。
yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~)
パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。
この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。
しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。
もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。
「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。
「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」
そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。
竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。
後半、シリアス風味のハピエン。
3章からルート分岐します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。
https://waifulabs.com/
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
養子の妹が、私の許嫁を横取りしようとしてきます
ヘロディア
恋愛
養子である妹と折り合いが悪い貴族の娘。
彼女には許嫁がいた。彼とは何度かデートし、次第に、でも確実に惹かれていった彼女だったが、妹の野心はそれを許さない。
着実に彼に近づいていく妹に、圧倒される彼女はとうとう行き過ぎた二人の関係を見てしまう。
そこで、自分の全てをかけた挑戦をするのだった。
断罪されてムカついたので、その場の勢いで騎士様にプロポーズかましたら、逃げれんようなった…
甘寧
恋愛
主人公リーゼは、婚約者であるロドルフ殿下に婚約破棄を告げられた。その傍らには、アリアナと言う子爵令嬢が勝ち誇った様にほくそ笑んでいた。
身に覚えのない罪を着せられ断罪され、頭に来たリーゼはロドルフの叔父にあたる騎士団長のウィルフレッドとその場の勢いだけで婚約してしまう。
だが、それはウィルフレッドもその場の勢いだと分かってのこと。すぐにでも婚約は撤回するつもりでいたのに、ウィルフレッドはそれを許してくれなくて…!?
利用した人物は、ドSで自分勝手で最低な団長様だったと後悔するリーゼだったが、傍から見れば過保護で執着心の強い団長様と言う印象。
周りは生暖かい目で二人を応援しているが、どうにも面白くないと思う者もいて…
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
前世コミュ障で話し下手な私はゲームの世界に転生できた。しかし、ヒロインにしてほしいと神様に祈ったのに、なんとモブにすらなれなかった。こうなったら仕方がない。せめてゲームの世界が見れるように一生懸命勉強して私は最難関の王立学園に入学した。ヒロインの聖女と王太子、多くのイケメンが出てくるけれど、所詮モブにもなれない私はお呼びではない。コミュ障は相変わらずだし、でも、折角神様がくれたチャンスだ。今世は絶対に恋に生きるのだ。でも色々やろうとするんだけれど、全てから回り、全然うまくいかない。挙句の果てに私が悪役令嬢だと判ってしまった。
でも、聖女は虐めていないわよ。えええ?、反逆者に私の命が狙われるている?ちょっと、それは断罪されてた後じゃないの? そこに剣構えた人が待ち構えているんだけど・・・・まだ死にたくないわよ・・・・。
果たして主人公は生き残れるのか? 恋はかなえられるのか?
ハッピーエンド目指して頑張ります。
小説家になろう、カクヨムでも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる