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第3章 18 初めての城
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「頭を上げて下さい、アリオス様」
スカーレットに声を掛けられてアリオスは顔を上げた。
「アリオス様には私は大変な恩義があります。家を追い出されて路頭に迷いそうだった私とブリジットを住み込みで雇って頂けたのですから。しかも高額なお給料まで頂いて…なので私がアリオス様のお役に立てるのであれば是非ご協力させて下さい。そ、それに…」
そこでスカーレットは言葉を切った。
「?」
アリオスが首を傾げると、スカーレットは頬を染めながら言う。
「何故か分かりませんが…アリオス様に対しては怖いという気持ちが湧いてこないのです。ひょっとすると…カール様のお兄様だからだと思うのですが」
アリオスは一瞬不意を突かれたかのような表情を見せたが、次の瞬間笑みを浮かべた。
「そうか、それは良かった。男性恐怖症のスカーレットに無理な願いをしてしまい、心苦しく感じていたのだが…俺の事が怖くいないと言ってもらえて安心したよ。では今夜から俺の婚約者の役を頼む。機嫌は1年にしよう。屋敷に帰ったら改めて契約書を作成する」
「い、いえ。別に契約書を作成していただかなくても…」
しかし、生真面目なアリオスは言う。
「いや、こういう事はきちんと書類を用意して置く必要がある。口頭だけでは駄目だ」
「はい、分かりました」
スカーレットは頷く。
その後は馬車の中でアリオスから、今夜のパーティーについての説明が色々なされ…馬車は王宮へと辿り着いた。
****
(まあ…!何て見事な城なのでしょう!)
アリオスにエスコートされて馬車を降りたスカーレットは『ミュゼ』の中心部にある
王城を見て息を飲んだ。
城の周囲には水路が流れ、王城を照らす松明の明かりが水面に映り、赤く幻想的にキラキラと光っている。美しい夜空を背景にそびえ立つ白亜の城はとても美しかった。城の屋根の上に迫り出すように高く伸びる丸い塔は三角に尖っている屋根がとても印象深かった。
大きく開放された扉に続々と招待客たちが吸い込まれていく。参加者の全員が美しい装束を身につけている。
「素敵ですわ…!お城の風景も、お城も、そして…招待客達の美しい装いも…」
見るもの全てが初めてのスカーレットにとって、それはとても感動するものだった。スカーレットがキョロキョロ首を動かして周囲を見る様子を隣でエスコートするアリオスは微笑ましい目で彼女を見つめていた。
(普段しっかりしていると思っていたスカーレットにも、こんなにも子供らしい一面があったのだな…)
そして別の不安がアリオスの胸によぎった。
スカーレットはとても美しい。他の招待客の女性たちの中でもその美貌は群を抜いていた。男性客達はパートナーがいるにも関わらず、城の内部に足を踏み入れたスカーレットを凝視している。それはこの城で働くフットマン達もそうであった。彼らも頬を染めてスカーレットをチラチラと見つめているのであった。そしてそんな彼らとは正反対な様子で彼女を見つめるのが女性客たちだった。彼女達は始めて顔を見せるスカーレットを嫉妬にまみれた目で睨みつけていたのだった。
(まずいな…まさかこんなにも早くスカーレットが目を付けられるとは思わなかった。これは俺の誤算だ。なるべく俺の側から離れないようにしなくては)
一方のスカーレットは生まれて初めてのパーティー会場の様子に夢中になっていたため、自分に向けられている様々な思惑を含んだ視線に全く気付いていなかった。そんなスカーレットがますますアリオスは心配になってしまった。
(国王達に挨拶を済ませたら、早々に引き上げた方が良いだろう…)
そう考えた時、アリオスは背後から声を掛けられた―。
スカーレットに声を掛けられてアリオスは顔を上げた。
「アリオス様には私は大変な恩義があります。家を追い出されて路頭に迷いそうだった私とブリジットを住み込みで雇って頂けたのですから。しかも高額なお給料まで頂いて…なので私がアリオス様のお役に立てるのであれば是非ご協力させて下さい。そ、それに…」
そこでスカーレットは言葉を切った。
「?」
アリオスが首を傾げると、スカーレットは頬を染めながら言う。
「何故か分かりませんが…アリオス様に対しては怖いという気持ちが湧いてこないのです。ひょっとすると…カール様のお兄様だからだと思うのですが」
アリオスは一瞬不意を突かれたかのような表情を見せたが、次の瞬間笑みを浮かべた。
「そうか、それは良かった。男性恐怖症のスカーレットに無理な願いをしてしまい、心苦しく感じていたのだが…俺の事が怖くいないと言ってもらえて安心したよ。では今夜から俺の婚約者の役を頼む。機嫌は1年にしよう。屋敷に帰ったら改めて契約書を作成する」
「い、いえ。別に契約書を作成していただかなくても…」
しかし、生真面目なアリオスは言う。
「いや、こういう事はきちんと書類を用意して置く必要がある。口頭だけでは駄目だ」
「はい、分かりました」
スカーレットは頷く。
その後は馬車の中でアリオスから、今夜のパーティーについての説明が色々なされ…馬車は王宮へと辿り着いた。
****
(まあ…!何て見事な城なのでしょう!)
アリオスにエスコートされて馬車を降りたスカーレットは『ミュゼ』の中心部にある
王城を見て息を飲んだ。
城の周囲には水路が流れ、王城を照らす松明の明かりが水面に映り、赤く幻想的にキラキラと光っている。美しい夜空を背景にそびえ立つ白亜の城はとても美しかった。城の屋根の上に迫り出すように高く伸びる丸い塔は三角に尖っている屋根がとても印象深かった。
大きく開放された扉に続々と招待客たちが吸い込まれていく。参加者の全員が美しい装束を身につけている。
「素敵ですわ…!お城の風景も、お城も、そして…招待客達の美しい装いも…」
見るもの全てが初めてのスカーレットにとって、それはとても感動するものだった。スカーレットがキョロキョロ首を動かして周囲を見る様子を隣でエスコートするアリオスは微笑ましい目で彼女を見つめていた。
(普段しっかりしていると思っていたスカーレットにも、こんなにも子供らしい一面があったのだな…)
そして別の不安がアリオスの胸によぎった。
スカーレットはとても美しい。他の招待客の女性たちの中でもその美貌は群を抜いていた。男性客達はパートナーがいるにも関わらず、城の内部に足を踏み入れたスカーレットを凝視している。それはこの城で働くフットマン達もそうであった。彼らも頬を染めてスカーレットをチラチラと見つめているのであった。そしてそんな彼らとは正反対な様子で彼女を見つめるのが女性客たちだった。彼女達は始めて顔を見せるスカーレットを嫉妬にまみれた目で睨みつけていたのだった。
(まずいな…まさかこんなにも早くスカーレットが目を付けられるとは思わなかった。これは俺の誤算だ。なるべく俺の側から離れないようにしなくては)
一方のスカーレットは生まれて初めてのパーティー会場の様子に夢中になっていたため、自分に向けられている様々な思惑を含んだ視線に全く気付いていなかった。そんなスカーレットがますますアリオスは心配になってしまった。
(国王達に挨拶を済ませたら、早々に引き上げた方が良いだろう…)
そう考えた時、アリオスは背後から声を掛けられた―。
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