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第1章 18 母娘の会話
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「何ですって?スカーレットが?」
アグネスは眉をひそめた。
「はい、お待たせして申し訳ございませんが・・スカーレットお嬢様は熱を出されてバルコニーの椅子の上でぐったりされていたそうです。今ベッドで休まれていますので昼食はお2人で召し上がって下さいとブリジット様から先ほど連絡がございました。」
「酷いわ・・!30分以上も待たせるなんて・・・信じられないっ!」
フットマンの説明にエーリカはナフキンを床に叩きつけた。
「・・・おやめなさい。エーリカ。淑女のする事では無いわよ。これから私たちは華やかな社交界に出るのだから・・・そういう癖は改めなさい。」
アグネスはエーリカを振り返った。
「・・・そう。なら伝えておいて頂戴。『お大事に』と。後・・スカーレットは身体が弱いのかしら?」
尋ねられたフットマンは困った表情を浮かべた。
「も、申し訳ございません。そこまでの事は・・・私には分かりかねます・・。」
「・・・。」
アグネスは腕組みしながらジロリとフットマンを睨み付けると言った。
「・・・お料理が冷めてしまったわ。すぐに温めなおすなり、新しい食事を30分以内に運んできて頂戴。」
「は、はい!承知いたしましたっ!」
フットマンは慌てて頭を下げると慌ただしくバタバタと走り去って行った。
ダイニングルームにマゼンダ親子の2人きりになるとアグネスは溜息をついた。
「全く・・・この屋敷の者は使えない奴らばかりだわ。」
「そうよ!皆・・・私たちの事を鼻で笑って馬鹿にしているのよ。お母様・・・この分じゃ私達いつまでたっても大手を振るって屋敷を歩けないわ。」
エーリカは悔しそうに言う。
「ええ・・分かっているわ。一番邪魔なのは・・スカーレットだけど・・すぐに追い出すわけにはいかないわね・・何しろあの子にはアンドレアという婚約者がいるし・・。」
すると意地悪そうな笑みがエーリカに浮かんだ。
「お母さま・・・そのアンドレア様の事についてだけど私ね・・・いいことを思いついたの。」
そしてアグネスに耳打ちした。
「まあ・・そうだったの?」
アグネスは興味深げにうなずく。
「ええ、そうよ。」
「分かったわ・・・この際だからアンドレアを奪ってしまいなさい。彼の事はお前に任せるわ。私はあの邪魔な2人の執事と・・・スカーレットの傍に張り付いているあのブリジットと言うメイドを何とかするわ。あの3人さえいなくなれば・・・後はどうって事は無いわ。そうすれば・・・スカーレットを・・・。」
アグネスは自分のこれからの計画を考えると楽しくなり、笑みを浮かべた―。
****
カチコチカチコチ・・・
部屋の時計の静かな音に紛れて、ベッドの上で衣擦れの音がした。
「スカーレットお嬢様?!」
ずっと彼女に付き添っていたブリジットが気配に気づき、慌ててベッドに駆け寄って覗き込むと、そこにぼんやりと薄目を開けたスカーレットがいた。
「あ・・私は・・?」
目が覚めたスカーレットは身体を起こした途端、ズキリと激しい頭痛が襲った。
「う、い、痛い・・・。」
頭を押さえるスカーレットにブリジットは慌てた。
「いけません。スカーレットお嬢様。お嬢さんは高熱を出されて今までずっと寝込んでいらっしゃったのですよ?」
「・・・え?」
その言葉にスカーレットは傍らに置かれたサイドテーブルに水の張った洗面器にタオルが入れられていることに気付いた。ブリジットが準備してくれていたものだった。
「ありがとう・・・ブリジット。」
「いいえ、当然の事ですから。」
「ところで・・今何時かしら?」
「夕方5時を過ぎたところです。」
「え?そんなに時間が・・あ、いけない!食事の時間が・・・。」
するとそれをブリジットが引き留めた。
「大丈夫です。私の方から伝えてきました。スカーレットお嬢様の体調が悪いので本日の食事は遠慮させて下さいと。」
「そう・・だったの・・・?」」
スカーレットの顔に安堵の表情が浮かぶ。
「ええ、なのでゆっくりお休みください。後で食事をお持ちしますから。」
「ありがとう、ブリジット・・。」
再びベッドに横になると呟いた。
「アンドレア様は・・・来てくれるかしら・・?」
「勿論でございます。アンドレア様はお優しい方ですし、何よりスカーレット様の婚約者なのですから。」
ブリジットは笑みを浮かべた。
しかし・・・その日、アンドレアはスカーレットを訪ねる事は無かった―。
アグネスは眉をひそめた。
「はい、お待たせして申し訳ございませんが・・スカーレットお嬢様は熱を出されてバルコニーの椅子の上でぐったりされていたそうです。今ベッドで休まれていますので昼食はお2人で召し上がって下さいとブリジット様から先ほど連絡がございました。」
「酷いわ・・!30分以上も待たせるなんて・・・信じられないっ!」
フットマンの説明にエーリカはナフキンを床に叩きつけた。
「・・・おやめなさい。エーリカ。淑女のする事では無いわよ。これから私たちは華やかな社交界に出るのだから・・・そういう癖は改めなさい。」
アグネスはエーリカを振り返った。
「・・・そう。なら伝えておいて頂戴。『お大事に』と。後・・スカーレットは身体が弱いのかしら?」
尋ねられたフットマンは困った表情を浮かべた。
「も、申し訳ございません。そこまでの事は・・・私には分かりかねます・・。」
「・・・。」
アグネスは腕組みしながらジロリとフットマンを睨み付けると言った。
「・・・お料理が冷めてしまったわ。すぐに温めなおすなり、新しい食事を30分以内に運んできて頂戴。」
「は、はい!承知いたしましたっ!」
フットマンは慌てて頭を下げると慌ただしくバタバタと走り去って行った。
ダイニングルームにマゼンダ親子の2人きりになるとアグネスは溜息をついた。
「全く・・・この屋敷の者は使えない奴らばかりだわ。」
「そうよ!皆・・・私たちの事を鼻で笑って馬鹿にしているのよ。お母様・・・この分じゃ私達いつまでたっても大手を振るって屋敷を歩けないわ。」
エーリカは悔しそうに言う。
「ええ・・分かっているわ。一番邪魔なのは・・スカーレットだけど・・すぐに追い出すわけにはいかないわね・・何しろあの子にはアンドレアという婚約者がいるし・・。」
すると意地悪そうな笑みがエーリカに浮かんだ。
「お母さま・・・そのアンドレア様の事についてだけど私ね・・・いいことを思いついたの。」
そしてアグネスに耳打ちした。
「まあ・・そうだったの?」
アグネスは興味深げにうなずく。
「ええ、そうよ。」
「分かったわ・・・この際だからアンドレアを奪ってしまいなさい。彼の事はお前に任せるわ。私はあの邪魔な2人の執事と・・・スカーレットの傍に張り付いているあのブリジットと言うメイドを何とかするわ。あの3人さえいなくなれば・・・後はどうって事は無いわ。そうすれば・・・スカーレットを・・・。」
アグネスは自分のこれからの計画を考えると楽しくなり、笑みを浮かべた―。
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カチコチカチコチ・・・
部屋の時計の静かな音に紛れて、ベッドの上で衣擦れの音がした。
「スカーレットお嬢様?!」
ずっと彼女に付き添っていたブリジットが気配に気づき、慌ててベッドに駆け寄って覗き込むと、そこにぼんやりと薄目を開けたスカーレットがいた。
「あ・・私は・・?」
目が覚めたスカーレットは身体を起こした途端、ズキリと激しい頭痛が襲った。
「う、い、痛い・・・。」
頭を押さえるスカーレットにブリジットは慌てた。
「いけません。スカーレットお嬢様。お嬢さんは高熱を出されて今までずっと寝込んでいらっしゃったのですよ?」
「・・・え?」
その言葉にスカーレットは傍らに置かれたサイドテーブルに水の張った洗面器にタオルが入れられていることに気付いた。ブリジットが準備してくれていたものだった。
「ありがとう・・・ブリジット。」
「いいえ、当然の事ですから。」
「ところで・・今何時かしら?」
「夕方5時を過ぎたところです。」
「え?そんなに時間が・・あ、いけない!食事の時間が・・・。」
するとそれをブリジットが引き留めた。
「大丈夫です。私の方から伝えてきました。スカーレットお嬢様の体調が悪いので本日の食事は遠慮させて下さいと。」
「そう・・だったの・・・?」」
スカーレットの顔に安堵の表情が浮かぶ。
「ええ、なのでゆっくりお休みください。後で食事をお持ちしますから。」
「ありがとう、ブリジット・・。」
再びベッドに横になると呟いた。
「アンドレア様は・・・来てくれるかしら・・?」
「勿論でございます。アンドレア様はお優しい方ですし、何よりスカーレット様の婚約者なのですから。」
ブリジットは笑みを浮かべた。
しかし・・・その日、アンドレアはスカーレットを訪ねる事は無かった―。
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