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第1章 16 才女、スカーレット
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「ただいま・・・ブリジット。」
青ざめた顔でふらふらと1人で屋敷に戻って来たスカーレットをエントランス迄出迎えたブリジットは驚いた。
「まあ・・スカーレットお嬢様!お1人で屋敷に戻られたのですか?一緒に散歩に行かれたアンドレア様とエーリカ様はどうされたのですか?!」
「ええ・・・あの2人は・・。」
するとブリジットの声を聞きつけたのか、アグネスがそこへ現れた。
「お帰り、スカーレット。散歩はどうだったかしら?エーリカとアンドレア様はまだ戻って来ていないけど・・・お前は1人で屋敷に戻ってきたのかしら?」
アグネスはジロリとスカーレットを見つめると腕組みをし、意地悪そうな笑みを浮かべた。
「あ・・・お、お義母様・・。ただいま戻りました。エーリカとアンドレア様は・・恐らくまだ公園を散策されていると思います・・・。」
最後の方は小声で言う。
「あら?そうなの?つまりお前は気を利かせて2人きりにしてあげたと言う事ね?」
「!」
スカーレットはその言葉にビクリとなる。
「な、何て事をおっしゃるのですか?!アンドレア様は・・スカーレット様の婚約者なのですよっ?!」
ブリジットが思わず抗議するとアグネスはピシャリと言った。
「お黙りさないっ!お前はたかが使用人のくせに、この屋敷の女主人に対して何て生意気な口を聞くのだいっ?!」
「・・・っ!」
ブリジットは悔しそうに唇を噛む。そんな2人の様子を見たスカーレットは焦った。
(いけないわ・・!このままにしていたらブリジットはお義母様の機嫌を損ねてクビにされてしまうかも・・・!ブリジットがいなくなってしまったら・・私・・!)
「い、いいのよ?ブリジット。私はその公園にはしょっちゅう足を運んでいるのだから。それにアンドレア様はエスコートがとてもお上手な方なの。だからエーリカをお願いしようと思って、私は先に帰って来たのよ。それに・・・色々あって仕事も少し休んでいたから・・これから部屋に戻って仕事の続きをするわ。」
「仕事・・・?スカーレット。お前は伯爵令嬢なのに仕事をしているのかい?それに家で出来る仕事なんてあるわけないじゃないの。まさか・・・屋敷内でいかがわしい仕事をしているんじゃないでしょうね?」
アグネスに取って女が仕事をすると言ったら、卑しい客商売しか念頭に浮かばなかったのだ。
「ま・・まあ!何て事を仰るのですか?!」
ブリジットはアグネスのおぞましい考えにぞっとしながら声を張り上げた。
「スカーレットお嬢様がそのような仕事をされるはずないではありませんかっ!」
「待って。落ち着いて、ブリジット。」
スカーレットはブリジットの興奮を抑えるとアグネスを見た。
「お義母様、私の仕事は翻訳の仕事なのです。」
「翻訳・・ですって?」
「はい。私は3カ国語を自由に使いこなせるので・・出版社や学校から依頼を受けて外国語の本や執筆された文章を自宅で翻訳する仕事をしているのです。決してやましい仕事はしておりません。」
「な、何・・。翻訳の仕事ですって・・?」
アグネスは途端にスカーレットに対し、激しい嫉妬を覚えた。
スカーレットは我が娘エーリカよりも美しく・・しかも才女である。一方のエーリカはスカーレットよりも美しくなく・・才女でもない。唯一勝っているのは男をたぶらかすことぐらいであった。
(全く・・ますます生意気で気に入らないわ・・・。でも・・・才女であるならば・・この先も利用価値はありそうね・・。)
アグネスの中では・・・この時から恐ろしい、ある計画が進み始めていた―。
青ざめた顔でふらふらと1人で屋敷に戻って来たスカーレットをエントランス迄出迎えたブリジットは驚いた。
「まあ・・スカーレットお嬢様!お1人で屋敷に戻られたのですか?一緒に散歩に行かれたアンドレア様とエーリカ様はどうされたのですか?!」
「ええ・・・あの2人は・・。」
するとブリジットの声を聞きつけたのか、アグネスがそこへ現れた。
「お帰り、スカーレット。散歩はどうだったかしら?エーリカとアンドレア様はまだ戻って来ていないけど・・・お前は1人で屋敷に戻ってきたのかしら?」
アグネスはジロリとスカーレットを見つめると腕組みをし、意地悪そうな笑みを浮かべた。
「あ・・・お、お義母様・・。ただいま戻りました。エーリカとアンドレア様は・・恐らくまだ公園を散策されていると思います・・・。」
最後の方は小声で言う。
「あら?そうなの?つまりお前は気を利かせて2人きりにしてあげたと言う事ね?」
「!」
スカーレットはその言葉にビクリとなる。
「な、何て事をおっしゃるのですか?!アンドレア様は・・スカーレット様の婚約者なのですよっ?!」
ブリジットが思わず抗議するとアグネスはピシャリと言った。
「お黙りさないっ!お前はたかが使用人のくせに、この屋敷の女主人に対して何て生意気な口を聞くのだいっ?!」
「・・・っ!」
ブリジットは悔しそうに唇を噛む。そんな2人の様子を見たスカーレットは焦った。
(いけないわ・・!このままにしていたらブリジットはお義母様の機嫌を損ねてクビにされてしまうかも・・・!ブリジットがいなくなってしまったら・・私・・!)
「い、いいのよ?ブリジット。私はその公園にはしょっちゅう足を運んでいるのだから。それにアンドレア様はエスコートがとてもお上手な方なの。だからエーリカをお願いしようと思って、私は先に帰って来たのよ。それに・・・色々あって仕事も少し休んでいたから・・これから部屋に戻って仕事の続きをするわ。」
「仕事・・・?スカーレット。お前は伯爵令嬢なのに仕事をしているのかい?それに家で出来る仕事なんてあるわけないじゃないの。まさか・・・屋敷内でいかがわしい仕事をしているんじゃないでしょうね?」
アグネスに取って女が仕事をすると言ったら、卑しい客商売しか念頭に浮かばなかったのだ。
「ま・・まあ!何て事を仰るのですか?!」
ブリジットはアグネスのおぞましい考えにぞっとしながら声を張り上げた。
「スカーレットお嬢様がそのような仕事をされるはずないではありませんかっ!」
「待って。落ち着いて、ブリジット。」
スカーレットはブリジットの興奮を抑えるとアグネスを見た。
「お義母様、私の仕事は翻訳の仕事なのです。」
「翻訳・・ですって?」
「はい。私は3カ国語を自由に使いこなせるので・・出版社や学校から依頼を受けて外国語の本や執筆された文章を自宅で翻訳する仕事をしているのです。決してやましい仕事はしておりません。」
「な、何・・。翻訳の仕事ですって・・?」
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(全く・・ますます生意気で気に入らないわ・・・。でも・・・才女であるならば・・この先も利用価値はありそうね・・。)
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