母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

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序章 3 突然の訃報

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 スカーレットの父であるリヒャルト・シュバルツから手紙を貰い、一月が経過した頃・・。


 その日は朝からずっと嫌な曇り空で、午後に入ると冷たい雨がぽつぽつと降り始めた時の事だった。
スカーレットは朝から自室で翻訳の仕事をしており、小休止の為に仕事の手を一度止め、婆やであるブリジットのいれてくれたハーブティーを飲んでいた。

「スカーレットお嬢様。お茶のお味はいかがですか?」

ブリジットは尋ねた。

「ええ、とっても美味しいわ。婆や。」

スカーレットは笑顔で答え、窓の外からどんよりした雲を眺めながら言った。

「何だか嫌な雲行きね・・嵐にでもならなければいいけど・・・。」

外はいつの間にか風が強まり、窓をガタガタと揺らしていた。

「ええ・・そうですね・・。念の為に屋敷中の戸締りをしっかりしておいた方が良いかもしれませんね。」

ブリジットが答えたその時―

コンコンコンッ!

まるで急かすようにスカーレットの部屋のドアがノックされ、続いて父の忠実な執事であるヴィクトールの声が聞こえてきた。

「た、大変でございますっ!スカーレット様っ!一大事です!中へ入っても宜しいでしょうかっ?!」

「あら・・一体何事かしら?」

「何でしょうねぇ・・?」

ブリジットも首をひねっている。
さすがにただ事ではないと思ったスカーレットはドアに向かって声を掛けた。

「ええ、どうぞ。中へ入って。」

「失礼致しますっ!」

ガチャリとドアが開かれ、入室してきた男性は今年30歳になったばかりの執事のヴィクトールであった。彼はいつもきちんとした身なりで、長い髪をまとめて後ろで縛り、黒の燕尾服のスーツを着こなす男性であった。しかし今日に限っては様子が違った。髪はほつれ、棒タイは曲がり、服装に乱れがあった。

「まあ・・どうしたの?ヴィクトール。その姿は・・・。まるでいつもの貴方らしくないわ。」

スカーレットの言葉にヴィクトールは言った。

「スカーレットお嬢様、今はそのような事を言っている場合ではございません!た、大変でございますっ!だ、旦那様が・・・リヒャルト様が・・・帰国途中に死去されたそうですっ!」

「え・・?」

一瞬、スカーレットは何を言われたのか理解できなかった。椅子に座ったまま茫然としているスカーレットをブリジットはしっかり抱きしめると言った。

「ヴィクトールッ!一体・・何を言うのです?冗談にしてはいきすぎですよっ!」

するとヴィクトールは言った。

「ブリジット様、私は冗談を言うようなタイプの人間では無いことくらい、よくご存じでいらっしゃいますよね?大体・・・このような質の悪い冗談を私が言うはずありませんっ!スカーレット様、先ほど・・電報が屋敷に届いたのですっ!すぐに目を通して下さいっ!」

ヴィクトールはスカーレットの傍にツカツカと近づくと、スッと電報を差し出した。

「・・・。」

スカーレットが震える手で電報に手を伸ばしたので、ブリジットはスカーレットから身体を離し、じっと様子を見守った。

「そ、それじゃ・・・よ、読むわ・・・。」

スカーレットは一度だけ、ギュッと目をつぶり・・・恐る恐る電報に目を通した。

『 リヒャルト・シュバルツ ベルンヘル ノ クニニテ シキョスル。 キョウネン 42サイ 』

「!う、嘘・・・・っ!」

亡くなった事を告げるにはあまりに短い電報。しかし・・あまりにも衝撃的な内容にスカーレットは耐えきれず、そのままカクンとまるで糸が切れてしまったかのように意識を失ってしまった。

「スカーレット様っ?!」

椅子から危うく転げ落ちそうになるスカーレットを抱き留めるヴィクトール。

外はいつの間にか嵐になり、激しい雨が窓を叩きつけていた―。
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