気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

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第2章 8 馬車職人と私

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「ロザリア。」

昇降口を出たところで私は背後から声を掛けられた。この学校で「ロザリア」と呼ぶ人は少ない。という事は・・・。
振り向くと、やはりそこに立っていたのはジョバンニだった。

「なに?ジョバンニ。」

早くネロさんの処へ行きたいのに。それにしてもセレナがそばにいないなんて珍しいこともあるものだ。

「ジョバンニだと・・?」

私の名前の呼び方が気に入らなかったのか、ジョバンニは眉をしかめた。

「何?ひょっとして名前の呼び方が気に入らなかった?別にいいじゃない。同級生なんだから。それともジョバンニ様と呼んだ方がいいの?」

溜息をつきながら言うと、ジョバンニはグッと唇をかみしめ・・・そして言った。

「そうだな。俺とお前は同級生、好きなように呼べばいい。」

「あら、そう。ありがと。じゃあね。」

クルリと背を向けて立ち去ろうとした矢先―。

「こらあっ!勝手に帰るなっ!」

ジョバンニが苛立ちながら叫んだ。

「何よ・・・私、忙しいんだけど?」

腕組みしながら言うと、ジョバンニはジロリと睨みつけてきた。

「おい・・・お前、倒れて目覚めてから、本当に別人のように変わったな?ただの記憶喪失には思えない。一体何故そこまで変わったんだ?」

「さあね。そんなの知らない。」

フイとそっぽを向いた。
説明するのも面倒臭いし、どうせ恐らくは信じてなどくれないだろうから説明するだけ時間の無駄だ。

「知らないって・・お前・・・。」

しかし、ジョバンニはコホンと咳払いをすると言った。

「まあ、いい。俺が呼び止めたのはそんな事を言う為じゃないからな。いいか、ロザリア。俺がお前に死ねばいいって言ったことも、セレナに毒を渡されたって事も誰にも言うんじゃないぞ?わかったかっ?!」

「あ、それはもう無理だわ。」

私は即答した。

「何だってっ?!ど、どういうことだっ!」

「う~ん・・・記憶を無くしているから何とも言えないけど・・・・・どうもうちのメイド達は私が死ねばいいって言われていたことも、セレナから毒をもらったことも知ってるみたいなんだよね。」

事実かどうかは分からないが、私はハッタリをかましてやった。

「え・・?お、おい・・・嘘だろう・・・?」

ジョバンニはへなへなとその場に崩れ落ちる。

「話ってそれだけなの?それじゃ私もう行くからね。」

まるで魂の抜けてしまったかのようなジョバンニをその場に残して、私はネロさんが待つ馬車乗り場へと急いだ―。



「お待たせっ!ネロさんっ!」

ブンブン手を振りながら、私はネロさんの馬車に駆け寄った。今、ネロさんが乗ってきた馬車は茶色い色で、シンプルな4人掛け馬車だった。

「おお~・・・いいですねえ。余分な装飾品も無いし、色も落ち着いている。うん、やはり馬車はこうじゃなくっちゃ。」

「ええ。私もこの馬車なら町行く人々に白い目で見られずに済みます。」

ネロさんは嬉しそうに言う。

「じゃあ、ネロさん。早速馬車職人の処へ行きましょう!」

そして私は御者台に座ろうとして・・・断られてしまった。

「ロザリア様。どうか馬車の中に乗ってください。このままでは私が旦那様に叱られてしまいますから。」

半泣きでネロさんに頼まれ、私は不承不承、承諾するのだった―。




「はあ?馬車を改造して欲しいだって?」

馬車職人の店繁華街にあった。

頭がツルリと禿げ上がった馬車職人の男性は不機嫌そうに睨みつけてくる。

「ええ、そうなんです。一番の問題は車輪の振動ですよ。それで提案なんですけど、車輪にゴムをはめこめば、振動を抑えられるじゃないですか。」

私はさらさらとノートに鉛筆で簡単に絵に表してみた。

「ほーう・・確かにゴム製のボールはよくはずむしなあ・・・。」

「あと、御者台ですけど、背もたれがあった方が楽ですよ。座る座面も普通の椅子のようにするか。ゴムを敷き詰めれば、座り心地の悪さも解決です。」

「ほうほう、成程?他には何かあるかい?」

さすが職人魂?男性の目の色が変わってきた。

「ええ、後は雨の日ですね。御者台の人は雨の日はびしょ濡れになるじゃないですか。だから雨除けがあった方が断然いいですよ。例えば御者台の4隅を木の枠か何かで覆って、屋根をつけてあげれば雨を避けられます!」

「おおっ!素晴らしいぜ、お嬢さんっ!」

禿おじさんは歓喜の声を上げた。

「よし、来た。とりあえず試作品を作ってみるぜ。1週間後くらいにまた来てくれるかい?」

「ええ、勿論です。期待していますよ?」

そして私と職人さんはがっちりと握手を交わした・・・。



「それにしてもロザリア様はすごいですね。」

帰り道・・・ネロさんが御者台から話しかけてきた。

「え?何が?」

「だって、ご自分で馬車の改造を思いつくんですから。私など途中で話についていけなくなりましたよ。」

「ハハハ・・・そんな事は無いけど・・。でも、ネロさん。今度から雨の日以外は送り迎えはしないでね。私の為に。」

「ええ、ロザリア様はこれからダイエットに励まれるんですよね?」

「うん。だから協力してよね?」

そして私は馬車の外に目を向けた。さて、次に私がやるべき事は・・・・

「ロザリアの勉強を見る事・・かな?」

待ってなさいよ。ロザリア―。



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