上 下
7 / 61

第1章 6 私は問題児?

しおりを挟む
 ロザリアの机の上は水びたしなっていた。机の端からはぽたぽたと水がしたたり落ちている。それは机に限ったことでは無く、椅子まで水浸しだった。

い・・一体誰がこんな・・子供じみた嫌がらせを?!

私はグルリと教室を見渡したが、全員が知らんふりで顔を背けている。あ・・そう。そういう事なのね?
つまりロザリアはクラス中から嫌われ、彼女を庇う人物は1人もいない・・・。

「ふう・・・。」

私はわざと大きな声で溜息をつき・・・ 何か拭くものがないか探した。しかし、ここは全く見知らぬ場所なので掃除用具があるかどうかも分からない。いや、そもそも日本では学生が掃除するけども・・ここは全くの別世界。そもそも学生が掃除をする文化は無いのかもしれない。

「何か拭くものは無いかしら~・・・。」

私はわざとらしく教室を見渡し・・・窓につるしてあるカーテンに目を付けた。

「そうだ!あれを使いましょう!」

そして窓に近づき、カーテンを手に取り・・・窓枠によじ登り、カーテンを外そうとしたところ・・・。

「おいっ!お前・・・何してるんだよっ!」

眼鏡をかけた男子学生に止められた。

「え・・?カーテンを外そうとしてるんだけど・・?」

「はあ・・お前、ふざけるなよっ!まさかカーテンでお前の水浸しの机と椅子をふくつもりかよ!」

別の男子学生がわめく。

「だって拭くものが無いんだもの。仕方がないじゃない。」

しれっと言ってのけてるうちにチャイムが鳴り、すぐに50代ほどの年齢の女性教師がやってきた。そして私がカーテンにしがみ付いているのを見ると声を荒げた。

「な、何をしているのですかっ!ギンテルさんっ!」

はて・・・ギンテル?ギンテルとは誰の事なのだろう?しかしあの教師は私から目を離さない。と言う事は・・・きっとロザリアのセカンドネームなのだろう。

「とにかく、窓から降りなさいっ!全く何ですか・・淑女ともあろうものが・・・。」

しぶしぶ降りると、女性教師はツカツカと私の前まで歩いて来ると言った。

「何故、このような真似をしたのか言いなさい。」

・・この女教師・・・随分傲慢な態度に見える。ひょっとするとロザリアは教師からも目をつけられているの?

「全く・・貴女はただでさえ、成績が悪くて問題児だと言うのに・・。」

女教師は頭を抱えながらとんでもない事を言った。こんな大勢の生徒たちの前で・・今の発言はロザリアの人権を無視した発言だ。

「先生、その問題児と言う発言は・・・先生個人の言葉ですか?」

私が反論すると、女教師は目を見開いた。

「え・・?今、なんと言ったのですか?」

「ええ、ですから私に対する今の問題児と言う言葉は、先生個人で言ってるのですか?それとも学校全体の評価ですか?」

「な・な・・・貴女・・一体何を・・。」

「先生の言葉は完全に私の人格を否定する言葉です。もし仮に私が本当に問題児であるならば、手を差し伸べるのが教師ではありませんか?見てください。この机と椅子を。」

私は自分のびしょ濡れの机と椅子を指さした。

「まあ・・・・!」

女性教師は目を見開いた。

「あの様にびしょ濡れでは座る事も机も使う事が出来ません。ですが、私は拭き取る物が一切ありません。それでやむを得ずカーテンを拝借しようとしただけです。あれはどう見ても嫌がらせ・・いじめです?この学校では生徒が虐めれていても教師は目をつぶっているだけなのですか?」

「ロ・・ロザリアさん!そんな・・そんなはずはありません!だ、誰ですか?!彼女の机と椅子を水浸しにしたのは・・・名乗り出なさいっ!」

教室中がシンと静まり返った―。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。

金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。 前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう? 私の願い通り滅びたのだろうか? 前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。 緩い世界観の緩いお話しです。 ご都合主義です。 *タイトル変更しました。すみません。

悪役令嬢に転生したのですが、フラグが見えるのでとりま折らせていただきます

水無瀬流那
恋愛
 転生先は、未プレイの乙女ゲーの悪役令嬢だった。それもステータスによれば、死ぬ確率は100%というDEATHエンド確定令嬢らしい。  このままでは死んでしまう、と焦る私に与えられていたスキルは、『フラグ破壊レベル∞』…………?  使い方も詳細も何もわからないのですが、DEATHエンド回避を目指して、とりまフラグを折っていこうと思います! ※小説家になろうでも掲載しています

【完結】強制力なんて怖くない!

櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のエラリアは、十歳の時に唐突に前世の記憶を取り戻した。 どうやら自分は以前読んだ小説の、第三王子と結婚するも浮気され、妻の座を奪われた挙句、幽閉される「エラリア」に転生してしまったらしい。 そんな人生は真っ平だと、なんとか未来を変えようとするエラリアだが、物語の強制力が邪魔をして思うように行かず……? 強制力がエグい……と思っていたら、実は強制力では無かったお話。 短編です。 完結しました。 なんだか最後が長くなりましたが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

皇妃になりたくてなったわけじゃないんですが

榎夜
恋愛
無理やり隣国の皇帝と婚約させられ結婚しました。 でも皇帝は私を放置して好きなことをしているので、私も同じことをしていいですよね?

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

ゲームの序盤に殺されるモブに転生してしまった

白雲八鈴
恋愛
「お前の様な奴が俺に近づくな!身の程を知れ!」 な····なんて、推しが尊いのでしょう。ぐふっ。わが人生に悔いなし! ここは乙女ゲームの世界。学園の七不思議を興味をもった主人公が7人の男子生徒と共に学園の七不思議を調べていたところに学園内で次々と事件が起こっていくのです。 ある女生徒が何者かに襲われることで、本格的に話が始まるゲーム【ラビリンスは人の夢を喰らう】の世界なのです。 その事件の開始の合図かのように襲われる一番目の犠牲者というのが、なんとこの私なのです。 内容的にはホラーゲームなのですが、それよりも私の推しがいる世界で推しを陰ながら愛でることを堪能したいと思います! *ホラーゲームとありますが、全くホラー要素はありません。 *モブ主人のよくあるお話です。さらりと読んでいただけたらと思っております。 *作者の目は節穴のため、誤字脱字は存在します。 *小説家になろう様にも投稿しております。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

処理中です...