虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

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2-7 悪女への一歩

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「はあ~・・・すっきりしたわ・・・。」

部屋へ戻った私は大きな伸びをした。そして改めて粗末な部屋を見渡す。かび臭くじめじめした部屋・・・。日当たりも悪いのでベッドのカバーやシーツは常に湿った感じがする。

「それにしても・・・よく今迄私はこんな部屋で我慢していたわ・・・。」

思えば私がこの部屋を与えられたのは12年も前になる。もう6歳になったのだから、いつまでも母と同じ部屋ではなく自分1人で寝るようにと言われたのだ。
しかし、これではまるでいつまでたっても母離れ出来ていないと世間から囚われがちだが、実際はそうではなかった。ケチな父と母が私に部屋を与えてくれなかったのだ。だから初めて部屋を与えらえた時の感動と・・・そしてこのような使用人以下の部屋を目にした時の私の落胆ぶりは言い表せない位だった。
私は床の上を見た。
木の床はワックス加工すらされておらず、日当たりも悪く・じめじめした場所のせいで所々カビが生え、さささくれ立っているうえに一部はまくれ上がっている。おまけに今朝のメイド達の対応でインクをぶちまけたので、床の上には黒いインクがこびりついている。

「もうこの部屋ともお別れね。屋敷の中には沢山部屋が余っているのだから・・客間を私の部屋にしましょう。その前に・・・。」

私は母の御下がりのドレスを全て引っ張り出し、ベッドの上に置いた。
古臭い上に、かび臭い・・・こんなドレス今までよく黙って来ていた物だ。
しかし・・・それももう終わり。

「あんな淫らな母の御下がりのドレスなんて・・・見ているだけで怖気が走るわ。取りあえず、このドレスは全て売ってしまいましょう。どうせはした金にしかならないでしょうけど・・。今着ているドレスだって本当は脱ぎたい位だし・・」

兎に角善は急げだ。私は持てるだけのドレスをキャリーバックに詰め込むと、ガラガラと引きずりながら町へと向かった―。



「う~ん・・・どれもこれも古臭いドレスですねえ・・・。」

リサイクルショップの初老の男性店員がカウンターの上に置かれた母のドレスを見ながら溜息をついた。

「ええ。我ながらそう思うわ。でも・・・お願いします。値段が付かなくても構わないので、何とか引き取って頂けないかしら?」

「まあうちはそれでも構いませんけどね・・・。」

「ええ、もう処分出来るなら何でもいいです。」

そして・・・結局母のお古のドレスは全て引き取りと言う事で、値段が付くドレスは1着も無かったのだ。


 その後、私は洋品店へと向かった。この店は全てデザインが同じで大量生産されているので安い事で有名で庶民たちが良く利用している店であった。
今私は手元に金貨100枚というとんでもない大金を持ってはいるが、これは私の当面の生活費である。あのような態度を取ってしまったのである。恐らく今後、私の立場はますます危ういものとなるだろうし、粗末な食事すらもう出てこない可能性だってある。だから私にはなるべく節約してこのお金を大事に使わなくてはならない。

「ドレスなんて・・・安くて十分よ。」

そして私は店内へと足を踏み入れた―。


約2時間後―

「ふう~・・・言い買い物が出来たわ・・・。」

両手いっぱいに袋に入ったドレスを持って、私は満足げに屋敷へと帰って行った。
自室へ戻り、時計を見ると時刻は午後4時になろうとしている。

「そろそろカサンドラが学校から帰ってくる時間だわ・・・。見つかると色々と厄介だから早めに部屋を移動しなくちゃ。」

買ったばかりのドレスを抱え、私は客室がある南の塔へ向かった―。

南の塔の3階にはカサンドラの部屋がある。私はあえて、カサンドラと同じ階の客室へと足を運んだ。

「フウ・・・やっぱり南棟の部屋は日当たりも良くて最高ね・・・。」

この客室は私が今迄使っていた部屋と比べて雲泥の差がある。広さは3倍くらいは違いがあるし、天蓋付きのベッドはフカフカだ。部屋の中には大型のクローゼットもあるし、サイトテーブルに、机も椅子も揃っている。

「さてと・・・まずは今着ているこの古臭いドレスを処分してから・・・厨房へ向かいましょう。」

私は金貨を握りしめるのだった―。
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