多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
90 / 95

第89話 爆弾発言

しおりを挟む
「まぁ、ようこそお越しいただきましたわ。エド様」

「……逃げずに我が家に来てくれたようですな。中々度胸のある方だ」

屋敷に到着するとすぐに、エントランスまで父と母が出迎えに現れた。
父の言葉に不自然さを感じながら私は両親に告げた。

「エドがお父様とお母様にお話があるそうなので、お連れしたのですが……よろしいでしょうか?」

「ええ。勿論よ」
「それでは食事をしながら話をしようではありませんか」

「はい、是非お願いします」

両親の提案に笑顔で頷くエド。
何やら3人の間に思惑があるような雰囲気だ。私はついていけず、1人首をひねっていると母に声をかけられた。

「何をやっているの? ステラ。食事の用意が終わるまで、お客様を応接間にお通ししないと」

「あ、そうですね。では……」

するとエドはとんでもないことを言ってきた。

「いえ、応接間よりもステラの部屋に行きたいのですが」

「「「は?」」」

父と母は豆鉄砲を食らったかのような顔つきになるし、私はエドの魂胆にピンときた。

まさか……またしても、私のとっておきの食べ物を貰うつもりでいるのでは!?
流石にそれだけは阻止しなければ!

「えっと、エド。私の部屋には……」

「そうだな! それがいい!」
「ステラ、自室に案内なさい」

「えっ!?」

あろうことか、両親がエドの言葉に賛同した。
絶対に認めないと思っていたのに!?

「あ、あの……」

嘘だよね? 両人に目で訴えるも無情な言葉を浴びせられる。

「ほら、何をしているの?」
「早くお連れしなさい!」

「はぁ……分かりました……では、行きましょうか? エド」

「そうだな、早く行こう」

ニコニコするエドを連れて、私は渋々自室へ連れて行くことにした――


****


「ステラ。もうスナックは無いのか?」

部屋に入るなり、エドは予想通りの質問を投げつけてきた。

「……ありませんよ。エドがぜーんぶ持っていってしまったじゃないですか」

いや、正直に言えば……まだある。
しかし在庫は僅か。
それに、もうあの部屋に残された宝箱? も半分以下になってしまった。
これ以上自分の取り分を……奪われるわけにはいかない!

「そうか、残念だな。……でも、まぁいいか。これからは……」

エドが何やら呟いているが、最後の方は言葉が小さすぎて聞こえない。

「エド? 今、何か言いましたか?」

「いや? 別に何も。今夜の食事は何が出るんだろうな~ステラの屋敷の食事は美味しいから今から楽しみだ」

「は? もしかして、食事を食べるために我が家に来たのですか?」

「まさか、そんな筈無いだろう?」

ブンブン首を振るエド。

「ふ~ん……なら、一体……」

そこまで話した時、開けていた扉から母が顔を覗かせた。

「食事の用意が出来たわ。ダイニングルームへ来てくださいな」

「はい! 直ちに。さぁ、行こうか? ステラ」

エドが手を差し伸べてきたので、つい無意識にその手を掴んでしまう。

「ま、やっぱり」

その様子に母が嬉しそうにポツリと言う。
やっぱり? やっぱりとはどういう意味だろう?

何のことやら分からず、私達はダイニングルームへ移動した――


****

「さぁ、どうぞ。エド様、今夜はいつも以上に豪華な料理を振る舞わせていただきます」

得意げに話す父。
確かに今夜の料理はいつも以上にすごかった。テーブルの上は肉料理からオードブル、焼き立てパイや魚介料理がぎっしり乗っている。

あまりの量の多さに見ているだけで胸焼けが起こりそうだ。

「素晴らしい料理ですね。とても美味しそうです」

大食漢? のエドはもとより、両親も異常な程ニコニコしている。
一体、何がそんなに嬉しいのだろう。

「どうぞ、召し上がって下さい」

母がエドに料理を勧めた。

「ありがとうございます、でもその前に……アボット伯爵! どうかステラと結婚させて下さい!」

「ええええっ!?」

いきなりの爆弾発言に声を上げたのは、勿論私だ。

「ちょ、ちょっとエド! いきなり何を……!」

「「ええ、勿論です!!」」

「はぁっ!?」

すると、あろうことか両親が声を揃えて返事をした――


しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 89

あなたにおすすめの小説

白い結婚のはずでしたが、王太子の愛人に嘲笑されたので隣国へ逃げたら、そちらの王子に大切にされました

ゆる
恋愛
「王太子妃として、私はただの飾り――それなら、いっそ逃げるわ」 オデット・ド・ブランシュフォール侯爵令嬢は、王太子アルベールの婚約者として育てられた。誰もが羨む立場のはずだったが、彼の心は愛人ミレイユに奪われ、オデットはただの“形式だけの妻”として冷遇される。 「君との結婚はただの義務だ。愛するのはミレイユだけ」 そう嘲笑う王太子と、勝ち誇る愛人。耐え忍ぶことを強いられた日々に、オデットの心は次第に冷え切っていった。だが、ある日――隣国アルヴェールの王子・レオポルドから届いた一通の書簡が、彼女の運命を大きく変える。 「もし君が望むなら、私は君を迎え入れよう」 このまま王太子妃として屈辱に耐え続けるのか。それとも、自らの人生を取り戻すのか。 オデットは決断する。――もう、アルベールの傀儡にはならない。 愛人に嘲笑われた王妃の座などまっぴらごめん! 王宮を飛び出し、隣国で新たな人生を掴み取ったオデットを待っていたのは、誠実な王子の深い愛。 冷遇された令嬢が、理不尽な白い結婚を捨てて“本当の幸せ”を手にする

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

婚約者が言い寄られようとも何も言えなかった公爵令嬢は、自分を変えようと決意する

andante
恋愛
婚約者が言い寄られようと不満を口にできなかった公爵令嬢。 このままではいけないと思い、自分を変えようと決意した。

聖女転生? だが断る

日村透
恋愛
生まれ変わったら、勝ち逃げ確定の悪役聖女になっていた―――  形ばかりと思っていた聖女召喚の儀式で、本当に異世界の少女が訪れてしまった。 それがきっかけで聖女セレスティーヌは思い出す。 この世界はどうも、前世の母親が書いた恋愛小説の世界ではないか。 しかも自分は、本物の聖女をいじめて陥れる悪役聖女に転生してしまったらしい。 若くして生涯を終えるものの、断罪されることなく悠々自適に暮らし、苦しみのない最期を迎えるのだが…… 本当にそうだろうか?  「怪しいですわね。話がうますぎですわ」 何やらあの召喚聖女も怪しい臭いがプンプンする。 セレスティーヌは逃亡を決意した。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

処理中です...