多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
89 / 95

第88話 良い考えがある

しおりを挟む
「カラコン……?」

「ウィッグって何だ?」

恐らく聞いたこともない単語なのだろう。魔女とエドが首を傾げる。

「はい、カラコンとはカラーコンタクトです。目に入れて瞳の色を変えることが出来るレンズです。ウィッグというのは頭に被せるカツラです。……カツラって言われて分かります?」

「カツラなら知ってるぞ。俺も使っていたし、父親も現に……おっと! これは国家秘密だった!」

エドは咄嗟に口元を抑える。
そうか、国王はカツラなのか……。だけど、それが国家秘密になるとは。しかも、その国家秘密をペラペラと口にしてしまうエド。
もう彼の前ではあまり秘密事項は口にしないほうが良いかもしれない。

「目の中にレンズを入れるなんて……お、恐ろしすぎるわ! 一体あなたはどんな世界からやってきたのよ!」

両肩を抱きかかえて震える魔女。
齢80を超えても、恐ろしいものは恐ろしいのだろう。

「あ~大丈夫ですよ。私はコンタクトもカラコンも入れたことがありませんけど、最初は異物感があるかもしれませんが、そのうち慣れるみたいですよ。でもつけたまま寝るのは良くないみたいです。眼球にへばりついて、中々取りづらくなるみたいですから」

「ふ~ん……」
「そうなのか?」

この世界にはない、カラコンの説明を2人にする私って一体……?

「要は、あの小娘は別に魔法で姿を変えていたってことではないのね? 小道具で変装をしていたんでしょう?」

「ええ。そういうことですね」

魔女の言葉に頷く。

「ふ~ん……でも、ステラはそういうものは持っていなかったんだろう? 一体カレンは何者なんだ?」

「フッフッフッ……私には、もうカレンの正体が分かっていますよ。エド」

「何!? 本当か!?」

「それで、カレンは何者なの!?」

エドと魔女が驚いた様子で尋ねてくる。

「はい、カレンはずばり……コスプレイヤーです!!」

そうだ、赤いカラコンにロン毛の銀髪なんて絶対に何らかのキャラクターのコスプレに違いない。現に、カレンはゲームオタクでもあるようだし。

「コス……」
「プレイヤー……?」

増々訳が分からないと言った様子で首を捻る魔女とエド。そこで、今度は2人に一からコスプレイヤーについての説明をする羽目になるのだった――



****


「ふぅ~……それにしても、今日は思いがけない出来事のせいで帰りがすっかり遅くなってしまいましたねぇ」

帰りの馬車の中で、エドに話しかけた。

「そうだな、まさかカレンが現れるとは……まぁ、少しは予想していたかな?」

「え? そうだったのですか? 鈍いエドにしては中々やりますね」

「誰が鈍いんだ? それよりもステラ。カレンは相当君を恨んでいたようだな」

「ええ……まぁ、そうみたいですね」

一体誰のせいで相当恨まれているのか分かっているのだろうか?
私は目の前に座るエドを呆れた眼差しで見つめる。

「でも安心していいぞ。俺に良い考えがあるから任せてくれ」

ニッコリ笑うエド。

「は、はぁ……ありがとうございます」

一体どんな良い考えがあるというのだろう? なんとなく嫌な予感を抱きながら、私は頷くのだった――
しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 89

あなたにおすすめの小説

白い結婚のはずでしたが、王太子の愛人に嘲笑されたので隣国へ逃げたら、そちらの王子に大切にされました

ゆる
恋愛
「王太子妃として、私はただの飾り――それなら、いっそ逃げるわ」 オデット・ド・ブランシュフォール侯爵令嬢は、王太子アルベールの婚約者として育てられた。誰もが羨む立場のはずだったが、彼の心は愛人ミレイユに奪われ、オデットはただの“形式だけの妻”として冷遇される。 「君との結婚はただの義務だ。愛するのはミレイユだけ」 そう嘲笑う王太子と、勝ち誇る愛人。耐え忍ぶことを強いられた日々に、オデットの心は次第に冷え切っていった。だが、ある日――隣国アルヴェールの王子・レオポルドから届いた一通の書簡が、彼女の運命を大きく変える。 「もし君が望むなら、私は君を迎え入れよう」 このまま王太子妃として屈辱に耐え続けるのか。それとも、自らの人生を取り戻すのか。 オデットは決断する。――もう、アルベールの傀儡にはならない。 愛人に嘲笑われた王妃の座などまっぴらごめん! 王宮を飛び出し、隣国で新たな人生を掴み取ったオデットを待っていたのは、誠実な王子の深い愛。 冷遇された令嬢が、理不尽な白い結婚を捨てて“本当の幸せ”を手にする

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

婚約者が言い寄られようとも何も言えなかった公爵令嬢は、自分を変えようと決意する

andante
恋愛
婚約者が言い寄られようと不満を口にできなかった公爵令嬢。 このままではいけないと思い、自分を変えようと決意した。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

いいえ、望んでいません

わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」 結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。 だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。 なぜなら彼女は―――

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

処理中です...