84 / 95
第83話 逆転する立場
しおりを挟む
講義が始まる寸前に、カレンが教室に入ってきた。
するとその途端、学生たちが一斉にざわめく。
「カレンが来たぞ」
「良くも図々しく大学に来れるわね……」
「目を合わせないほうがいいぞ。狙われるかもしれない」
等など……えらい嫌われようだ。
昨日まではカレンは学生たちの受けは良かったはずなのに、この変わりようは一体なんだろう?
カレンも、何故突然自分が周囲から非難の目を向けられているのか理解できないようで戸惑っている。
けれど、自分に対して敵意の目を向けられているのはヒシヒシと感じているようだった。
いつもは一番前の席に取り巻きたちと座っていたのに、今日は廊下側の一番後ろの座席に着席した。
その様子を横目で見ていると、エドが話しかけてきた。
「ステラ、見てみろよ。このクラス中の学生たちの変わりようを」
「ええ、そうですね……流石に露骨すぎますね」
昨日までは私が今のカレンと同じ立場にいただけに、なんとも複雑な気分だ。
「これは、やはり魔女が細工をしたのだろうな。それとも何らかの薬の効果が切れたのかもしれない」
「はぁ……その可能性はありますね」
至近距離の上、耳もとでエドが囁いてくるので背筋がゾワゾワしてたまらない。
「うわっ! カレンがこっちを見たぞ!」
エドが心底嫌そうな声を出す。カレンはエドに縋り付くような視線を向けていたが、私と目が合うと物凄い形相で睨みつけてきた。
うわぁ……露骨過ぎる。
そこで私はエドに声をかけた。
「エド、気をつけてくださいね。何と言っても昨日エドはカレンとデートをしているのですから。カレンにとって、今のエドは自分を地獄の底から救い出してくれるヒーローだと思っているはずです」
何しろ、頼みの綱の取り巻き男たちは大学に来ていない。いや、多分もう二度と来ることは無いだろう……そんな気がする。
「や、やめてくれよ。俺はカレンなんてお断りだ。だいたいデートだって、あれはステラに言われて渋々しただけじゃないか。そんなことは君が一番良く分かっているだろう?」
「まぁ、確かにそうですが……でも、エド。カレンは私と同じように『魂の交換』が行われた人物なのかもしれないのですよ?」
「それがどうしたんだ?」
首を傾げるエド。
「つまり、私と同じ世界から来た可能性があるというわけです。もしかすると、私なんかよりも、もっと色々な食べ物を所有している可能性もありますよ?」
「何だって、それは……」
一瞬、エドは目を大きく見開き……すぐに首を振った。
「い、いや! それでも駄目だ! 俺はカレンのようなタイプは全く好みじゃない」
激しく首を振るエド。
「何故、そんなにカレンを毛嫌いするんです? そんなに悪い見た目じゃ無いと思いますけど?」
そう。カレンはその名の通りに可憐な女性なのだ。だからこそ、婚約者のいる男性を誘惑することが出来たのだろう。
「そういう問題じゃない。とにかく、俺は断固拒否するぞ。……よし、決めた」
「何を決めたんですか?」
「ステラ、今日屋敷に寄らせてくれ。いいか?」
エドが真剣な目で尋ねてきた。
余程エドはカレンに捕まりたくないのだろう。
「えぇ、別に構いませんけど?」
何しろエドが今現在、カレンにロックオンされているのは私のせいなのだから。
けれど、この日……カレンがエドに近づくことは無かった。
恐らく他の学生たちの目を恐れて近づきたくても出来なかったのだろう。
そして……放課後。
ちょっとした事件が起きた――
するとその途端、学生たちが一斉にざわめく。
「カレンが来たぞ」
「良くも図々しく大学に来れるわね……」
「目を合わせないほうがいいぞ。狙われるかもしれない」
等など……えらい嫌われようだ。
昨日まではカレンは学生たちの受けは良かったはずなのに、この変わりようは一体なんだろう?
カレンも、何故突然自分が周囲から非難の目を向けられているのか理解できないようで戸惑っている。
けれど、自分に対して敵意の目を向けられているのはヒシヒシと感じているようだった。
いつもは一番前の席に取り巻きたちと座っていたのに、今日は廊下側の一番後ろの座席に着席した。
その様子を横目で見ていると、エドが話しかけてきた。
「ステラ、見てみろよ。このクラス中の学生たちの変わりようを」
「ええ、そうですね……流石に露骨すぎますね」
昨日までは私が今のカレンと同じ立場にいただけに、なんとも複雑な気分だ。
「これは、やはり魔女が細工をしたのだろうな。それとも何らかの薬の効果が切れたのかもしれない」
「はぁ……その可能性はありますね」
至近距離の上、耳もとでエドが囁いてくるので背筋がゾワゾワしてたまらない。
「うわっ! カレンがこっちを見たぞ!」
エドが心底嫌そうな声を出す。カレンはエドに縋り付くような視線を向けていたが、私と目が合うと物凄い形相で睨みつけてきた。
うわぁ……露骨過ぎる。
そこで私はエドに声をかけた。
「エド、気をつけてくださいね。何と言っても昨日エドはカレンとデートをしているのですから。カレンにとって、今のエドは自分を地獄の底から救い出してくれるヒーローだと思っているはずです」
何しろ、頼みの綱の取り巻き男たちは大学に来ていない。いや、多分もう二度と来ることは無いだろう……そんな気がする。
「や、やめてくれよ。俺はカレンなんてお断りだ。だいたいデートだって、あれはステラに言われて渋々しただけじゃないか。そんなことは君が一番良く分かっているだろう?」
「まぁ、確かにそうですが……でも、エド。カレンは私と同じように『魂の交換』が行われた人物なのかもしれないのですよ?」
「それがどうしたんだ?」
首を傾げるエド。
「つまり、私と同じ世界から来た可能性があるというわけです。もしかすると、私なんかよりも、もっと色々な食べ物を所有している可能性もありますよ?」
「何だって、それは……」
一瞬、エドは目を大きく見開き……すぐに首を振った。
「い、いや! それでも駄目だ! 俺はカレンのようなタイプは全く好みじゃない」
激しく首を振るエド。
「何故、そんなにカレンを毛嫌いするんです? そんなに悪い見た目じゃ無いと思いますけど?」
そう。カレンはその名の通りに可憐な女性なのだ。だからこそ、婚約者のいる男性を誘惑することが出来たのだろう。
「そういう問題じゃない。とにかく、俺は断固拒否するぞ。……よし、決めた」
「何を決めたんですか?」
「ステラ、今日屋敷に寄らせてくれ。いいか?」
エドが真剣な目で尋ねてきた。
余程エドはカレンに捕まりたくないのだろう。
「えぇ、別に構いませんけど?」
何しろエドが今現在、カレンにロックオンされているのは私のせいなのだから。
けれど、この日……カレンがエドに近づくことは無かった。
恐らく他の学生たちの目を恐れて近づきたくても出来なかったのだろう。
そして……放課後。
ちょっとした事件が起きた――
443
お気に入りに追加
2,202
あなたにおすすめの小説
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】
青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。
そして気付いてしまったのです。
私が我慢する必要ありますか?
※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定!
コミックシーモア様にて12/25より配信されます。
コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。
リンク先
https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/
欠陥姫の嫁入り~花嫁候補と言う名の人質だけど結構楽しく暮らしています~
バナナマヨネーズ
恋愛
メローズ王国の姫として生まれたミリアリアだったが、国王がメイドに手を出した末に誕生したこともあり、冷遇されて育った。そんなある時、テンペランス帝国から花嫁候補として王家の娘を差し出すように要求されたのだ。弱小国家であるメローズ王国が、大陸一の国力を持つテンペランス帝国に逆らえる訳もなく、国王は娘を差し出すことを決めた。
しかし、テンペランス帝国の皇帝は、銀狼と恐れられる存在だった。そんな恐ろしい男の元に可愛い娘を差し出すことに抵抗があったメローズ王国は、何かあったときの予備として手元に置いていたミリアリアを差し出すことにしたのだ。
ミリアリアは、テンペランス帝国で花嫁候補の一人として暮らすことに中、一人の騎士と出会うのだった。
これは、残酷な運命に翻弄されるミリアリアが幸せを掴むまでの物語。
本編74話
番外編15話 ※番外編は、『ジークフリートとシューニャ』以外ノリと思い付きで書いているところがあるので時系列がバラバラになっています。
もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユリアは、8歳の時に両親を亡くして以降、叔父に引き取られたものの、厄介者として虐げられて生きてきた。さらにこの世界では命を削る魔法と言われている、治癒魔法も長年強要され続けてきた。
そのせいで体はボロボロ、髪も真っ白になり、老婆の様な見た目になってしまったユリア。家の外にも出してもらえず、メイド以下の生活を強いられてきた。まさに、この世の地獄を味わっているユリアだが、“どんな時でも笑顔を忘れないで”という亡き母の言葉を胸に、どんなに辛くても笑顔を絶やすことはない。
そんな辛い生活の中、15歳になったユリアは貴族学院に入学する日を心待ちにしていた。なぜなら、昔自分を助けてくれた公爵令息、ブラックに会えるからだ。
「どうせもう私は長くは生きられない。それなら、ブラック様との思い出を作りたい」
そんな思いで、意気揚々と貴族学院の入学式に向かったユリア。そこで久しぶりに、ブラックとの再会を果たした。相変わらず自分に優しくしてくれるブラックに、ユリアはどんどん惹かれていく。
かつての友人達とも再開し、楽しい学院生活をスタートさせたかのように見えたのだが…
※虐げられてきたユリアが、幸せを掴むまでのお話しです。
ザ・王道シンデレラストーリーが書きたくて書いてみました。
よろしくお願いしますm(__)m
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。
バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。
全123話
※小説家になろう様にも掲載しています。
転生先は推しの婚約者のご令嬢でした
真咲
恋愛
馬に蹴られた私エイミー・シュタットフェルトは前世の記憶を取り戻し、大好きな乙女ゲームの最推し第二王子のリチャード様の婚約者に転生したことに気が付いた。
ライバルキャラではあるけれど悪役令嬢ではない。
ざまぁもないし、行きつく先は円満な婚約解消。
推しが尊い。だからこそ幸せになってほしい。
ヒロインと恋をして幸せになるならその時は身を引く覚悟はできている。
けれども婚約解消のその時までは、推しの隣にいる事をどうか許してほしいのです。
※「小説家になろう」にも掲載中です
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる