73 / 95
第72話 喜ぶ人
しおりを挟む
「ステラ……本当に、カレンをデートに誘わなければならないのか?」
エドが3人の取り巻き男たちに囲まれて大学構内を歩いているカレンをイヤそうな目で見つめている。
「ええ、そうですよ。私の復讐を成し遂げる為には、カレンを彼らから引き離す必要があるのですから」
「そんなこと言ったって……」
エドは余程カレンをデートに誘うのがイヤなのか、ブツブツ口の中で何やら呟いている。
「どうしたんですか? 早く、カレンをデートに誘ってください。あの3人の見ている前で是非! いいですね? 出来れば、今日の放課後にでもデートしてくださいよ」
「え!? いきなり今日なのか!?」
「はい、善は急げです」
「分かったよ……だけど、ステラ」
真剣な目でエドがじっとみつめてくる。
「なんですか?」
「俺がカレンとデートしても構わないのか?」
「はい、少しも構いません」
「そ、そんな‥‥‥! 即答するなんて!」
何故かエドはショックを受けている。
「そんなことよりも早く、誘って来て下さいよ!」
「わ、分かったよ。行ってくればいいんだろう……?」
エドは恨めしそうな目を一瞬私に向けると、駆け足でカレンたちの元へ向かった。
すると、前方にいたカレンたちは足を止めて振り向く。
遠目からなので良く見えないが、エドはカレンに話しかけている。
「頼むわよ、エド…‥‥!」
私はその様子を見届けると、魔女の元へ向かった――
****
「あら? あなた、また来たの?」
相変わらず、何もないガランとした部屋で怪しげな本を読んでいる魔女が顔を上げた。
「はい、又来ました」
「言っておくけど、『魂の交換』についての情報は何も入っていないわよ。やっぱり次の魔女の集会迄待たなくちゃ……え? ちょ、ちょっと何……それは!」
私は魔女の前に、かつて自分が日本人の時に使用していた文明機器『スマホ』を取り出した。
しかも、この『スマホ』は会社から支給されたものであり実質私の物とは言えない。
「これは、私が『日本』で暮らしていた時に使用していた『スマホ』という、超便利なアイテムなのです。このボタンを押すと‥…」
「えっ! な、何! こ、これは何なの!? しかも動いているし、音まで聞こえてくるじゃない!」
魔女は興奮マックスで、食い入るようにスマホの画面に見入っている。ちなみに、今画面に映し出されているのは会社に内緒でインストールしたパズルゲームである。
「いいですか? これをこうやって、指で触れると動かせるんです。そしてここにはめると‥‥・」
「キャーッ! すごい! 面白い! 何、これ!」
生まれて初めて見るスマホにも、ゲームにもドはまりしている魔女。交渉するなら今だ。
「どうですか? 面白いですか?」
「ええ、面白いわ! 他に言葉で言い表せないくらいよ!」
「そうですか……。どうです? このスマホ、欲しくないですか?」
「え? ま、まさか……くれるの?」
「ええ、でも時折充電しないと使えなくなるので、その際はお預かりして充電しますけど……」
「欲しい! 欲しいに決まっているでしょう!?」
「なら、さしあげましょう。その代わり……」
「分かっているわ。ただでは寄こさないということよね? それで……私に何を望んでいるのかしら?」
魔女は意味深な笑みを浮かべた――
エドが3人の取り巻き男たちに囲まれて大学構内を歩いているカレンをイヤそうな目で見つめている。
「ええ、そうですよ。私の復讐を成し遂げる為には、カレンを彼らから引き離す必要があるのですから」
「そんなこと言ったって……」
エドは余程カレンをデートに誘うのがイヤなのか、ブツブツ口の中で何やら呟いている。
「どうしたんですか? 早く、カレンをデートに誘ってください。あの3人の見ている前で是非! いいですね? 出来れば、今日の放課後にでもデートしてくださいよ」
「え!? いきなり今日なのか!?」
「はい、善は急げです」
「分かったよ……だけど、ステラ」
真剣な目でエドがじっとみつめてくる。
「なんですか?」
「俺がカレンとデートしても構わないのか?」
「はい、少しも構いません」
「そ、そんな‥‥‥! 即答するなんて!」
何故かエドはショックを受けている。
「そんなことよりも早く、誘って来て下さいよ!」
「わ、分かったよ。行ってくればいいんだろう……?」
エドは恨めしそうな目を一瞬私に向けると、駆け足でカレンたちの元へ向かった。
すると、前方にいたカレンたちは足を止めて振り向く。
遠目からなので良く見えないが、エドはカレンに話しかけている。
「頼むわよ、エド…‥‥!」
私はその様子を見届けると、魔女の元へ向かった――
****
「あら? あなた、また来たの?」
相変わらず、何もないガランとした部屋で怪しげな本を読んでいる魔女が顔を上げた。
「はい、又来ました」
「言っておくけど、『魂の交換』についての情報は何も入っていないわよ。やっぱり次の魔女の集会迄待たなくちゃ……え? ちょ、ちょっと何……それは!」
私は魔女の前に、かつて自分が日本人の時に使用していた文明機器『スマホ』を取り出した。
しかも、この『スマホ』は会社から支給されたものであり実質私の物とは言えない。
「これは、私が『日本』で暮らしていた時に使用していた『スマホ』という、超便利なアイテムなのです。このボタンを押すと‥…」
「えっ! な、何! こ、これは何なの!? しかも動いているし、音まで聞こえてくるじゃない!」
魔女は興奮マックスで、食い入るようにスマホの画面に見入っている。ちなみに、今画面に映し出されているのは会社に内緒でインストールしたパズルゲームである。
「いいですか? これをこうやって、指で触れると動かせるんです。そしてここにはめると‥‥・」
「キャーッ! すごい! 面白い! 何、これ!」
生まれて初めて見るスマホにも、ゲームにもドはまりしている魔女。交渉するなら今だ。
「どうですか? 面白いですか?」
「ええ、面白いわ! 他に言葉で言い表せないくらいよ!」
「そうですか……。どうです? このスマホ、欲しくないですか?」
「え? ま、まさか……くれるの?」
「ええ、でも時折充電しないと使えなくなるので、その際はお預かりして充電しますけど……」
「欲しい! 欲しいに決まっているでしょう!?」
「なら、さしあげましょう。その代わり……」
「分かっているわ。ただでは寄こさないということよね? それで……私に何を望んでいるのかしら?」
魔女は意味深な笑みを浮かべた――
175
お気に入りに追加
2,245
あなたにおすすめの小説

白い結婚のはずでしたが、王太子の愛人に嘲笑されたので隣国へ逃げたら、そちらの王子に大切にされました
ゆる
恋愛
「王太子妃として、私はただの飾り――それなら、いっそ逃げるわ」
オデット・ド・ブランシュフォール侯爵令嬢は、王太子アルベールの婚約者として育てられた。誰もが羨む立場のはずだったが、彼の心は愛人ミレイユに奪われ、オデットはただの“形式だけの妻”として冷遇される。
「君との結婚はただの義務だ。愛するのはミレイユだけ」
そう嘲笑う王太子と、勝ち誇る愛人。耐え忍ぶことを強いられた日々に、オデットの心は次第に冷え切っていった。だが、ある日――隣国アルヴェールの王子・レオポルドから届いた一通の書簡が、彼女の運命を大きく変える。
「もし君が望むなら、私は君を迎え入れよう」
このまま王太子妃として屈辱に耐え続けるのか。それとも、自らの人生を取り戻すのか。
オデットは決断する。――もう、アルベールの傀儡にはならない。
愛人に嘲笑われた王妃の座などまっぴらごめん!
王宮を飛び出し、隣国で新たな人生を掴み取ったオデットを待っていたのは、誠実な王子の深い愛。
冷遇された令嬢が、理不尽な白い結婚を捨てて“本当の幸せ”を手にする

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています
如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」
何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。
しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。
様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。
この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが……
男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる