58 / 95
第57話 夢を見てる?
しおりを挟む
「ええっ!? ま、また来たんですか!? しかも男連れで!」
扉を開けて私の姿を目にした途端、ビンセント教授……もとい、コンビニ店員は露骨に嫌そうな顔をする。
「まぁまぁ、そんなこと言わないでよ。だって、私達……同志でしょう? 誰かに見られる前に早く中へ入れてよ」
「分かりましたよ……仕方ありませんね。誰かに部屋の中を見られたくないんで入って下さい」
ビンセント教授もどきが部屋の扉を大きく開け放したので、部屋の中へ入る。続けてエドが中へ入ろうとした時。
「ちょっと待ってください。あなたは入ってこないで下さい」
そしてエドの前に立ちふさがる。あ~あ……やっちゃった……恐らく彼はエドが王子様だということを知らないのだろうな。
「何故です? ステラは中に入れて、どうして俺は中へ入れてもらえないんですか?」
「それはあなたがいれば、俺とステラさんの個人的な話が出来ないからですよ」
「はぁ!? 何ですか、個人的な話って。まさか……教師でありながら、ステラと不埒な関係なのですか!? そんな中年男でありながら!?」
あぁ……もとコンビニ店員が、誤解を招く発言をしてエドに痛いところを点かれてしまった。
「不埒な関係……? 中年男だって? 余計なお世話だ! 俺だってなぁ……好き好んで、こんな身体になったわけじゃないんだからな!?」
おおっ! とうとう、元コンビニ店員はエドに切れてしまった。
「え? ちょ、ちょっと何のことです?」
エドは何が何だか分からないといった様子で目をパチパチさせる。
「それは確かに、あんたみたいな超絶イケメンじゃなかったけどなぁ……それでも若さだけは武器だったんだよ! 俺の取り柄だったんだよ! それがある日目覚めてみれば……こ、こんな理由もわからない世界で、しかもくたびれた中年男の身体になってしまうなんて……あんたには俺の気持ちなんかわかるはずもないよなぁ! あぁん!?」
「え……? ま、まさか……彼も、ステラと同じ『魂の交換』が行われた人物なのか!?」
まるきり支離滅裂な言動だったが、先程私の事情を説明していたお陰でエドは気付いたようだ。
「ええ、そのとおりです。ちなみに元の彼はコンビニという店でアルバイト店員をしていた19歳の青年だったそうです」
「え!? 元々は19歳の青年!? なるほど……それは悲惨な話だ、大いに同情に値する」
腕組みしてウンウン頷くエド。
「え? もしかしてお姉さん、この人に話してしまったんですか!?」
お姉さん……その言葉に全身に鳥肌が立つ。
「だからお姉さんて言葉は使わないでって言ってるでしょう! いろいろあって、やむを得ずね。でも、この人なら大丈夫。秘密は守ってくれると誓ってくれたから」
「確かに、中年男性に『お姉さん』なんて言われたら気味が悪いな」
苦笑しながらエドが頷く。
「まぁお姉さんが構わないって言うなら、俺は別に良いですけどね。ならいいですよ、どうぞ」
扉が開け放たれ、私とエドは室内へ入った。
部屋の中は相変わらず乱雑で物が散乱している。その傍らにはカップ麺が無造作に転がっているが、エドは気付いていない。
恐らく、アレがエドに見つかったら……間違いなく、餌付けすることになるだろう。
「さて……ところで、質問させてもらってもいいかしら?
「はい。何ですか?」
素直に返事をするビンセント。
「あなたは……最近夜、夢を見ている?」
「……は?」
「夢なら見ていますよ。毎晩、自分の部屋にいる夢をね」
「やっぱり……」
思っていた通り、彼も私と同じ状況におかれていたのだ――
扉を開けて私の姿を目にした途端、ビンセント教授……もとい、コンビニ店員は露骨に嫌そうな顔をする。
「まぁまぁ、そんなこと言わないでよ。だって、私達……同志でしょう? 誰かに見られる前に早く中へ入れてよ」
「分かりましたよ……仕方ありませんね。誰かに部屋の中を見られたくないんで入って下さい」
ビンセント教授もどきが部屋の扉を大きく開け放したので、部屋の中へ入る。続けてエドが中へ入ろうとした時。
「ちょっと待ってください。あなたは入ってこないで下さい」
そしてエドの前に立ちふさがる。あ~あ……やっちゃった……恐らく彼はエドが王子様だということを知らないのだろうな。
「何故です? ステラは中に入れて、どうして俺は中へ入れてもらえないんですか?」
「それはあなたがいれば、俺とステラさんの個人的な話が出来ないからですよ」
「はぁ!? 何ですか、個人的な話って。まさか……教師でありながら、ステラと不埒な関係なのですか!? そんな中年男でありながら!?」
あぁ……もとコンビニ店員が、誤解を招く発言をしてエドに痛いところを点かれてしまった。
「不埒な関係……? 中年男だって? 余計なお世話だ! 俺だってなぁ……好き好んで、こんな身体になったわけじゃないんだからな!?」
おおっ! とうとう、元コンビニ店員はエドに切れてしまった。
「え? ちょ、ちょっと何のことです?」
エドは何が何だか分からないといった様子で目をパチパチさせる。
「それは確かに、あんたみたいな超絶イケメンじゃなかったけどなぁ……それでも若さだけは武器だったんだよ! 俺の取り柄だったんだよ! それがある日目覚めてみれば……こ、こんな理由もわからない世界で、しかもくたびれた中年男の身体になってしまうなんて……あんたには俺の気持ちなんかわかるはずもないよなぁ! あぁん!?」
「え……? ま、まさか……彼も、ステラと同じ『魂の交換』が行われた人物なのか!?」
まるきり支離滅裂な言動だったが、先程私の事情を説明していたお陰でエドは気付いたようだ。
「ええ、そのとおりです。ちなみに元の彼はコンビニという店でアルバイト店員をしていた19歳の青年だったそうです」
「え!? 元々は19歳の青年!? なるほど……それは悲惨な話だ、大いに同情に値する」
腕組みしてウンウン頷くエド。
「え? もしかしてお姉さん、この人に話してしまったんですか!?」
お姉さん……その言葉に全身に鳥肌が立つ。
「だからお姉さんて言葉は使わないでって言ってるでしょう! いろいろあって、やむを得ずね。でも、この人なら大丈夫。秘密は守ってくれると誓ってくれたから」
「確かに、中年男性に『お姉さん』なんて言われたら気味が悪いな」
苦笑しながらエドが頷く。
「まぁお姉さんが構わないって言うなら、俺は別に良いですけどね。ならいいですよ、どうぞ」
扉が開け放たれ、私とエドは室内へ入った。
部屋の中は相変わらず乱雑で物が散乱している。その傍らにはカップ麺が無造作に転がっているが、エドは気付いていない。
恐らく、アレがエドに見つかったら……間違いなく、餌付けすることになるだろう。
「さて……ところで、質問させてもらってもいいかしら?
「はい。何ですか?」
素直に返事をするビンセント。
「あなたは……最近夜、夢を見ている?」
「……は?」
「夢なら見ていますよ。毎晩、自分の部屋にいる夢をね」
「やっぱり……」
思っていた通り、彼も私と同じ状況におかれていたのだ――
108
お気に入りに追加
2,245
あなたにおすすめの小説

白い結婚のはずでしたが、王太子の愛人に嘲笑されたので隣国へ逃げたら、そちらの王子に大切にされました
ゆる
恋愛
「王太子妃として、私はただの飾り――それなら、いっそ逃げるわ」
オデット・ド・ブランシュフォール侯爵令嬢は、王太子アルベールの婚約者として育てられた。誰もが羨む立場のはずだったが、彼の心は愛人ミレイユに奪われ、オデットはただの“形式だけの妻”として冷遇される。
「君との結婚はただの義務だ。愛するのはミレイユだけ」
そう嘲笑う王太子と、勝ち誇る愛人。耐え忍ぶことを強いられた日々に、オデットの心は次第に冷え切っていった。だが、ある日――隣国アルヴェールの王子・レオポルドから届いた一通の書簡が、彼女の運命を大きく変える。
「もし君が望むなら、私は君を迎え入れよう」
このまま王太子妃として屈辱に耐え続けるのか。それとも、自らの人生を取り戻すのか。
オデットは決断する。――もう、アルベールの傀儡にはならない。
愛人に嘲笑われた王妃の座などまっぴらごめん!
王宮を飛び出し、隣国で新たな人生を掴み取ったオデットを待っていたのは、誠実な王子の深い愛。
冷遇された令嬢が、理不尽な白い結婚を捨てて“本当の幸せ”を手にする

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

聖女転生? だが断る
日村透
恋愛
生まれ変わったら、勝ち逃げ確定の悪役聖女になっていた―――
形ばかりと思っていた聖女召喚の儀式で、本当に異世界の少女が訪れてしまった。
それがきっかけで聖女セレスティーヌは思い出す。
この世界はどうも、前世の母親が書いた恋愛小説の世界ではないか。
しかも自分は、本物の聖女をいじめて陥れる悪役聖女に転生してしまったらしい。
若くして生涯を終えるものの、断罪されることなく悠々自適に暮らし、苦しみのない最期を迎えるのだが……
本当にそうだろうか?
「怪しいですわね。話がうますぎですわ」
何やらあの召喚聖女も怪しい臭いがプンプンする。
セレスティーヌは逃亡を決意した。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています
如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」
何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。
しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。
様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。
この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが……
男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる