多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
47 / 95

第46話 犯人は?

しおりを挟む
「なるほど、そういうことね……」

魔女はニヤリと笑った。
う……さすがは魔女だ。子供の姿をしているのに、その表情……まるで大人にしか見えない。

「お嬢さん、もしかしてエイドリアンという人物に惚れ薬を飲まされたんじゃないの? 2人はどんな関係なのかしら?」

「……元婚約者です。しかも子供の頃からの……両親の話では、私が一方的に一目惚れしたらしいですが……」

嘘だ、あんな平凡な(しかも元彼に外見が良く似た)男にステラが一目惚れしたとは思えない。
しかも、あれほど蔑ろにされていたのに?

「なら、恐らく子供の頃に惚れ薬を飲まされたんじゃないかしら? 何しろ、この薬のすごいところは無味無臭。どんな料理や飲み物に混ぜても味・香りが損なわれない優れものよ!?」

自分の薬の出来を自慢する魔女。

「何だって、そんな危険な薬を作り出すんですか! お陰でこっちは大迷惑ですよ!」

「ちょっと落ち着きなさいよ!! だ、だけど子供の頃に飲まされた惚れ薬を作ったのは私じゃないわよ! だって、ここに流れ着いたのは5年ほど前なのよ!? それまでは、ここから千km程離れた場所に住んでいたんだから!」

「なら、その魔女が全ての現況ですね……」

怒りで身体が震えてくる。

「まぁ、そうなるわね。で、その後継続して私の作った惚れ薬を飲ませていたんでしょう。それで、すっかりステラはそのエイドリアンとかいう人物に惚れ込んでしまったんでしょうね。例えどんなに邪険にされようが」

「で、でも……一体何のためにエイドリアンは……」

そこまで口にしかけて、気付いた。
そうだ、ロンド家はアボット家の下請け会社を経営している。そこでエイドリアンの父親は私と息子を結びつけようと……。

「それにしても、何処の魔女か知らないけれど……子供に惚れ薬を売るなんて。魔女の規則で15歳未満の子供には惚れ薬を売ってはいけないと決められているのに」

「フッフッフッ……そんな規則なんてどうでもいいんですよ……」

口元に笑みを浮かべながら、私はアボット伯爵の顔を思い出していた。

「な、何!? ついに頭がおかしくなってしまったのかしら!?」

魔女がビクビクしながら私を見つめる。

「いいえ、至って正気ですよ。誰があのロクデナシ男に惚れ薬を手渡したか、分かってしまったからです」

おのれ……あのハゲ親父め……! 自分の欲のために息子をダシに使って、この私に惚れ薬を盛らせるとは……!

「魔女さん!」

「な、何よ?」

「あなたのお陰で、命拾いしました! 本当にありがとうございました」

「そ、そう? そんなに対して役に立てたとは思えないけど」

「いいえ、そんなことありません! 多いに役にたっていただけました!」

エイドリアンがあの時私に『覚えていろよ』と言ったのは、きっと新たな惚れ薬を私に飲ませて服従させるつもりだったに違いない。
もしかすると、カレンに惚れ薬の話をしたのも彼の可能性がある。だから、2人は大量に惚れ薬を買ったのだ。

もしかすると……カレンの次のターゲットは……?

そこまで考え、自分の顔から血の気が引いていく。

「そうだ……エド……」

「何? どうかしたの?」

「エド!」

「ちょっと! 何処へ行くのよ!」

魔女の静止も聞かず、扉へ向かって駆け出した。 

外で待っているエドのもとへ行くために――
しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 89

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

聖女転生? だが断る

日村透
恋愛
生まれ変わったら、勝ち逃げ確定の悪役聖女になっていた―――  形ばかりと思っていた聖女召喚の儀式で、本当に異世界の少女が訪れてしまった。 それがきっかけで聖女セレスティーヌは思い出す。 この世界はどうも、前世の母親が書いた恋愛小説の世界ではないか。 しかも自分は、本物の聖女をいじめて陥れる悪役聖女に転生してしまったらしい。 若くして生涯を終えるものの、断罪されることなく悠々自適に暮らし、苦しみのない最期を迎えるのだが…… 本当にそうだろうか?  「怪しいですわね。話がうますぎですわ」 何やらあの召喚聖女も怪しい臭いがプンプンする。 セレスティーヌは逃亡を決意した。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

白い結婚のはずでしたが、王太子の愛人に嘲笑されたので隣国へ逃げたら、そちらの王子に大切にされました

ゆる
恋愛
「王太子妃として、私はただの飾り――それなら、いっそ逃げるわ」 オデット・ド・ブランシュフォール侯爵令嬢は、王太子アルベールの婚約者として育てられた。誰もが羨む立場のはずだったが、彼の心は愛人ミレイユに奪われ、オデットはただの“形式だけの妻”として冷遇される。 「君との結婚はただの義務だ。愛するのはミレイユだけ」 そう嘲笑う王太子と、勝ち誇る愛人。耐え忍ぶことを強いられた日々に、オデットの心は次第に冷え切っていった。だが、ある日――隣国アルヴェールの王子・レオポルドから届いた一通の書簡が、彼女の運命を大きく変える。 「もし君が望むなら、私は君を迎え入れよう」 このまま王太子妃として屈辱に耐え続けるのか。それとも、自らの人生を取り戻すのか。 オデットは決断する。――もう、アルベールの傀儡にはならない。 愛人に嘲笑われた王妃の座などまっぴらごめん! 王宮を飛び出し、隣国で新たな人生を掴み取ったオデットを待っていたのは、誠実な王子の深い愛。 冷遇された令嬢が、理不尽な白い結婚を捨てて“本当の幸せ”を手にする

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」

まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05 仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。 私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。 王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。 冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。 本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

処理中です...