43 / 95
第42話 魔女の店
しおりを挟む
「いらっしゃいませ」
店の中に入ると、正面のカウンターの前に黒い髪を肩先で切りそろえた少女が出迎えた。
まだ小学生くらいだろうか? オレンジ色の瞳が何とも印象的だった。
留守番をさせられているのだろう。
「こんにちは……」
声をかけながら周囲を見渡す。
ここは本当に店なのだろうか? 陳列棚すら置かれていない。
「あの~お店の人を呼んでくれる?」
エドが何か言うよりも先に、私は少女に声をかけた。
「え? 私がそうだけど?」
少女は自分を指さす。
「いえ、このお店の責任者をお願いしたいの」
「だ・か・ら。私がこのお店の店主だってば」
少しだけむくれた様子を見せる少女。
「ええ!? 嘘でしょう!?」
「ステラ、一体どうしたんだ?」
驚く私にエドが声をかけてきた。
「ほ、ほんとうにあなたがこの店の店主なの!? まだ子供なのに!?」
「さっきからそう言ってるでしょう? 全く失礼ね。それに生憎子供じゃないわよ。これでも85歳なんだから」
フンと腕組みする少女。
「ええ!? は、85歳!? おばあさんなの!?」
「何よ! おばあさんなんて女性に向かって失礼でしょ! 全く最近の若い娘は礼儀を知らないんだから。それにこれでも私は魔女の中では若い方なんだからね!」
「ステラ、魔女は身体に魔力が溢れているから不老長寿なんだよ。俺たち普通の人間とはわけが違うのさ」
エドが教えてくれた。
「そ、そうだったんだ……そうとは知らず失礼な言動をしてしまい、大変申し訳ございませんでした」
まさか、こんな幼女が老婆だったとは……。
「分かればいいのよ。それで、何をお求めに来たのかしら? 言っておくけど、惚れ薬は今品切れよ。この間、まとめて買っていったお客がいるから……え? あなた……もしかして……あ!」
突然魔女は私を見て驚くと慌てて自分の口を手で押さえる。
うん? 何だろう、この態度。妙に引っかかるんだけど……。
「怪しいですねぇ~……何故、ステラを見てそんなに驚くんです? ひょっとして彼女を御存知なのですか?」
「知らない! 彼女のことは知らないから!」
ブンブン首を振って否定する魔女。
「だけど、その驚きよう……普通じゃありませんよね? どうして今私を見て驚いたのですか?」
「べ、別に……ただあなたの目つきが悪いから驚いただけよ!」
言い訳にしては随分と酷いことを言ってくれる。
「……そう言えば、このお店……店舗代を2ヶ月滞納しているらしいですね」
突然エドが口調を変えてきた。
「そ、それは……」
「大家さんから聞いていますよ? 来月までに滞納しているお金を入金しなければ立ち退きさせるって話を」
へ~魔女でも家賃を滞納するんだ。
「だ、だから今お金を工面しているところよ!」
「けれど、どう見てもお客さんが来るような店には思えませんよ? 大体陳列棚すらないですよね?」
じわじわと追い詰めるエドに対し、魔女はヤケを起こしたかのように喚いた。
「仕方ないでしょう!? しゃ、借金返済の為に棚を売ったんだから!」
ええ!? そうだったの? てっきり雰囲気を出す為にあえて商品を置いていないと思っていたのに!?
「なるほど……相当追い詰められている証拠ですね。ではどうでしょう? あなたが知っていることを教えてくれれば、滞納しているこの店の家賃を代わりに支払ってあげますよ。何なら半年分支払ってあげてもいいです」
「分かった! 言うわ! 彼女を見て驚いたのは、私の調合した惚れ薬を飲んでいるからよ!」
エドの言葉に、あっさり白状する魔女。……と言うか……。
「ええええっ!? わ、私が惚れ薬を飲んでいる!?」
「ステラ!? 一体誰のために飲んだんだ!?」
私とエドが同時に驚く。
「違うってば! そうじゃないのよ! 私が作った惚れ薬は飲まされた相手に惚れてしまう薬なんだってば! つまり、お嬢さんは誰かの手によって惚れ薬を飲まされたってことよ。自分のことを好きになってもらうためにね」
魔女はビシッと私を指さしてきた――
店の中に入ると、正面のカウンターの前に黒い髪を肩先で切りそろえた少女が出迎えた。
まだ小学生くらいだろうか? オレンジ色の瞳が何とも印象的だった。
留守番をさせられているのだろう。
「こんにちは……」
声をかけながら周囲を見渡す。
ここは本当に店なのだろうか? 陳列棚すら置かれていない。
「あの~お店の人を呼んでくれる?」
エドが何か言うよりも先に、私は少女に声をかけた。
「え? 私がそうだけど?」
少女は自分を指さす。
「いえ、このお店の責任者をお願いしたいの」
「だ・か・ら。私がこのお店の店主だってば」
少しだけむくれた様子を見せる少女。
「ええ!? 嘘でしょう!?」
「ステラ、一体どうしたんだ?」
驚く私にエドが声をかけてきた。
「ほ、ほんとうにあなたがこの店の店主なの!? まだ子供なのに!?」
「さっきからそう言ってるでしょう? 全く失礼ね。それに生憎子供じゃないわよ。これでも85歳なんだから」
フンと腕組みする少女。
「ええ!? は、85歳!? おばあさんなの!?」
「何よ! おばあさんなんて女性に向かって失礼でしょ! 全く最近の若い娘は礼儀を知らないんだから。それにこれでも私は魔女の中では若い方なんだからね!」
「ステラ、魔女は身体に魔力が溢れているから不老長寿なんだよ。俺たち普通の人間とはわけが違うのさ」
エドが教えてくれた。
「そ、そうだったんだ……そうとは知らず失礼な言動をしてしまい、大変申し訳ございませんでした」
まさか、こんな幼女が老婆だったとは……。
「分かればいいのよ。それで、何をお求めに来たのかしら? 言っておくけど、惚れ薬は今品切れよ。この間、まとめて買っていったお客がいるから……え? あなた……もしかして……あ!」
突然魔女は私を見て驚くと慌てて自分の口を手で押さえる。
うん? 何だろう、この態度。妙に引っかかるんだけど……。
「怪しいですねぇ~……何故、ステラを見てそんなに驚くんです? ひょっとして彼女を御存知なのですか?」
「知らない! 彼女のことは知らないから!」
ブンブン首を振って否定する魔女。
「だけど、その驚きよう……普通じゃありませんよね? どうして今私を見て驚いたのですか?」
「べ、別に……ただあなたの目つきが悪いから驚いただけよ!」
言い訳にしては随分と酷いことを言ってくれる。
「……そう言えば、このお店……店舗代を2ヶ月滞納しているらしいですね」
突然エドが口調を変えてきた。
「そ、それは……」
「大家さんから聞いていますよ? 来月までに滞納しているお金を入金しなければ立ち退きさせるって話を」
へ~魔女でも家賃を滞納するんだ。
「だ、だから今お金を工面しているところよ!」
「けれど、どう見てもお客さんが来るような店には思えませんよ? 大体陳列棚すらないですよね?」
じわじわと追い詰めるエドに対し、魔女はヤケを起こしたかのように喚いた。
「仕方ないでしょう!? しゃ、借金返済の為に棚を売ったんだから!」
ええ!? そうだったの? てっきり雰囲気を出す為にあえて商品を置いていないと思っていたのに!?
「なるほど……相当追い詰められている証拠ですね。ではどうでしょう? あなたが知っていることを教えてくれれば、滞納しているこの店の家賃を代わりに支払ってあげますよ。何なら半年分支払ってあげてもいいです」
「分かった! 言うわ! 彼女を見て驚いたのは、私の調合した惚れ薬を飲んでいるからよ!」
エドの言葉に、あっさり白状する魔女。……と言うか……。
「ええええっ!? わ、私が惚れ薬を飲んでいる!?」
「ステラ!? 一体誰のために飲んだんだ!?」
私とエドが同時に驚く。
「違うってば! そうじゃないのよ! 私が作った惚れ薬は飲まされた相手に惚れてしまう薬なんだってば! つまり、お嬢さんは誰かの手によって惚れ薬を飲まされたってことよ。自分のことを好きになってもらうためにね」
魔女はビシッと私を指さしてきた――
249
あなたにおすすめの小説
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
【番外編も完結】で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★2/17 番外編を投稿することになりました。→完結しました!
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。
秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。
「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」
第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。
着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。
「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。
行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。
「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」
「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」
氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。
一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。
慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。
しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。
「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」
これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる