34 / 95
第33話 どちら様?
しおりを挟む
料理長のレイミーさんにお米を託すと、再度お米の炊き方を伝えて部屋へと戻った。
時計を見ると、6時半。
「う~ん……今から寝直してもなぁ……中途半端かも知れない」
朝食が始まるのは7時。後30分は時間がある。
「あ~あ……こんなとき、スマホでもあれば時間つぶしが……」
そこまで言いかけて、ふと気付いた。
「あ、そう言えばスマホにオフラインでも遊べるゲームをインストールしていたんだっけ……よし、今度はスマホをこっちの世界に持ち込むことにしょう。今の内に何が必要かメモに書き残そうっと」
思い立つと早速机に向かい、メモを取り出した。
「日本語で書けば他の人たちには読めないものね~。えっと、まずはスマホでしょ。あ、充電器もいるな……それに……」
ブツブツ呟きながら、メモに書きなぐっていく。
不思議なことにステラの記憶は一切無いのに、私は何故かこの国の言葉も文字も読むことが出来たのだ。
「……よし、書けた!」
早速引き出しにしまい、再び時計を見るとそろそろ7時になる頃だった。
「さてっと。それじゃ、モーニングを食べに行こうかな」
そして私はダイニングルームへ向かった。
お味噌汁と納豆のことを渇望しながら――
「どうだ? ステラ。今朝は良く眠れたか?」
お上品な朝食を食べていると、父が尋ねてきた。
「はい、お陰様でばっちり眠れました」
何しろ、今回も色々な戦利品をゲット出来たのだから。
「そうなのか? でも本当にステラはまるで人が変わったかのように明るくなってくれたようだ。あの日はあんなに落ち込んでいたのに」
「そうね。確かにあの時は……本当に心配したわ。もうこれ以上、生きていたくないーなんて暴れていたのが嘘みたいだわ」
「……え?」
母の言葉に思考が一瞬フリーズする。
これ以上、生きていたくない? ステラがそんなことを言ったなんて……。
この身体の記憶が全くない私には寝耳に水だ。
「あ、あの……その話ですが……」
質問しかけて踏みとどまる。記憶に無いなんて不用意に口にすれば、再び医者を呼ぶ騒ぎになってしまいかねない。
「「どうかしたの(か)?」」
両親が同時に尋ねてくる。
「い、いえ。何でもありません。どうか気にしないで下さい」
とりあえず、今は何も聞かないでおこう。
そのうち、原因が判明する……かもしれない。
益々深まる疑問を抱えながら、私は食事を終えた――
****
8時――
「どうぞ、ステラお嬢様」
「ありがとう、レイミー」
エントランスで私はレイミーからバスケットを受けとった。
「それで? 中身は何?」
「はい、お嬢様。正真正銘、中身はアレでございます」
「そう、それなら問題ないわ」
レイミーの言葉に満足して頷いた。
「今回は前回以上にふっくらツヤツヤに炊き上げることに成功しました」
「本当? お礼に大学から帰ったら、新しいブツ(調味料)を見せてあげるわね?」
「ありがとうございます!」
レイミーが嬉しそうに返事をする。
……傍から見れば、怪しい会話をしている2人だと思われかねない。だが、これは仕方ないこと。
だって、お米も調味料もこの世界には存在しないものなのだから。不用意に口にするわけにはいかないのだ。
「それでは行ってくるわね」
「はい、お嬢様。あ、今扉を開けましょう」
レイミーが扉を開け放すと、眼前に目もくらむような黒塗りの馬車に金の宝飾が施された馬車が待機していた。
しかも驚いたことに、馬は白馬である。
「ステラ様、お待ちしておりました」
御者台の人物が帽子を外して頭を下げてきた。
「は、はぁ……お待たせ致しました」
恐縮しながらお辞儀すると、馬車の扉が開かれて青年が降りてきた。
「え……どちら様……?」
私はその青年を呆けたように見上げた――
時計を見ると、6時半。
「う~ん……今から寝直してもなぁ……中途半端かも知れない」
朝食が始まるのは7時。後30分は時間がある。
「あ~あ……こんなとき、スマホでもあれば時間つぶしが……」
そこまで言いかけて、ふと気付いた。
「あ、そう言えばスマホにオフラインでも遊べるゲームをインストールしていたんだっけ……よし、今度はスマホをこっちの世界に持ち込むことにしょう。今の内に何が必要かメモに書き残そうっと」
思い立つと早速机に向かい、メモを取り出した。
「日本語で書けば他の人たちには読めないものね~。えっと、まずはスマホでしょ。あ、充電器もいるな……それに……」
ブツブツ呟きながら、メモに書きなぐっていく。
不思議なことにステラの記憶は一切無いのに、私は何故かこの国の言葉も文字も読むことが出来たのだ。
「……よし、書けた!」
早速引き出しにしまい、再び時計を見るとそろそろ7時になる頃だった。
「さてっと。それじゃ、モーニングを食べに行こうかな」
そして私はダイニングルームへ向かった。
お味噌汁と納豆のことを渇望しながら――
「どうだ? ステラ。今朝は良く眠れたか?」
お上品な朝食を食べていると、父が尋ねてきた。
「はい、お陰様でばっちり眠れました」
何しろ、今回も色々な戦利品をゲット出来たのだから。
「そうなのか? でも本当にステラはまるで人が変わったかのように明るくなってくれたようだ。あの日はあんなに落ち込んでいたのに」
「そうね。確かにあの時は……本当に心配したわ。もうこれ以上、生きていたくないーなんて暴れていたのが嘘みたいだわ」
「……え?」
母の言葉に思考が一瞬フリーズする。
これ以上、生きていたくない? ステラがそんなことを言ったなんて……。
この身体の記憶が全くない私には寝耳に水だ。
「あ、あの……その話ですが……」
質問しかけて踏みとどまる。記憶に無いなんて不用意に口にすれば、再び医者を呼ぶ騒ぎになってしまいかねない。
「「どうかしたの(か)?」」
両親が同時に尋ねてくる。
「い、いえ。何でもありません。どうか気にしないで下さい」
とりあえず、今は何も聞かないでおこう。
そのうち、原因が判明する……かもしれない。
益々深まる疑問を抱えながら、私は食事を終えた――
****
8時――
「どうぞ、ステラお嬢様」
「ありがとう、レイミー」
エントランスで私はレイミーからバスケットを受けとった。
「それで? 中身は何?」
「はい、お嬢様。正真正銘、中身はアレでございます」
「そう、それなら問題ないわ」
レイミーの言葉に満足して頷いた。
「今回は前回以上にふっくらツヤツヤに炊き上げることに成功しました」
「本当? お礼に大学から帰ったら、新しいブツ(調味料)を見せてあげるわね?」
「ありがとうございます!」
レイミーが嬉しそうに返事をする。
……傍から見れば、怪しい会話をしている2人だと思われかねない。だが、これは仕方ないこと。
だって、お米も調味料もこの世界には存在しないものなのだから。不用意に口にするわけにはいかないのだ。
「それでは行ってくるわね」
「はい、お嬢様。あ、今扉を開けましょう」
レイミーが扉を開け放すと、眼前に目もくらむような黒塗りの馬車に金の宝飾が施された馬車が待機していた。
しかも驚いたことに、馬は白馬である。
「ステラ様、お待ちしておりました」
御者台の人物が帽子を外して頭を下げてきた。
「は、はぁ……お待たせ致しました」
恐縮しながらお辞儀すると、馬車の扉が開かれて青年が降りてきた。
「え……どちら様……?」
私はその青年を呆けたように見上げた――
155
お気に入りに追加
2,245
あなたにおすすめの小説

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

【完結】断罪後の悪役令嬢は、精霊たちと生きていきます!
らんか
恋愛
あれ?
何で私が悪役令嬢に転生してるの?
えっ!
しかも、断罪後に思い出したって、私の人生、すでに終わってるじゃん!
国外追放かぁ。
娼館送りや、公開処刑とかじゃなくて良かったけど、これからどうしよう……。
そう思ってた私の前に精霊達が現れて……。
愛し子って、私が!?
普通はヒロインの役目じゃないの!?

婚約者様。現在社交界で広まっている噂について、大事なお話があります
柚木ゆず
恋愛
婚約者様へ。
昨夜参加したリーベニア侯爵家主催の夜会で、私に関するとある噂が広まりつつあると知りました。
そちらについて、とても大事なお話がありますので――。これから伺いますね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる