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第12話 緊張と不安
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翌朝――
ステラの大学内での立場が不明なまま、登校する時間になってしまった。
「ステラ、1週間ぶりの大学だからしっかり勉強してきなさい」
エントランスまで見送りに来てくれた母が私に笑顔で声をかける。
「アハハハ……そうですね」
それだけ答えるのがやっとだった。何しろ私は自分の通う大学名すら知らないのだ。
大学までは御者が馬車で送ってくれるものの……もはや不安しか無い。
胃痛が酷いが、もうこの身体で一生暮らしていかなければならないのだから試練だと思って頑張らなければ。
そのとき――
「ステラお嬢様! お待たせ致しました!」
料理長がバスケットを持って駆けつけてきた。
「あら、レイミー。どうしたの?」
母が料理長に声をかける。
レイミー……そうか、あの料理長はレイミーという名前だったのか。心に深くその名を刻みつける。
何しろ、これから彼には和食を伝授しなければならないのだから。
「昨日、命じられたお弁当を持ってまいりました! おにぎりに、卵焼き……それに、タコさんウィンナーです! どうぞ!」
興奮した様子で私にバスケットを押し付けてくる。
「あ、ありがとう……レイミー」
顔を引つらせながらお礼を述べる。確かにおかずの注文はしたけれども……タコさんウィンナーはほんの冗談のつもりだったのに、まさか真に受けるとは!
「オベントウ……? オニギリ? 一体何のことなの?」
何も知らない母は首を傾げる。けれど、今の私にはそれを説明する心の余裕は持ち合わせていない。
「そ、それでは大学へ行ってまいります!」
お弁当が入ったバスケットを携えて馬車に乗り込み、母とレイミーに手を振った――
****
「何も記憶が無いけれど……それでもステラと私の実年齢が近くて良かったわ」
私は23歳、そしてステラは20歳。
そして私は二流とはいえ、昨年までは大学生だったのだ。
「まぁ……なんとかなるでしょう……」
頑張れ、私。たった1年とはいえ、あのブラック企業でパワハラにモラハラを耐えて働いてきたのだから……。
「誰かしら、知り合いに会えば手助けしてくれるでしょう」
自分の中ではステラは悪役令嬢と決めつけているけれども、屋敷の外では別人かもしれない……と、思いたい。
「はぁ……帰りたい……」
大学に到着する前から、既に帰りたい気持ちでいっぱいだった――
****
「ステラお嬢様。大学に到着しました」
馬車が停車すると、御者によって扉が開かれた。
「あ、ありがとう……」
緊張しながら、馬車を降りる。
「では、いつもの場所でいつもの時間にお迎えにあがりますね」
「はい!? 何、いつもの場所と時間て! それじゃ分からないってば!」
緊張がマックスになっていた私は思わず大きな声を上げてしまった。
「ひぃ! も、申し訳ございません! 16時に……せ、正門の時計台の下で……お待ち下さい!」
「16時に正門の時計台下ね。よし、覚えたわ」
御者の言葉を復唱する。
「そ、それでは失礼致します!」
御者は馬車に乗り込むと、まるで逃げるように去って行った。
「ふぅ……ここが大学ね……」
立派な門構えの、まるで何処かのお城のように見える厳かな建物を私は見上げた。
そしてその横を次々と学生たちが通り過ぎていくも……誰一人、声をかけてくれる人はいない。
「やっぱり、ステラはボッチなのかな……?」
こちらは記憶が無いのでボッチでも全く構わないが、何処へ行けばよいかが全く分からない。
「はぁ……全く、どうしろって言うのよ……」
ため息をつきながら、ヨロヨロと大学の敷地内へ足を踏み入れた――
ステラの大学内での立場が不明なまま、登校する時間になってしまった。
「ステラ、1週間ぶりの大学だからしっかり勉強してきなさい」
エントランスまで見送りに来てくれた母が私に笑顔で声をかける。
「アハハハ……そうですね」
それだけ答えるのがやっとだった。何しろ私は自分の通う大学名すら知らないのだ。
大学までは御者が馬車で送ってくれるものの……もはや不安しか無い。
胃痛が酷いが、もうこの身体で一生暮らしていかなければならないのだから試練だと思って頑張らなければ。
そのとき――
「ステラお嬢様! お待たせ致しました!」
料理長がバスケットを持って駆けつけてきた。
「あら、レイミー。どうしたの?」
母が料理長に声をかける。
レイミー……そうか、あの料理長はレイミーという名前だったのか。心に深くその名を刻みつける。
何しろ、これから彼には和食を伝授しなければならないのだから。
「昨日、命じられたお弁当を持ってまいりました! おにぎりに、卵焼き……それに、タコさんウィンナーです! どうぞ!」
興奮した様子で私にバスケットを押し付けてくる。
「あ、ありがとう……レイミー」
顔を引つらせながらお礼を述べる。確かにおかずの注文はしたけれども……タコさんウィンナーはほんの冗談のつもりだったのに、まさか真に受けるとは!
「オベントウ……? オニギリ? 一体何のことなの?」
何も知らない母は首を傾げる。けれど、今の私にはそれを説明する心の余裕は持ち合わせていない。
「そ、それでは大学へ行ってまいります!」
お弁当が入ったバスケットを携えて馬車に乗り込み、母とレイミーに手を振った――
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「何も記憶が無いけれど……それでもステラと私の実年齢が近くて良かったわ」
私は23歳、そしてステラは20歳。
そして私は二流とはいえ、昨年までは大学生だったのだ。
「まぁ……なんとかなるでしょう……」
頑張れ、私。たった1年とはいえ、あのブラック企業でパワハラにモラハラを耐えて働いてきたのだから……。
「誰かしら、知り合いに会えば手助けしてくれるでしょう」
自分の中ではステラは悪役令嬢と決めつけているけれども、屋敷の外では別人かもしれない……と、思いたい。
「はぁ……帰りたい……」
大学に到着する前から、既に帰りたい気持ちでいっぱいだった――
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「ステラお嬢様。大学に到着しました」
馬車が停車すると、御者によって扉が開かれた。
「あ、ありがとう……」
緊張しながら、馬車を降りる。
「では、いつもの場所でいつもの時間にお迎えにあがりますね」
「はい!? 何、いつもの場所と時間て! それじゃ分からないってば!」
緊張がマックスになっていた私は思わず大きな声を上げてしまった。
「ひぃ! も、申し訳ございません! 16時に……せ、正門の時計台の下で……お待ち下さい!」
「16時に正門の時計台下ね。よし、覚えたわ」
御者の言葉を復唱する。
「そ、それでは失礼致します!」
御者は馬車に乗り込むと、まるで逃げるように去って行った。
「ふぅ……ここが大学ね……」
立派な門構えの、まるで何処かのお城のように見える厳かな建物を私は見上げた。
そしてその横を次々と学生たちが通り過ぎていくも……誰一人、声をかけてくれる人はいない。
「やっぱり、ステラはボッチなのかな……?」
こちらは記憶が無いのでボッチでも全く構わないが、何処へ行けばよいかが全く分からない。
「はぁ……全く、どうしろって言うのよ……」
ため息をつきながら、ヨロヨロと大学の敷地内へ足を踏み入れた――
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