政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
114 / 118

7-12 遅れてきた国王の愚かな申し出

しおりを挟む
 なんのしがらみも無くなった私とミラージュはウキウキしながら2人で台車を引っ張り、ガラガラ大きな音を立てて城を出るべく、長い廊下を歩いていた。メイドやフットマン達は皆青ざめた顔で私とミラージュの進む通路をサッと開けてくれるが、誰もが何か言いたげな目でこちらを見つめている。

「レベッカ様、私達・・随分皆から注目されていると思いませんか?」

隣を歩くミラージュが耳打ちしてきた。

「ええ、確かにそうよね~・・でも、この荷物を見て皆気が付いたんじゃない?私たちがこの城を出て行くって言う事を。」

「あ~言われてみれば確かにそうですね・・・でも誰も引き留めようともしていませんから、このまま門まで行きましょう。」

「ええ、そうね。ミラージュ。ついでに慰謝料替わりに馬2頭と荷馬車を1台貰っていければいいのだけど・・・。」

「そんなの強引に奪ってしまえばいいのですよ。私達2人にかかれば、造作も無い事じゃないですか。まあ・・最も盗む事になってしまいますが・・・。」

「そうね。確かに盗むのは良くないわ・・・でもね、ミラージュ。私はこの国の為に随分貢献してきたわ。なーんにも採掘出来なかったオーランド国の山を鉱山が取れる山にしてあげたし、山の中には高級キノコが生えている。漁に出ればいつも大漁、気候は安定し、台風すらやってこない・・。こんなに色々尽くしてあげたのだから当然の報酬として貰ってもいいはずよ。」

「そうですね。ならまず初めに厩舎へ向かいましょう。」

そして私たちは大きな台車を引っ張りながらさらに歩みを進めた―。


 10分ほど歩き続け、ようやく私たちの前に広々としたエントランスが現れた。

「ふう・・やっと着きましたね~・・。」

ミラージュが大きな扉を開ける為に台車から手を離した。その時―。

「ま、待ってくれっ!一体どこへ行こうと言うのだっ?!」

聞きなれない声が背後で響き渡った。

「「?」」

訝しみながら私とミラージュは振り返ると、そこにはあの馬鹿兄弟によく似た面立ちの50代ほどの男性が立っていた。金の糸で刺繍が施された立派な青いウェストコートにえんじ色のベルベットのトラウザーに皮のロングブーツ姿・・・この身なりからすると・・うん、間違いは無いだろう。
男性は名乗りもせずに、いきなりべらべらとまくし立てて来た。

「そなたが・・・オーランド王国から嫁いできたレベッカ皇女だろう?外遊先でそなたに関する様々な噂を耳にしたよ。それに大臣たちからの報告でも分かったが・・・そなたがこの国に嫁いできてからはこの国は今まで以上に潤ったそうじゃないか!そなたこそ、わが国にもたらされた幸運の女神に間違いは無いだろう。本当にオーランド王国の国王には感謝しかない。礼を言いたいが・・・あいにく・・そなたの国は滅んでしまったから・・今ではそれも叶わないが・・・。」

コホンと咳ばらいをしながら国王は言う。

「後ろに控えている大臣たちから聞いたよ。あの間抜けなアレックスはそなたを散々ないがしろにしてきたとな・・・。あ奴があのような男に育ってしまったのは全て私の責任。恐らくその荷物・・・この国を出るつもりなのであろう?だが、そのような必要はない。アレックス皇子との結婚は白紙に戻そう。そしてレベッカ皇女には新たに第一皇子ランスを夫にしてやろう。幸い、ランスはあ奴とは違って女癖は悪くない。それよりもそなたをとても可愛らしい女性で惚れてしまったと申しておった。なので今日からはランスを夫とするがよい!」

まるで完璧な申し出だろうと言わんばかりの国王。そして、背後に控えた大臣たちは満足そうに笑みを浮かべて私を見ていた―。

しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】 幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...