政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
111 / 118

7-9 妻と呼ばないで

しおりを挟む
「あの・・・ランス皇子。私が何故アレックス皇子と離婚を決意したのか・・十分分かりますよね?」

私は荷造りの手を止めずに言う。

「ああ、そんな事は十分分かっている、レベッカ皇女。でも大丈夫だよ。もうアレックスは心を入れ替えたから。ついさっきリーゼロッテとは別れたんだよ。」

「「は?」」

私とレベッカはあまりにも唐突な話に耳を疑った。

「分かれたって・・・あの2人、私とミラージュが部屋を訪ねた時・・・姦通していたんですよっ?!」

「か・・姦通・・・ゴ・ゴホン!あ、あまりレディがそいう台詞を大声で言うべきものじゃないかと思うな。」

ランス皇子が顔を赤らめながら言う。

「だってそんなの事実じゃないですか!ありのままの事を話して何が悪いって言うんですっ?!」

ミラージュはプンプンしながら言うも、手は休めずに次々と衣装をトランクケースに入れている。

「と、とにかく・・・アレックスの話を聞いてやって欲しいんだ。それにさっき伝令で父上が国境を越えてこの国に向かっている事も分かったんだよ」

ランス皇子がおろおろしながら話をしていると、そこへアレックス皇子が現れた。
フロックコートにトラウザー姿とビシッと決めて現れたけれど今の私の目には道化師が着なれない服を無理に着込んでいるようにしか見えなかった。しかも右手を何故か後ろに隠している。

「あ・・・そ、その・・レベッカ。実は・・・君に大事な話が合って急いでここまでやって来たのだよ。」

アレックス皇子は愛想笑いを浮かべながら、私に一歩近づいて来た

「は?」

私は思い切り冷たい目でアレックス皇子を見た。まさか・・私の傍に来るつもりでは・・?じょ、冗談ではないっ!

「私に近付かないで下さい!」

ピシッ!

途端にアレックス皇子の足元に氷が張り、ブーツの靴底が氷にくっつく。


「う、あ・・足がっ!氷に張り付いた!」

アレックス皇子は両足を動かす事が出来なくなり、バランスを取ろうと両手をブンブンと無様に振り回した。すると右手に薔薇の花束が握り締められているのがばっちり見えた。

「まあ!アレックス皇子のくせに薔薇の花束なんか持ってるわっ!気持ち悪っ!」

ミラージュが露骨に嫌そうな顔で言う。

「う・・うるさいっ!お前に渡すわけじゃないのだからいいだろう?!別にっ!」

「な・・何ですって!アレックス皇子から花束なんて受ける事を想像するだけで気絶しそうですわっ!」

「な・・何だと・・っ!」

激しく応戦を繰り広げるアレックス皇子とミラージュを見つめながら私は考えた。
ミラージュに渡すわけではない・・となると・・・・?
私は隣に立ち、アレックス皇子の様子を心配そうに眺めているランス皇子を見た。

「え?何?」

ランス皇子は私を見ると尋ねてきた。

「いえ、別に。」」

う~ん・・・2人は母親こそ違えど、れっきとした兄弟だ。弟から兄に敬愛の意を込めて薔薇の花束を贈る・・・ありえなくない話ではあるが、ちょっと考えにくい。
となると・・?

「アレックス皇子・・・まさか、私にその薔薇を渡すつもりで持ってきたわけじゃないですよね?」

念の為に聞いてみた。すると・・・。

「ああ、そのまさかだ。レベッカ・・俺は君に改めて求婚する為に薔薇の花束を持ってきたのだ。さぁ、もう一度2人で結婚式をやり直そう。」

ニコニコしながらアレックス皇子は無理な姿勢で身体を伸ばし、私に薔薇の花束を差し出してきた。な・・何ですって・・?!

「は・・?ふ・・・ふざけるのもいい加減にしなさ~いっ!!」

とうとう私は我慢の限界で叫んでしまった。

キーンッ!!

振るえる空気。

パリーンッ!パリーンッ!

はじけ飛ぶ鏡に部屋中の窓ガラスが割れていく。

「うわあああっ!!な、何だっ?!何が起こっているんだっ?!」

私の力の現象を目の当たりにして両耳を押さえて叫ぶランス皇子。しかし、アレックス皇子は違う。いや、耳を押さえているところまでは同じだが、不気味な高笑いをしているのだ。

「フアッハッハッハッ・・・・!!そうだ・・・!これだっ!俺が欲しいのはこの魔女の力なのだぁっ!!さすが我妻、レベッカだ!」

プッチ~ンッ!!

「ハグッ?!」

「ま・・・また私の事を『妻』と言いましたね~っ!!お黙りなさいっ!!それに私は魔女などではありませんっ!!」

再び、アレックス皇子の口を無理やり閉じると私は叫んだ―。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】 幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

処理中です...