政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
98 / 118

6-17 訪問客は

しおりを挟む
「え・・・?サミュエル皇子・・何故ここに・・・?」

ブドウを持ったままポカンとしているとサミュエル皇子はクックッと肩を揺らして笑うと言った。

「やぁ、レベッカ。君は相変わらずだねえ?初めて会った時もマナー無用の食べっぷり。あの時は本当に皇女なのかと疑ってしまったよ。それにあのパーティ会場での見事な飲みっぷりも見ものだったな~。でも君のお陰で楽しませてもらったけどね?」

そして私の方に近付いてくると、ブドウを持っていない左手を取って来た。

「どうだい?レベッカ。あんなクズ皇子とは離婚して俺の国へ来ないかい?俺は幸いまだ独身だし3番目の皇子で権力争いからも除外しされているから決められた女性もまだいない。だから俺の国へ花嫁として来ないかい?君なら再婚だろうが、再々婚だろうが構わないよ?」

まるで冗談なのか本気なのか分からない話を大真面目にするサミュエル皇子。でもクズ皇子と言う部分は賛同出来る。するとランス皇子が口を挟んできた。

「おいおい・・本気で言ってるのか?サミュエル。それは駄目だよ。レベッカ皇女はこの国に無くてはならない人なのだから。彼女はこの国の守り神なんだからね?もしいなくなられでもしたら大変だ。」

「え?!ランス皇子っ?!」

まるでその口ぶりは私の力を知っているかのような言い方だ。ま、まさか・・ランス皇子に私の能力がバレてしまっている・・?しかし・・・。

「あの~・・・サミュエル皇子。」

「何だい?レべッカ?」

甘い声でにっこり微笑んでくるサミュエル皇子に言った。

「ブドウが食べられないので手を放して頂けますか?」

「「は・・・?」」

2人の皇子は私の発言に固まっている。そして・・・・。

「「アハハハハッ!!」」

2人揃って一斉に笑い出した。

「何がおかしいのですか?」

さりげなくサミュエル皇子の手を離すと私は尋ねた。

「い、いや・・・まさかガーランド国一番の美形と言われているサミュエルに手を取られているのに『ブドウが食べられないので手を放して頂けますか?』なんて言う女性が現れるとは・・お、思わなかったよ。」

ランス皇子は笑いながら言う。

「う~ん・・俺ってそんなに君にとっては魅力的じゃないのかな?」

サミュエル皇子は真剣な顔で尋ねて来るが・・私は分かっている。何故サミュエル皇子がわざわざこの国へやってきたかと言う事を・・・。

「とりあえず・・・皆で座って話をしませんか?」

2人に私は椅子を勧めた―。


****

 私たちは今、3人でテーブルを囲んで椅子に座って大きなさらに乗ったフルーツを食べながら会話をしていた。

「へえ~・・このイチゴ、とっても甘くておいしいじゃないか・・・我が国のイチゴなんて、酸っぱくてお酒やジャム、紅茶のように加工しないと口に出来ないのに。」

サミュエル皇子が驚きの顔を見せた。

「どうだい、すごいだろう?ここの果樹園は全部僕が所有している果樹園なんだけどね、今はレベッカ皇女が管理をしているんだよ。そしたら見る見るうちに果樹園の実が甘く、美味しく育ってきたのさ。これも全てレベッカ皇女が開発した肥料のおかげなんだけどね。」

ランス皇子が得意げに言う。

「へ~・・そうなのか・・・。それって凄いね。」

サミュエル皇子が感心している。

「いえ、それほどでもないのですけどね・・・。」

本当は自分の加護を与えた、ただの肥料を果樹園にまいて私が世話をしているからなんだけどね。

「それじゃ是非とも我が国にもレベッカの農業の知識を分けて貰いたいものだ。と言う訳でアレックスとは別れて俺の処にお嫁においで?」

サミュエル皇子の冗談はさておき・・・。

「サミュエル皇子、本当は・・そんな事を言う為にここへ来たわけじゃないですよね?」

「ああ、やっぱり分かったかな?そうだよ。実は様子を見に来たんだよ。あの2人の・・・。」

そこまで言いかけた時、サミュエル皇子は何かに気付いたのか突然立ち上がった―。


しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】 幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

処理中です...