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6-5 え?何故ここに?
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私の力をグランダ王国の上級幹部たちに見せつけた?お陰か、私の周辺は穏やかになった・・・と言うか、格段に対応が良くなった。私用のドレスが支給され・・読みたい本を願えば、届けられた。相変わらず私専用の専属メイドはいなかったけれども、私にはミラージュが傍にさえいればそれで十分だった。
そして何よりグランダ王国の国王が是非とも私と会いたいと外遊先から手紙が届き、予定では来週国王の帰国が決まったのだ。
いつものように朝食後、ミラージュを連れてランス皇子の温室へ行く為に渡り廊下を歩いていた。
「あ、レベッカ様。お早うございます。」
「レベッカ様、おはようございます。」
「レベッカ様にご挨拶申し上げます・・・。」
次々と私とすれ違う使用人たち全員が丁寧に頭を下げて来る。今ではこの王宮にいる誰もが私の顔と名前を把握するように迄なっていた。
ところが・・・。
「全く・・それにしてもちっとも知りませんでしたよ。肝心のアレックス皇子が初めてレベッカ様が認められたあの日から、ず~っとこの国を不在にしていたなんて・・。」
私の隣を歩くミラージュが面白くなさそうな口ぶりで言う。
「まあまあ・・・でも、かえっていない方が良かったのかもしれないわよ?」
私の言葉にミラージュは不思議そうな顔をする。
「え?何故ですか?」
「だってねぇ・・あのアレックス様の事だもの。私が何をしようが、『おのれっ?!またしてお前は何かインチキな真似をして、この俺を騙しているなっ?!』と言って私がどんな奇跡の力を使っても、きっと信じないと思うのよね。だってアレックス皇子の私に対する信頼度はゼロなんだもの。だから、かえってアレックス皇子の不在時に周囲の私に対する評価を上げておいた方が得策なんじゃないかしら?」
何だか自分で言っていて情けなくなってしまうが、これは事実。認めざるを得ない。
「はぁ~・・全く・・。オーランド王国の城の人々や・・この国のアレックス皇子と言い・・・レベッカ様というこの世の奇跡の方を傍に置かれながら、ないがしろにするなんて・・・。でも・・恐らくオーランド王国は・・滅びますね。」
ミラージュはきっぱり言う。
「ええ・・そうね。だってもうこの国は完全にオーランド王国を見限ったから・・今頃はひょっとすると滅んでいるかもね~・・・。」
大体、誰一人あの国に住む人々は私の力に気付いていなかったのだから。まあ最も私も彼らの前でオーランド王国のお偉い方々のように、自分の力を見せなかったのもあるけれど・・・。
「私はね、ミラージュ。私のお母様を強引に攫うような形で結婚し・・生まれたのが女の私だったという理由だけで、お母さまを追い出して・・引き離した父も・・私を馬鹿にしてきたお城の人たちの事も・・もうどうでもいいと思ってるの。冷たい人間と軽蔑するかもしれないけど・・。」
するとミラージュは言った。
「何を言っておられるのですか?レベッカ様。皇女様でありながら・・平民以下の生活を余儀なくされていたのに、その境遇に文句を言う事も無く生きて来たレベッカ様を心の底から尊敬しておりますからね?軽蔑なんてとんでもありません。」
「ありがとう。ミラージュ。さ、温室に着いたからいつもの通り作業を始めましょうか?」
いつの間にか温室にたどりついていたので、私はミラージュに声をかけた。
「ええ、そうですねっ!」
そして私とミラージュは腕まくりをして温室で育てているイチゴの摘み取り作業を始めた。
本来であれば、私はこの国の上級幹部たちに認められ、安全の保証を言い渡された身分なので、もう食いっぱぐれの心配は無くなった。だからこのような事をもうする必要はないのだが・・・何しろ、暇なのだ。
私はアレックス皇子の許可が下りない限りは、お茶会を開くどころか(最も呼ぶ相手もいないけれども)、王妃教育(あまり勉強はしたくないけれども)を受けさせて貰う事も出来ない。
とにかく暇でたまらない。その為に、ランス皇子に頼み込んで今日も温室のお世話をしているのだった。
「フフ・・・。今日もイチゴちゃんたちは可愛いわね~・・。」
鼻歌を歌いながら温室でイチゴの摘み取りをしていると、突然背後から声を掛けられた。
「全く・・・やはりこんなところにいたのか。」
え・・?その声は・・・?
驚いて振りむくと、そこにはアレックス皇子が立っていた―。
そして何よりグランダ王国の国王が是非とも私と会いたいと外遊先から手紙が届き、予定では来週国王の帰国が決まったのだ。
いつものように朝食後、ミラージュを連れてランス皇子の温室へ行く為に渡り廊下を歩いていた。
「あ、レベッカ様。お早うございます。」
「レベッカ様、おはようございます。」
「レベッカ様にご挨拶申し上げます・・・。」
次々と私とすれ違う使用人たち全員が丁寧に頭を下げて来る。今ではこの王宮にいる誰もが私の顔と名前を把握するように迄なっていた。
ところが・・・。
「全く・・それにしてもちっとも知りませんでしたよ。肝心のアレックス皇子が初めてレベッカ様が認められたあの日から、ず~っとこの国を不在にしていたなんて・・。」
私の隣を歩くミラージュが面白くなさそうな口ぶりで言う。
「まあまあ・・・でも、かえっていない方が良かったのかもしれないわよ?」
私の言葉にミラージュは不思議そうな顔をする。
「え?何故ですか?」
「だってねぇ・・あのアレックス様の事だもの。私が何をしようが、『おのれっ?!またしてお前は何かインチキな真似をして、この俺を騙しているなっ?!』と言って私がどんな奇跡の力を使っても、きっと信じないと思うのよね。だってアレックス皇子の私に対する信頼度はゼロなんだもの。だから、かえってアレックス皇子の不在時に周囲の私に対する評価を上げておいた方が得策なんじゃないかしら?」
何だか自分で言っていて情けなくなってしまうが、これは事実。認めざるを得ない。
「はぁ~・・全く・・。オーランド王国の城の人々や・・この国のアレックス皇子と言い・・・レベッカ様というこの世の奇跡の方を傍に置かれながら、ないがしろにするなんて・・・。でも・・恐らくオーランド王国は・・滅びますね。」
ミラージュはきっぱり言う。
「ええ・・そうね。だってもうこの国は完全にオーランド王国を見限ったから・・今頃はひょっとすると滅んでいるかもね~・・・。」
大体、誰一人あの国に住む人々は私の力に気付いていなかったのだから。まあ最も私も彼らの前でオーランド王国のお偉い方々のように、自分の力を見せなかったのもあるけれど・・・。
「私はね、ミラージュ。私のお母様を強引に攫うような形で結婚し・・生まれたのが女の私だったという理由だけで、お母さまを追い出して・・引き離した父も・・私を馬鹿にしてきたお城の人たちの事も・・もうどうでもいいと思ってるの。冷たい人間と軽蔑するかもしれないけど・・。」
するとミラージュは言った。
「何を言っておられるのですか?レベッカ様。皇女様でありながら・・平民以下の生活を余儀なくされていたのに、その境遇に文句を言う事も無く生きて来たレベッカ様を心の底から尊敬しておりますからね?軽蔑なんてとんでもありません。」
「ありがとう。ミラージュ。さ、温室に着いたからいつもの通り作業を始めましょうか?」
いつの間にか温室にたどりついていたので、私はミラージュに声をかけた。
「ええ、そうですねっ!」
そして私とミラージュは腕まくりをして温室で育てているイチゴの摘み取り作業を始めた。
本来であれば、私はこの国の上級幹部たちに認められ、安全の保証を言い渡された身分なので、もう食いっぱぐれの心配は無くなった。だからこのような事をもうする必要はないのだが・・・何しろ、暇なのだ。
私はアレックス皇子の許可が下りない限りは、お茶会を開くどころか(最も呼ぶ相手もいないけれども)、王妃教育(あまり勉強はしたくないけれども)を受けさせて貰う事も出来ない。
とにかく暇でたまらない。その為に、ランス皇子に頼み込んで今日も温室のお世話をしているのだった。
「フフ・・・。今日もイチゴちゃんたちは可愛いわね~・・。」
鼻歌を歌いながら温室でイチゴの摘み取りをしていると、突然背後から声を掛けられた。
「全く・・・やはりこんなところにいたのか。」
え・・?その声は・・・?
驚いて振りむくと、そこにはアレックス皇子が立っていた―。
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