政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
83 / 118

6-2 ミラージュの後始末

しおりを挟む
 ランス皇子の召集令状?からきっかり1時間半後―

宰相、摂政、大臣、副大臣、政務官、補佐官、官房長官・・・・等々覚えきれないので割愛するけれども、とにかく国のお偉方総勢10名が王宮の裏山に集められた。
それにしても・・・私は少しだけランス皇子を恨みたくなってしまった。確かにお偉い方々を集めて欲しいとは頼んだけれども・・それにしては少しやりすぎではないだろうか?
彼らはこの国の中枢を担う大切な役目を持った方々。
方や私は今にもこの国を追い出されるかもしれない風前の灯火状態の皇女である。
そのような立場の私に強引に裏山に集められたのだから当然面白くは無いだろう。
彼らが静かな怒りの目をこちらに向けてくるのがヒシヒシと伝わってくる。

 だけど、ここで気後れしてはいけない。彼らの前で堂々と私の能力をアピールして、どれだけ私という人間が使える人間であるかを証明しなければ、私とミラージュは追い出されてしまうかもしれない。ここはミラージュの為にも・・私ががんばらなければ。

「皆様、お忙しい中、私のような者の為にようこそお集まりいただきました。」

そしてペコリと頭を下げると彼らは口々に不満を言い始めた。

「ああ、そうだ。この忙しい時に・・。」

「私は会議の真っ最中だったのだ!」

「わしだってそうだ!」

「少ない睡眠時間の合間の仮眠中だったのに・・・。」

等々・・・。

「皆様、本当に申し訳ございません。それで・・小耳にはさんだのですが・・皆様は私をもう用無しと判断されて・・国へ戻す計画を立てていると伺ったのですが・・?」

思い切り低姿勢で言うと、全員が私からサッと目をそらせた。成程・・・やはり今私の眼前に立つ彼らは・・・皆私を追い出したくてたまらないのだ。

するとついに今まで黙って私の傍でつるはしを持って立っていたミラージュが切れてしまった。

「ま・・・まあっ!何ですかっ?!仮にもレベッカ様の前でよくもそのような態度を取れますね・・・さてはあなた方全員痛い目に遭いたいようですねっ?!」

ミラージュは片手でつるはしをもってくるくると回すと、彼らの眼前でつるはしを地面に突き刺した。

ドスッ!

つるはしは鈍い音を立てて地面に刺さり・・・。

ピシピシピシッ!

途端に突き刺さったつるはしを中心に亀裂がまるで蜘蛛の巣のように広がって行く。

「ギャアアアッ!!」

「じ、地面がひび割れたッ!」

「何て馬鹿力なんだっ!!」

彼らは大げさなくらい騒ぎたてる。全く・・・これ位どうって事は無いのに。

「何ですかッ?!まだ何かっ?!」

ハッ!ま・まずい・・・!

ミラージュが超音波付きの声で叫んでしまった。

途端に辺りの空気はブルブル震え、木々はざわめき、鳥はバサバサと飛び立ち・・・その場にいた全員(ランス皇子も含めて)が耳を押さえて悶絶し始めた。

「グアアッ!み、耳が耳がカーンとするっ!」

「な・・何なんだっ?!あの女は・・・ほ、ほんとに人間かっ?!」

私は慌ててミラージュの肩に手を置くと言った。

「ミラージュッ!目を閉じて!落ち着いて、ほら・・・す~っと深呼吸して・・・。」

「す~・・・。」

ミラージュは私に言われるまま、目を閉じて深呼吸すると言った。

「申し訳ございませんでした。レベッカ様・・・つい興奮をしてしまい・・・。」

そしてミラージュは申し訳なさそうに地面をチラリと見ると、そこにはランス皇子を含めた10人のお偉い方々が全員地面の上で伸びている。

「どうしましょう・・・レベッカ様・・・。」

しゅんとなるミラージュに私は言った。

「まぁ・・・ちょっとだけ時を巻き戻せばいいだけだから何とかなるでしょう?」

そして私は指をパチンと鳴らした―。

しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】 幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...