81 / 118
5-15 私はどうでもよい存在、と皇子は言った
しおりを挟む
ガラガラガラガラ・・
揺れる車内の中、私は馬車の中で寝こけているアレックス皇子を揺すぶった。
「アレックス様、起きて下さい。もうすぐ到着しますよ。」
「う・・うう~ん・・・。」
眠そうに目をこすりながらアレックス皇子は目を覚ました。
「なんだぁ・・?昼休憩でもするのか・・?」
フワアアア~と伸びをしながら大あくびをするアレックス皇子。全く・・・あのような姿を平気で人の前でさらけ出して・・・あれで高貴な血筋だと言えるのだろうか?
しかし、まるで私の心を読んだかのようにアレックス皇子が言う。
「何だ?お前のその・・・冷めた視線は・・。まさかこれ位の事で高貴な血筋だと言えるのか?なんて思っていないだろうな?」
「ええっ?!ま、まさにその通りですっ!すごいじゃないですか、アレックス様!まさか人の心を読む能力でもあるのですかっ?!」
信じられない、びっくりだ。まさか私の血筋以外にも特殊能力を持つ人間がいたなんて・・。
するとアレックス皇子が言った。
「フフン。何、これ位の事・・容易に想像がつく・・・って、何?!お、お前・・本当にそんな事を考えていたのか?!本当に失敬な奴だなっ?!」
「ええ~・・だってご自分で今の台詞を言ったくせに・・と言うか、他の女性たちの前でも今のような姿をさらけ出しているわけですか?だらしなく大口を開けて、伸びをする姿を・・。」
「おい、ちょと待て。何だ?その話は・・・俺に対する嫌味か?」
ジロリと睨み付けるアレックス皇子。
「いえいえ・・嫌味だなんてとんでも無い。ただ、私は他の女性たちの前でもそんな姿を見せれば幻滅されるのではないかと思って尋ねただけですってば。」
「ふふん。そんな事なら心配ご無用だ。他の女性たちの前ではそのような姿は決して見せないからな。お前にだけだ。先ほどのような態度を取るのは。・・・って何だ?その嬉しそうな顔は?」
眉をしかめて私を見る。
「あ、いえいえ。つまり・・・それは私はアレックス様にとって、特別な存在って事ですよね?私にならどんな姿でもさらけ出せると言う・・。」
やっとアレックス皇子は私という存在を認めてくれたのかと思うと嬉しくなった。
ところが・・・。
「は?お前・・何勝手に自分の都合の良いように解釈してるのだ?何故、お前の前でだけ大あくびが出来るか分かるか?つまり、お前は俺に取って、どうでもいい存在って事なんだよ。そこにいようがいまいが、関係無い。ゆえに、お前にどう思われても気にする必要も無いって事なんだよ。」
「ええ~・・・そうなんですか・・?でも、以前にも言いましたけど・・私には色々と親切にしておいた方が・・何かとお得ですよ?」
何故なら私の力は相手が私の事を思ってくれればくれる程に増幅されていくからだ。しかし・・・はっきり言って今の状態ではアレックス皇子は私の中で完璧にマイナス要因の存在でしかない。あのオーランド王国での惨めな暮らしから私を救ってくれた皇子様だと思っていたのに・・。アレックス皇子は私に取っての救世主では無かったとということなのだろうか?
「ところで・・ここは何処なんだ?それに・・・今気づいたが、どうしてこんなに外が暗いんだ?」
アレックス皇子はガラガラと走り続けている馬車の中から顔を覗かせ・・・。
「な・・・何だーっ?!一体っ!」
大きな声で喚いた。
「お、おい・・・お前・・・あれは・・・。」
アレックス皇子は震えながら前方に見えてきた城を指さす。
「はい、グランダ王国のお城ですけど?もうすぐ到着するので起きていただきました。」
「おいっ!た、確か・・行く時だって半日位かかったんだぞ?一体今何時なんだ?!」
「今ですか?もうすぐ22時になりますけど?」
「な、何ぃっ?!に・・22時だとっ?!我々の昼食はどうした?夕食はっ?!」
騒ぎ立てるアレックス皇子。全く・・・アレックス皇子がこれ程までにうるさくなければ、私だって到着するまで寝かせる必要は無かったのに・・・。ちなみに私と護衛兵士たちは、アレックス皇子が眠っている間にちゃんと昼の食事と夜の食事は休憩先の町でいただいている。
「いいですか?アレックス様。」
私はアレックス皇子の瞳を覗き込みながら言った。
「私たちは・・・ちゃんと昼も夜のお食事もいただいています!いいですねっ?!」
「あ・・・ああ・・そうだった・・・。俺たちは・・昼も夜も食事をしていたな・・・。」
まるでうわ言のように呟くアレックス皇子。その目は完全に暗示にかかっている。
きっとお腹の中は空いてるはずだろうけど・・・。
食べ物の恨みは怖いのである。
私はまだ腑に落ちない様子で首をひねるアレックス皇子をチラリと見ると馬車の窓を開けて顔を覗かせた。
そこには無数の松明によって明るく照らされたグランダ王国の城が幻想的に浮かび上がっている。
私はその美しい城を見つめながら、そっと呟いた。
「ただいま。ミラージュ。」
と―。
揺れる車内の中、私は馬車の中で寝こけているアレックス皇子を揺すぶった。
「アレックス様、起きて下さい。もうすぐ到着しますよ。」
「う・・うう~ん・・・。」
眠そうに目をこすりながらアレックス皇子は目を覚ました。
「なんだぁ・・?昼休憩でもするのか・・?」
フワアアア~と伸びをしながら大あくびをするアレックス皇子。全く・・・あのような姿を平気で人の前でさらけ出して・・・あれで高貴な血筋だと言えるのだろうか?
しかし、まるで私の心を読んだかのようにアレックス皇子が言う。
「何だ?お前のその・・・冷めた視線は・・。まさかこれ位の事で高貴な血筋だと言えるのか?なんて思っていないだろうな?」
「ええっ?!ま、まさにその通りですっ!すごいじゃないですか、アレックス様!まさか人の心を読む能力でもあるのですかっ?!」
信じられない、びっくりだ。まさか私の血筋以外にも特殊能力を持つ人間がいたなんて・・。
するとアレックス皇子が言った。
「フフン。何、これ位の事・・容易に想像がつく・・・って、何?!お、お前・・本当にそんな事を考えていたのか?!本当に失敬な奴だなっ?!」
「ええ~・・だってご自分で今の台詞を言ったくせに・・と言うか、他の女性たちの前でも今のような姿をさらけ出しているわけですか?だらしなく大口を開けて、伸びをする姿を・・。」
「おい、ちょと待て。何だ?その話は・・・俺に対する嫌味か?」
ジロリと睨み付けるアレックス皇子。
「いえいえ・・嫌味だなんてとんでも無い。ただ、私は他の女性たちの前でもそんな姿を見せれば幻滅されるのではないかと思って尋ねただけですってば。」
「ふふん。そんな事なら心配ご無用だ。他の女性たちの前ではそのような姿は決して見せないからな。お前にだけだ。先ほどのような態度を取るのは。・・・って何だ?その嬉しそうな顔は?」
眉をしかめて私を見る。
「あ、いえいえ。つまり・・・それは私はアレックス様にとって、特別な存在って事ですよね?私にならどんな姿でもさらけ出せると言う・・。」
やっとアレックス皇子は私という存在を認めてくれたのかと思うと嬉しくなった。
ところが・・・。
「は?お前・・何勝手に自分の都合の良いように解釈してるのだ?何故、お前の前でだけ大あくびが出来るか分かるか?つまり、お前は俺に取って、どうでもいい存在って事なんだよ。そこにいようがいまいが、関係無い。ゆえに、お前にどう思われても気にする必要も無いって事なんだよ。」
「ええ~・・・そうなんですか・・?でも、以前にも言いましたけど・・私には色々と親切にしておいた方が・・何かとお得ですよ?」
何故なら私の力は相手が私の事を思ってくれればくれる程に増幅されていくからだ。しかし・・・はっきり言って今の状態ではアレックス皇子は私の中で完璧にマイナス要因の存在でしかない。あのオーランド王国での惨めな暮らしから私を救ってくれた皇子様だと思っていたのに・・。アレックス皇子は私に取っての救世主では無かったとということなのだろうか?
「ところで・・ここは何処なんだ?それに・・・今気づいたが、どうしてこんなに外が暗いんだ?」
アレックス皇子はガラガラと走り続けている馬車の中から顔を覗かせ・・・。
「な・・・何だーっ?!一体っ!」
大きな声で喚いた。
「お、おい・・・お前・・・あれは・・・。」
アレックス皇子は震えながら前方に見えてきた城を指さす。
「はい、グランダ王国のお城ですけど?もうすぐ到着するので起きていただきました。」
「おいっ!た、確か・・行く時だって半日位かかったんだぞ?一体今何時なんだ?!」
「今ですか?もうすぐ22時になりますけど?」
「な、何ぃっ?!に・・22時だとっ?!我々の昼食はどうした?夕食はっ?!」
騒ぎ立てるアレックス皇子。全く・・・アレックス皇子がこれ程までにうるさくなければ、私だって到着するまで寝かせる必要は無かったのに・・・。ちなみに私と護衛兵士たちは、アレックス皇子が眠っている間にちゃんと昼の食事と夜の食事は休憩先の町でいただいている。
「いいですか?アレックス様。」
私はアレックス皇子の瞳を覗き込みながら言った。
「私たちは・・・ちゃんと昼も夜のお食事もいただいています!いいですねっ?!」
「あ・・・ああ・・そうだった・・・。俺たちは・・昼も夜も食事をしていたな・・・。」
まるでうわ言のように呟くアレックス皇子。その目は完全に暗示にかかっている。
きっとお腹の中は空いてるはずだろうけど・・・。
食べ物の恨みは怖いのである。
私はまだ腑に落ちない様子で首をひねるアレックス皇子をチラリと見ると馬車の窓を開けて顔を覗かせた。
そこには無数の松明によって明るく照らされたグランダ王国の城が幻想的に浮かび上がっている。
私はその美しい城を見つめながら、そっと呟いた。
「ただいま。ミラージュ。」
と―。
17
お気に入りに追加
772
あなたにおすすめの小説
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・


前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる