政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

5-9 お仕置き成功

「き、貴様ら～っ！な、何て事をするんだ！俺は皇子だぞっ！こんな事をしてただで済むと思っているのかっ！」

ハチミツでベタベタになった気色の悪い姿で喚くアレックス皇子はさながらゾンビのように見えた。

「ほーう？いつまでそんな口を叩いていられるかな・・・？さっさと自分の妻が誘拐された時に大人しく身代金を支払っていれば良かったのに・・・。思い切り後悔させてやるよ。」

おおっ！アマゾナ・・・敵？だけど格好いい！

「何だ・・・？まだ俺になにかするつもり・・うわっ！き、汚い！あっちへ行け！」

突然地面に縛り付けられているアレックス皇子が騒ぎ出した。遠目から様子をうかがう私には今何が起こっているのか分からない。するといつの間にかアマゾナの手下の1人が私に近付き、ロープをほどいてくれていた。

「あ、ありがとう・・・。」

一応お礼を言うと、手下その１は「長の命令ですから」と言って去って行く。
やはりアマゾナはこの村の長だったようだ。

そっとアマゾナの近くに行き、アレックス皇子の様子をうかがい・・私は思わず吹き出しそうになった。

「ベタベタで気持ち悪い・・・！グアアアッ！く、来るなっ！あっちへ行けっ！ギャアアッ！グハアァツ！く、口に中に虫があぁぁっ！」

すっかりゾンビのような外見になってしまったアレックス皇子の周囲をハエが飛び回り、テントウムシが何匹も顔の上についている。いやはやその面白いことと言ったら・・アマゾナをはじめ、他の手下達も必死に笑いを堪えている。アマゾナが悪魔のような笑みを浮かべてアレックス皇子に迫る。

「どうもお前は根性がねじ曲がっているようだからねぇ・・まだまだこんなもんじゃすまないよ？おい！連れてきなっ！」

アマゾナが大きく手招きすると、3人の手下が牧草に放たれていた馬をそれぞれ引き連れてきた。

「お、おい・・な、何するんだ？ま・まさか・・・。」

テントウムシを沢山顔や身体・・・髪に張り付かせたアレックス皇子の顔に怯えが走る。それを見たアマゾナが悪魔のような笑みを浮かべながら言った。

「お前・・・さっき、ベタベタして気持ち悪いって言ってただろう？知ってたかい？馬ってねぇ・・ハチミツが大好物なんだよ。」

「ヒッ！じょ・・冗談だろう？な？やめてくれっ！や、やるなら・・俺じゃなくて女の方にしてくれっ！」

この後に及んでアレックス皇子はまたしてもとんでもないことを言った。そしてその言葉は・・アマゾナの逆鱗に触れた。

「お、お前っていう男は・・・！このクズがぁっ！お前たち！やっておしまいっ！」

「「「へいっ！！！」」」

3人の手下達は馬を解き放った。すると馬はヨダレをダラダラ垂らしながら荒い鼻息でアレックス皇子に近付き・・・。

「ギャアアアアアッ！！」

激しい絶叫が響き渡った。


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「どうだい？身代金を支払う気になったかい？」

縄を解かれ、ハチミツと馬のヨダレで悲惨極まりない姿になったアレックス皇子は呆然と佇みながら、無言でコクコクと頷く。

「それじゃあ・・どうやって支払ってくれるのかな？」

「馬車に・・・金貨がつんである・・。好きなだけ持っていけ・・。」

そしてガックリと項垂れ・・そのままバタリと地面に倒れこみ、気を失ってしまった。あらま・・・なんてメンタルが弱い男なのだろう・・。でも、これはある意味好都合。私が力を使う処をアレック皇子に見せる訳にはいかないからだ。

そう、アレックス皇子を懲らしめてくれたお礼に・・今度は私がアマゾナ達を懲らしめる番がやって来たのだ。私の為にアレックス皇子に嫌がらせをしてくれたのは感謝しているけれども、所詮彼らは盗賊・・・人の物を盗む行為を断じて許すわけにはいかない。
私は・・正義感にあふれた人間なのだから―。