政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
69 / 118

5-3 目覚めれば袋詰めにされていた私

しおりを挟む
 真夜中―

私はある異変を感じて目が覚め・・驚いた。何と自分の身体が大きな袋の中に閉じ込められ、固い床の上の上に転がされていたのだ。しかもご丁寧に両手両足は後ろ手に縛られ、口にはさるぐつわを噛ませられて頭の後ろで縛られている。

「モガーッ!モガッ!(何ーっ!!これっ!)」

さるぐつわのせいで発する言葉がモガモガになってしまう。すると頭上で声が聞こえた。

「あら・・何だ、もう目が覚めてしまったのねぇ。あれだけたっぷりと食事の中に睡眠薬を仕込んだのに・・。」

その声はどこかで聞き覚えがある。え・・・と・・どこだっけ・・?

「おい、本当にこんな方法で・・・うまくいくんだろうな?」

男の声が聞こえてきた。

「ああ、勿論だよ。あんた達だって見ただろう?あの金ぴかに光る立派な馬車を・・。」

女の嬉しそうな声が聞こえてくる。

「ああ・・確かに見たが・・・何だかあの馬車・・何処かで見覚えがあるように見えるんだが・・・。」

男は複数人いるのだろうか?別の声が聞こえてきた。

「ふん・・?そうかい?だけど貴族の馬車なんてどれもあんななもんじゃないのかい?とにかく、こいつらは相当金を持ってるはずだ。きっとこちらの言い分で身代金を払ってくれるに違いないさ。まあ、私に任せなよ。」

「モガッ?!モガモガモガッ?!(何?!身代金っ?!)」

まさか・・・私、誘拐された?!あまりにも衝撃的な話で、袋の中で身もだえした。

「あー、もう・・うるさいガキだねえ・・。夜明けまではまだ時間があるから・・、もう少し寝てな。」

ブスッ!

途端に縛られて入る麻袋の中に針のようなものが突き刺さって来た。
うわっ!危ないっ!

「モガーッ!モガモガモガモガッ!!(ちょっとーっ!何するのよっ!!)」

しかし次の瞬間・・・。

プシュ~・・・・

針の先端から紫色の煙が充満し・・・・私は再び眠りについてしまった―。



****

眩しい朝日が顔を直撃し、私は思わず太陽とは逆の方に背を向けた。

う~ん・・・ここは何処だろう・・?

ぼんやりする頭で目を開けると、私は未だに床の上に転がっている状態だった。ただ先ほどと違うのは私はさるぐつわを外され、袋の中から出されていた。
辺りを見渡すと、そこはまるでログハウスのような造りをしていた。床も壁も天井も全て木で出来ている。そして色々なものが雑然と部屋の中に置かれていた。畑を耕す鍬やバケツ・・壊れたテーブルや椅子・・等々。

「ひょっとして・・ここは物置かな?」

上を見上げれば、窓が見える。太陽は大分高いところまで上っているように思えた。

「今お昼ぐらいかぁ・・・。」

ぐう~・・・・

そう考えた途端、お腹の虫が鳴りだした。ああ・・このお腹の空き具合・・やはり今回も朝食をたべそこなってしまったようだ。その時・・・。

「何だってっ?!断られたっ?!」

聞き覚えのある女性の声が聞こえてきた。

「ああ・・・そうなんだよ。あの金持ち男に身代金、金貨1000枚を要求したら鼻で笑われたんだよ。」

「鼻で笑った・・?ひょっとして、あのガキの価値はもっと高いって言う事かい?」

「違うっ!そうじゃないって!男はこう言ったんだよっ!『誰があいつの為に金など払うかっ!そんな無駄な行為はドブに金を落とすようなものだ!びた一文だって支払わん!』って!」

男の焦り声がドアの外から聞こえてきた。そこで私はようやく状況がつかめた。
はは~ん・・・。
つまり、私は宿屋で睡眠薬入りの食事を出され・・深い眠りについた時に身代金目的で誘拐された・・・。そして脅迫されているのはアレックス皇子だと言う事に―。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】 幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...