68 / 118
5-2 宿屋に泊まりたい!
しおりを挟む
私たちが立ち寄った村は『アルト』という名の小さな村だった。
食事が出来るお店はたった1軒だけで、2階は宿屋になっている。そして一部屋は最大2名まで宿泊できる部屋が10室あった。
「うむ・・・このようなど田舎の村の割には中々食事はうまいな・・・。」
『木こりの妻の愛情シチュー』を食べながらアレックス皇子は言った。ちなみに私の食べている料理は『森の仲間のワクワクパスタ』である。
「アレックス様・・・ど田舎は言い過ぎですよ。ど田舎は・・せめて田舎にしておきましょう。うん・・このパスタ、とっても美味しいですよ。」
「そうか、俺の食べているシチューもとてもうまいぞ。ど田舎で出される料理の割にはよく頑張っている。」
アレックス皇子は上品に胸にナフキンを付けて食べている。
「え?本当ですか?なら一口下さいよ、ほら、私のパスタも食べさせてあげますから。」
私はくるくるとフォークに巻き付けたパスタをアレックス皇子に突き出した。
「おわぁっ!お、お前・・人の眼前にフォークを突き出すな!刺さったらどうする!それに俺は誰かと食事を分け合う趣味は無いのだっ!」
アレックス皇子はシッシッと私の突き出したフォークを追い払うように言う。
「ええ~・・そんな事言わずに・・2人でシェアして食べましょうよ~・・・私はよくミラージュと2人で分け合って食べていましたよ?」
「うるさい!お前の侍女と一緒にするな・・!食事くらいおとなしく食べられないのか?お前は・・!」
そんな私たちのやり取りを、何故か離れた席で見守っている護衛の兵士達・・いや、よく見てみると彼らは何とアレックス皇子からコソコソ隠れるようにお酒を飲んでいる。おまけに数人はすでに出来上がっているように見えた。
「ふわああ・・・・それにしても・・解せぬ・・・。」
アレックス皇子が欠伸を噛み殺しながらシチューを食べている。
「何が解せぬのですか?」
私は最後のパスタを食べ終えると尋ねた。
「ああ・・あれ程たっぷり寝たはずなのに・・・何故か今非常に眠くてたまらん・・目を閉じれば・・すぐに深い眠りに・・つきそうだ・・。」
言いながらアレックス皇子はすでにこっくりこっくり船を漕ぎだしそうになっている。あ~あれだ・・・私がアレックス皇子の体内時計を10時間進めたから・・突然眠気が襲って来たんだ。それに向こうのテーブルでは既にお酒で出来上がった護衛兵市たちがいるし・・・。
「アレックス様、どうせ私達は滞在日数を速めて出国したのですから今夜はここの宿屋で一泊していきましょうよ。」
「う・・うむ・・そうだな・・・。」
するとそれを耳にしたお店のおかみがダッシュで駆け寄って来ると鼻息を荒くしながら私達に話しかけてきた。
「ほんとうですかっ?!お客様!こちらの宿屋をご利用になるのですね?!まいどありがとうございますっ!向こうのテーブルの方々もお泊りになるのですよね?!」
「はい!全部で10名宿泊させて下さいっ!」
私は元気よく返事をする。
「おい、待て・・俺はまだ宿泊するとは・・・。」
眠気と戦っているアレックス皇子は何故か泊まりたくない様子だ。
「アレックス様、眠いんですよね?だったら今夜は宿泊しましょうよ!ほら、外をみてください。もう日が落ちてすっかり真っ暗なんですよ?絶対宿泊した方がいいですってば!」
旅行なんてした事が今までの人生一度も経験したことが無かった私は何としても宿泊して旅行気分を味わいたかったので、必死になってアレックス皇子を説得する。
「ええ、そうですよ。お客様・・・実はつい最近、この先の森で山賊が現れ始めたんですよ。今まで山賊なんかいなかったのに・・。夜に山道を進むと危険ですから、是非我が宿をご利用下さい!」
うん?山賊・・山賊・・何だかこの間の山賊が頭をよぎったが・・まさかね・・。
しかし、山賊という話を聞かされたアレックス皇子はこの宿に宿泊する事を承諾し・・私達は2階の客室を全部借り切って今夜はこの宿に宿泊する事に決めた。
「いいか?お前・・・俺はこの部屋で寝るが・・絶対に夜這いなんかしかけてくるなよ?分ったか?!」
2階の宿部屋にあがって来たアレックス皇子はジロリと後からついて来た私を睨み付けながらとんでもない事を言って来た。全く・・・仮にも乙女に向かって、相変わらず何て事を言ってくる皇子なのだろう。
「そんな事するはずないじゃないですか・・、何故私がわざわざアレックス様を夜這いしなくちゃいけないんですか・・。」
こっちだって疲れてるのだから、そんな事するはずないのに。と言うか、そんな気も起こらない。
「よし、それを聞いて安心して今夜は眠れる。それじゃあな!」
アレックス皇子はドアを開けて室内へ入ると思い切りバタンと扉を閉めてしまった。
そして廊下に残されたのは私と、背後に立つ8人の兵士達。
「あの・・我々も休ませて貰います。」
リーダー格の兵士が遠慮がちに私に声を掛けてきた。
「ええ、そうですね。皆さんご苦労様でした。それではおやすみなさい。」
そしてがちゃりとドアを開け、私は室内に足を踏み入れ・・その夜、騙されたことを知る―。
食事が出来るお店はたった1軒だけで、2階は宿屋になっている。そして一部屋は最大2名まで宿泊できる部屋が10室あった。
「うむ・・・このようなど田舎の村の割には中々食事はうまいな・・・。」
『木こりの妻の愛情シチュー』を食べながらアレックス皇子は言った。ちなみに私の食べている料理は『森の仲間のワクワクパスタ』である。
「アレックス様・・・ど田舎は言い過ぎですよ。ど田舎は・・せめて田舎にしておきましょう。うん・・このパスタ、とっても美味しいですよ。」
「そうか、俺の食べているシチューもとてもうまいぞ。ど田舎で出される料理の割にはよく頑張っている。」
アレックス皇子は上品に胸にナフキンを付けて食べている。
「え?本当ですか?なら一口下さいよ、ほら、私のパスタも食べさせてあげますから。」
私はくるくるとフォークに巻き付けたパスタをアレックス皇子に突き出した。
「おわぁっ!お、お前・・人の眼前にフォークを突き出すな!刺さったらどうする!それに俺は誰かと食事を分け合う趣味は無いのだっ!」
アレックス皇子はシッシッと私の突き出したフォークを追い払うように言う。
「ええ~・・そんな事言わずに・・2人でシェアして食べましょうよ~・・・私はよくミラージュと2人で分け合って食べていましたよ?」
「うるさい!お前の侍女と一緒にするな・・!食事くらいおとなしく食べられないのか?お前は・・!」
そんな私たちのやり取りを、何故か離れた席で見守っている護衛の兵士達・・いや、よく見てみると彼らは何とアレックス皇子からコソコソ隠れるようにお酒を飲んでいる。おまけに数人はすでに出来上がっているように見えた。
「ふわああ・・・・それにしても・・解せぬ・・・。」
アレックス皇子が欠伸を噛み殺しながらシチューを食べている。
「何が解せぬのですか?」
私は最後のパスタを食べ終えると尋ねた。
「ああ・・あれ程たっぷり寝たはずなのに・・・何故か今非常に眠くてたまらん・・目を閉じれば・・すぐに深い眠りに・・つきそうだ・・。」
言いながらアレックス皇子はすでにこっくりこっくり船を漕ぎだしそうになっている。あ~あれだ・・・私がアレックス皇子の体内時計を10時間進めたから・・突然眠気が襲って来たんだ。それに向こうのテーブルでは既にお酒で出来上がった護衛兵市たちがいるし・・・。
「アレックス様、どうせ私達は滞在日数を速めて出国したのですから今夜はここの宿屋で一泊していきましょうよ。」
「う・・うむ・・そうだな・・・。」
するとそれを耳にしたお店のおかみがダッシュで駆け寄って来ると鼻息を荒くしながら私達に話しかけてきた。
「ほんとうですかっ?!お客様!こちらの宿屋をご利用になるのですね?!まいどありがとうございますっ!向こうのテーブルの方々もお泊りになるのですよね?!」
「はい!全部で10名宿泊させて下さいっ!」
私は元気よく返事をする。
「おい、待て・・俺はまだ宿泊するとは・・・。」
眠気と戦っているアレックス皇子は何故か泊まりたくない様子だ。
「アレックス様、眠いんですよね?だったら今夜は宿泊しましょうよ!ほら、外をみてください。もう日が落ちてすっかり真っ暗なんですよ?絶対宿泊した方がいいですってば!」
旅行なんてした事が今までの人生一度も経験したことが無かった私は何としても宿泊して旅行気分を味わいたかったので、必死になってアレックス皇子を説得する。
「ええ、そうですよ。お客様・・・実はつい最近、この先の森で山賊が現れ始めたんですよ。今まで山賊なんかいなかったのに・・。夜に山道を進むと危険ですから、是非我が宿をご利用下さい!」
うん?山賊・・山賊・・何だかこの間の山賊が頭をよぎったが・・まさかね・・。
しかし、山賊という話を聞かされたアレックス皇子はこの宿に宿泊する事を承諾し・・私達は2階の客室を全部借り切って今夜はこの宿に宿泊する事に決めた。
「いいか?お前・・・俺はこの部屋で寝るが・・絶対に夜這いなんかしかけてくるなよ?分ったか?!」
2階の宿部屋にあがって来たアレックス皇子はジロリと後からついて来た私を睨み付けながらとんでもない事を言って来た。全く・・・仮にも乙女に向かって、相変わらず何て事を言ってくる皇子なのだろう。
「そんな事するはずないじゃないですか・・、何故私がわざわざアレックス様を夜這いしなくちゃいけないんですか・・。」
こっちだって疲れてるのだから、そんな事するはずないのに。と言うか、そんな気も起こらない。
「よし、それを聞いて安心して今夜は眠れる。それじゃあな!」
アレックス皇子はドアを開けて室内へ入ると思い切りバタンと扉を閉めてしまった。
そして廊下に残されたのは私と、背後に立つ8人の兵士達。
「あの・・我々も休ませて貰います。」
リーダー格の兵士が遠慮がちに私に声を掛けてきた。
「ええ、そうですね。皆さんご苦労様でした。それではおやすみなさい。」
そしてがちゃりとドアを開け、私は室内に足を踏み入れ・・その夜、騙されたことを知る―。
17
お気に入りに追加
772
あなたにおすすめの小説
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・


前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる