政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

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4-18 まだ乙女なのに

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 午後3時―

私とアレックス皇子は誰に見送られることなく、城の出口に護衛の兵士たちと共に集まっていた。すでにそこには6台の馬車と4頭の鞍を付けた馬が待機していた。

「よし!全員揃っているなっ!それでは国へ帰るぞっ!」

アレックス皇子の言葉に、兵士たちが「はい!」と全員声を揃えて返事をする。でも私はその前にどうしても気になることがあった。

「あの~・・アレックス様。お聞きしたいことがあるのですが・・・。」

「何だ?」

馬車に乗り込もうとするアレックス皇子に私は手を上げて質問した。

「どうして誰もお見送りに来ていないのでしょう?普通は来賓客が帰る時は、招待した方は盛大にお見送りするの一般常識なのではないでしょうか?」

「ふん、お前の口から一般常識という言葉が飛び出てくるとは思わなかったな。普段から非常識な事しかしないお前の口から・・いいだろう、教えてやろう。それは俺がお前を妻だと世間に公表していないからだ。お前を連れて国に帰るところを皆に見せたら、あの女は誰なのだと変な目で世間に見られてしまうだろう?だから内緒で帰るのだ。」

一々嫌味を含む話し方をするアレックス皇子。しかし、普段からいろんな女性を他の国に来てまで堂々ととっかえひっかえしているくせに今更取り繕っても、もう既に手遅れだと思うのだけど・・?

「そうですか・・でもせめてサミュエル皇子にくらいはご挨拶したかたのですけど・・。う~ん・・・残念です・・。」

そう、何せ私とサミュエル皇子は互いに同盟?を結んだ相手なのだから。
すると・・・。

「お・・お前・・・。」

アレックス皇子が何故か俯き、肩を震わせている。一体どうしたのだろう?

「ま、まさか・・サミュエルと姦通したのか~っ!!」

何とアレックス皇子はこんな日の高い内から、大勢の兵士達の前でとんでもない事を大声で口走った。当然の如く、ギョッとする兵士達。

「はあ?何言ってるんですか。サミュエル皇子と姦通なんて・・そんな事あるわけないじゃないですか。」

この皇子は一体何を言い出すのだろう?思わずあきれ顔で見る。しかし、アレックス皇子は何故か興奮が止まらない。

「本当かっ?!絶対に姦通していないって言えるのかっ?!ああ・・でも当然それくらい言えるよな?何せ口があるのだからっ!人は平気で嘘くらい、いくらでもつけるものだからなぁっ?!そもそも嘘というものはつくためにあるのだからなっ!」

訳の分からない台詞を大声で喚くアレックス皇子。

「この私がサミュエル皇子と本当に姦通したと思っているのですか?しょっちゅう姦通している誰かさんと一緒にしないで下さいよ。」

つい本音がポロリと出てしまう。

「おい?誰がしょっちゅう姦通してるだと?言ってみろ!」

アレックス皇子は怒りをあらわに言う。

「私は別にアレックス皇子が普段から色々な女性と姦通してるなんて言ってませけど?」

「ほら言った!今、お前はっきり俺を名指しして姦通してると言ったぞっ?!」

もうそろそろこんな不毛な会話をやめたくなったので私は言った。

「そうでしょうか?聞き間違いではないですか?さ、それより国へ帰るんですよね?グランダ王国までは距離があって遠いのですから・・早く馬車に乗りましょうよ。」

馬車に乗り込みながら私はアレックス皇子に言った。

「またお前はエスコートも無しに勝手に馬車に乗って・・。」

何やら小声でアレックス皇子はぶつぶつと呟きながら後から馬車に乗り込んで来たが、私はすきっ腹でこれ以上皇子には付き合っていられないので聞こえないふりをして窓の外を眺める事にした。

「よし、出してくれ。」

アレックス皇子は御者に命じると、「かしこまりました。」と御者は返事をし、馬車はガラガラと走り出した。

私は馬車の窓からどんどん遠ざかって行くガーナード王国を見つめながらため息をついた。やれやれ・・結局お昼もおやつも抜きで出発する事になるとは・・。
すると私の溜息を聞きつけてか、機嫌の悪さを隠そうともせずにアレックス皇子が言う。

「お前・・・今、ため息をついたな?やはりサミュエルと・・。」

「ですから姦通なんかしていませんてば。」

本日5度目の『姦通』を口にする私。全くこれでもまだ乙女だというのに、この皇子は一体何を言わせるのだろう。

「だいたいですねえ・・アレックス皇子は私にお前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだからっておっしゃたのですよ?何故そんなにサミュエル皇子と私の事をそれほど疑うのですか?まさか・・嫉妬・・のはずないですよね?」

「あ・・・当たり前だっ!誰がお前に嫉妬などするかっ!!」

しかし、その台詞を言ったアレックス皇子の頬がうっすらと赤く染まっていた・・ように私には見えた―。


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