48 / 118
3-13 私はおまけ?
しおりを挟む
真っ白な城壁に囲まれたガーナード王国の巨大な城は星々のきらめく空の下で無数の松明に照らされて城の全貌がオレンジ色に浮かび上がり・・・とても幻想的な光景だった。
「うわ~綺麗なお城ですね・・・。」
馬車の窓から顔を覗かせながらどんどん近づいてくる美しい城の姿に感動の声を上げた。
「フン、あんな城・・別にすごくもなんともない。お前は我が国の夜の城を外側から見たことは無いのか?」
アレックス皇子はつまらなさそうに持ってきた本を読んでいる。
「ええ。ありませんよ。昼間しか城の外を出たことはありませんので。」
馬車の窓から顔を引っ込め、座席に座りなおすと言った。
「ハッ!何だそれは?お前は夜に外出したことが無いのか?ただの一度もか?」
アレックス皇子は鼻で私をあざ笑う。
「いいか?グランダ王国には普段住まう居城以外に、舞踏会を開催する為の特別な城が小島に建てられているのだ。その島へ渡るには特注の豪華な小舟に乗って行くのだが、闇夜の海の水面には松明によって照らされた城が映り・・それは美しい光景を見る事が出来る。つい2週間程前にもその城でパーティーを開いたのだが・・あの夜は特に大きな満月の日で、その月が城の陰から姿を見せていた。打ち上げた花火はそれはとにかく見事だったな・・・。」
アレックス皇子は誰に言うとも無く熱く語りながら恍惚な表情を浮かべていた。恐らく自分の言葉に酔っているのだろう。
う~ん・・でも確かに2週間ほど前・・・部屋の窓から美しい花火が打ちあがるのを目撃したけれども・・あの花火は町の人々のお祝いのお祭りでも開かれているのだろうとばかり思っていた。それなのに・・・まさか別の城でパーティーが行われていたとは・・。しかし、ここで一つの疑問が沸き上がる。
「あの~何故私はその城のパーティーに呼ばれていなかったのでしょうか?いえ、それどころか、今までただの一度も国民の前での挨拶どころか、王宮で挨拶すらさせてもらえていませんよ?私がアレックス皇子の妻だと言う事を認識しているのはほんのわずかな人達だけなのですけど?」
「それは・・必要無いからだ。」
アレックス皇子は私の目を見る事も無く、予想通りの返事をした。
「はぁ・・なるほど・・・。分かりました。」
必要ない・・確かにその通りなのだろう。必要とされていれば嫁いでくるときに迎えを寄こしてくれただろうし、結婚式だって1人で挙げる事は無かっただろう。それに私は結婚指輪をはめているのに、肝心のアレックス皇子は指輪すらはめていない。
なのでそれ以上尋ねるのをやめて再び窓の外に視線を移そうとした時・・。
「何?!それでお前は納得したのか?!何故必要ないのか理由を問いただす気はないのか?」
突如アレックス皇子から素っ頓狂な声が聞こえたので視線を戻した。するとそこには
驚いた顔で私を見ている王子の姿がある。
「お前・・自分が何故冷遇されているのか理由を知りたくはないのか?」
「はい、必要無いと言われてしまえばそれまでですからね。あの~それとももしや・・理由を話したいのですか?」
あ、なんだ。一応私の事を冷遇していると自覚があったわけだ。
「い、いや・・・別に言いたいわけでは・・・。」
しかし、横目でチラチラと私を見ながらムズムズ身体を動かす姿はどう見ても言いたくてたまらない様子に思えた。ふう・・やれやれ全く・・。
「・・・分かりました。それではアレックス皇子。どうか私を冷遇している理由をお聞かせ願えないでしょうか?」
頭を下げながら丁寧に尋ねる。
「・・・お前、俺を馬鹿にしているのか?」
むっとした表情でこちらを見るアレックス皇子。
「いえいえ、とんでもありません。」
ただ早くこの話を終わらせたいだけだ。
「よし、なら教えてやろう。お前は・・俺のおまけだ。」
「おまけ・・ですか?」
おまけとは・・私の予想の斜め上をいっている。
「ああ、おまけだ。お前は・・自分の国には大量の鉱石が眠っている事を知っているか?」
アレックス皇子は腕組みしながら言う。
「ええ、知っていますよ。」
そんな事は知っていて当然だ。グランダ王国に鉱石があったのは、私があの国に住んでいたからだ。
「だが・・・お前たちの国は吹けば飛ぶような弱小国。あれほどの鉱石が眠っているのに貧しい国だった為、ろくな開発技術も無く・・採掘できるのは僅かな量。」
「そうでしたね」
何故貧しかったのか・・理由は簡単。あの国は姫である私をずっと冷遇してきた為に、運命の輪の力が働き・・一向に裕福な国になれない力が作用していたのだから。私に親切にしてくれていれば、今頃は強大な王国を築き上げられていたはずなのに・・。
「そこで我が父はその採掘権を得るために同盟を持ち掛けた。こちらが採掘した鉱石の1割をグランダ王国に分けてやる代わりに、採掘権を寄こせとな。するとお前の父は言ったのだ。ついでに嫁き遅れの3人の娘がいるので誰か1人嫁に貰ってくれないかと。そして父は快諾し、それが今回の俺とお前の結婚へとつながった。俺はまだまだ結婚したくは無かったのに・・。」
そしてアレックス皇子はじろりと私を見た。
「いいか?所詮これは政略結婚。そこに愛など存在しない。俺にとってのお前は単なるおまけ・・まあ装身具みたいなものだ。装身具に気を使ってやる必要は一切ないだろう?それに・・・。」
馬車はもうとっくにガーナード王国の城に着いている。なのに話に夢中になっているアレックス皇子にはその事に全く気付いていない。あ~あ・・護衛の兵士の人達・・皆困り顔でこちらを見ているよ。
早く話が終わらないだろうか・・・。
私は窓の外を眺めながらため息をついた―。
「うわ~綺麗なお城ですね・・・。」
馬車の窓から顔を覗かせながらどんどん近づいてくる美しい城の姿に感動の声を上げた。
「フン、あんな城・・別にすごくもなんともない。お前は我が国の夜の城を外側から見たことは無いのか?」
アレックス皇子はつまらなさそうに持ってきた本を読んでいる。
「ええ。ありませんよ。昼間しか城の外を出たことはありませんので。」
馬車の窓から顔を引っ込め、座席に座りなおすと言った。
「ハッ!何だそれは?お前は夜に外出したことが無いのか?ただの一度もか?」
アレックス皇子は鼻で私をあざ笑う。
「いいか?グランダ王国には普段住まう居城以外に、舞踏会を開催する為の特別な城が小島に建てられているのだ。その島へ渡るには特注の豪華な小舟に乗って行くのだが、闇夜の海の水面には松明によって照らされた城が映り・・それは美しい光景を見る事が出来る。つい2週間程前にもその城でパーティーを開いたのだが・・あの夜は特に大きな満月の日で、その月が城の陰から姿を見せていた。打ち上げた花火はそれはとにかく見事だったな・・・。」
アレックス皇子は誰に言うとも無く熱く語りながら恍惚な表情を浮かべていた。恐らく自分の言葉に酔っているのだろう。
う~ん・・でも確かに2週間ほど前・・・部屋の窓から美しい花火が打ちあがるのを目撃したけれども・・あの花火は町の人々のお祝いのお祭りでも開かれているのだろうとばかり思っていた。それなのに・・・まさか別の城でパーティーが行われていたとは・・。しかし、ここで一つの疑問が沸き上がる。
「あの~何故私はその城のパーティーに呼ばれていなかったのでしょうか?いえ、それどころか、今までただの一度も国民の前での挨拶どころか、王宮で挨拶すらさせてもらえていませんよ?私がアレックス皇子の妻だと言う事を認識しているのはほんのわずかな人達だけなのですけど?」
「それは・・必要無いからだ。」
アレックス皇子は私の目を見る事も無く、予想通りの返事をした。
「はぁ・・なるほど・・・。分かりました。」
必要ない・・確かにその通りなのだろう。必要とされていれば嫁いでくるときに迎えを寄こしてくれただろうし、結婚式だって1人で挙げる事は無かっただろう。それに私は結婚指輪をはめているのに、肝心のアレックス皇子は指輪すらはめていない。
なのでそれ以上尋ねるのをやめて再び窓の外に視線を移そうとした時・・。
「何?!それでお前は納得したのか?!何故必要ないのか理由を問いただす気はないのか?」
突如アレックス皇子から素っ頓狂な声が聞こえたので視線を戻した。するとそこには
驚いた顔で私を見ている王子の姿がある。
「お前・・自分が何故冷遇されているのか理由を知りたくはないのか?」
「はい、必要無いと言われてしまえばそれまでですからね。あの~それとももしや・・理由を話したいのですか?」
あ、なんだ。一応私の事を冷遇していると自覚があったわけだ。
「い、いや・・・別に言いたいわけでは・・・。」
しかし、横目でチラチラと私を見ながらムズムズ身体を動かす姿はどう見ても言いたくてたまらない様子に思えた。ふう・・やれやれ全く・・。
「・・・分かりました。それではアレックス皇子。どうか私を冷遇している理由をお聞かせ願えないでしょうか?」
頭を下げながら丁寧に尋ねる。
「・・・お前、俺を馬鹿にしているのか?」
むっとした表情でこちらを見るアレックス皇子。
「いえいえ、とんでもありません。」
ただ早くこの話を終わらせたいだけだ。
「よし、なら教えてやろう。お前は・・俺のおまけだ。」
「おまけ・・ですか?」
おまけとは・・私の予想の斜め上をいっている。
「ああ、おまけだ。お前は・・自分の国には大量の鉱石が眠っている事を知っているか?」
アレックス皇子は腕組みしながら言う。
「ええ、知っていますよ。」
そんな事は知っていて当然だ。グランダ王国に鉱石があったのは、私があの国に住んでいたからだ。
「だが・・・お前たちの国は吹けば飛ぶような弱小国。あれほどの鉱石が眠っているのに貧しい国だった為、ろくな開発技術も無く・・採掘できるのは僅かな量。」
「そうでしたね」
何故貧しかったのか・・理由は簡単。あの国は姫である私をずっと冷遇してきた為に、運命の輪の力が働き・・一向に裕福な国になれない力が作用していたのだから。私に親切にしてくれていれば、今頃は強大な王国を築き上げられていたはずなのに・・。
「そこで我が父はその採掘権を得るために同盟を持ち掛けた。こちらが採掘した鉱石の1割をグランダ王国に分けてやる代わりに、採掘権を寄こせとな。するとお前の父は言ったのだ。ついでに嫁き遅れの3人の娘がいるので誰か1人嫁に貰ってくれないかと。そして父は快諾し、それが今回の俺とお前の結婚へとつながった。俺はまだまだ結婚したくは無かったのに・・。」
そしてアレックス皇子はじろりと私を見た。
「いいか?所詮これは政略結婚。そこに愛など存在しない。俺にとってのお前は単なるおまけ・・まあ装身具みたいなものだ。装身具に気を使ってやる必要は一切ないだろう?それに・・・。」
馬車はもうとっくにガーナード王国の城に着いている。なのに話に夢中になっているアレックス皇子にはその事に全く気付いていない。あ~あ・・護衛の兵士の人達・・皆困り顔でこちらを見ているよ。
早く話が終わらないだろうか・・・。
私は窓の外を眺めながらため息をついた―。
18
お気に入りに追加
772
あなたにおすすめの小説
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・


前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる