46 / 118
3-11 森の友達
しおりを挟む
まず、馬車から降りると私は周囲の状況を確認した。ここは森の中・・そして眼前には山賊たちが・・1、2、3、・・・全員で8人いた。7人がマント姿で、中には1人だけフード付きのコートを羽織った髪の長い男がいる。なるほど・・彼が魔術師か。中々分かり易い恰好をしている。
そして背後には護衛の兵士たちが馬の上で気持ちよさそうに眠っている。この分だと恐らく馬車の中にいる護衛の人達も眠っているんだろうな・・。
「さあ、降りてきましたよ。これでいいですか?」
するとリーダーとみられる頬に傷のある30代前後の男が言った。
「へぇ~これは偉く別嬪さんが乗っていたじゃないか?」
「え?本当ですか?」
思わず褒められて笑顔になる。すると馬車の中からヘタレな皇子の声が聞こえる。
「この馬鹿っ!喜んでいる場合かっ?!」
「はい、すみません。」
注意されてしまった。
すると別の山賊が言う。
「オイオイ・・・俺たちゃ知ってるんだぜ?そのお嬢さんの後ろの馬車にはもう1人男が乗ってるんだろう?情けない奴だな~・・・女だけ馬車から降ろして自分は中で高みの見物か?」
「あ!中々いいこと言ってくれますね?本当にそう思いますよ。あなた方は山賊なのに良い人達ですね。」
思わず本音を口走る。
「ば・・馬鹿っ!山賊を褒めるなっ!」
再び声だけで文句を言ってくる皇子。
「おうおう・・気の毒になぁ・・お前さん・・あの馬車の中の男に酷い目に遭わされているんだろう?俺達の所へ来いよ。可愛がってやるぜ?」
別の山賊が言う。
「ええ・・・・でもせっかくのお誘いの言葉ですが・・私達、行かなければいけないところがあるんですよ。なので・・・すみません。なるべく手荒な真似はしたくないので見逃して頂けますか?」
そして頭を下げた。そんな私を見て山賊たちは顔を見合わせ・・全員で大笑いを始めた。
「おい!恐怖で気でも狂ったのかっ?!」
アレックス皇子が窓から顔を覗かせた。・・・全くうるさい人だ。
「アレックス様・・何も出来ないのでしたら、少しお静かに願います。」
私は背中を向けたままアレックス皇子に声を掛けた。
「は?!お、お前・・一体誰に向かってそんな・・・口・・を・・。」
ドサッ!
背後で崩れ落ちる音が聞こえた。・・・どうやら無事に眠ってくれたらしい。そして眼前の山賊たちはまだゲラゲラと笑っている。
「あの~ところで・・少し伺いたい事があるんですけど!」
私は笑っている山賊たちに向かって言った。
「ん?な、何だ?嬢ちゃん。」
リーダー格の山賊は笑いをこらえながらこちらを見る。
「あの、皆さんはずっとここで山賊業を営んでいるのですか?」
「ああ・・営むって言う言い方もなんだが・・・そうだな。」
「そうそう、これが俺達の生きる道よ!」
「嬢ちゃんも一緒に山賊になろうぜ!」
好き勝手な事を言う山賊たち。なら、もう遠慮はいらないだろう。
「そうですか・・・よく分りました。それなら・・やはり貴方達を見過ごすわけにはいきませんね。」
「な?何だ?」
リーダーが首を傾げる。さて・・どんな方法で懲らしめようかな・・?よし!あれにしようっ!幸いここは森の中だし都合がいい。
私は右手の人差し指と中指を口に当てると思い切り口笛を吹いた。
ピ~イッ!
ピ~イッ!
森の中に私の口笛が木霊する。すると・・・。
ドドドドドド・・・・ッ!
背後から物凄い地響き音と、鳥の鳴き声が響き渡って来た。
「な・・何だ?!」
「じ・・・地震なのかっ?!」
「な、何かこっちに向かて来てるぞっ!」
山賊たちは怯え始めた。すると・・・森中に住む動物たちがこちらへ向かって突き進んでくる姿が見えてきた。キツネやタヌキ、クマにシカ、中には小さなマウスまで混じっているが・・何十匹も集まれば彼らにとっては恐怖以外の何物でもないだろう。さらに頭上ではカラスがギャアギャアと鳴きながら彼らの頭上を旋回している。
「ギャアアアアッ!!」
大の男たちが揃いも揃って情けない声を上げて、一目散に逃げだして行く。そして私を追い越して山賊たちの後を追いかける動物たち・・。
やがて、地響きは収まり辺りは静寂に包まれた。
「ふう・・皆が眠っていてくれて助かったわ・・・。」
私は溜息をついた。
今私が使った力は全ての動物を操る力。意識がある人物だけを襲うように命令を下したので・・きっと彼らは気を失うまで襲われるだろう。
「手を抜くように命じたけど・・無事かな?」
私は青い空を見上げながらポツリと呟くとアレックス皇子以外の全員を起こし・・先を急いだ―。
そして背後には護衛の兵士たちが馬の上で気持ちよさそうに眠っている。この分だと恐らく馬車の中にいる護衛の人達も眠っているんだろうな・・。
「さあ、降りてきましたよ。これでいいですか?」
するとリーダーとみられる頬に傷のある30代前後の男が言った。
「へぇ~これは偉く別嬪さんが乗っていたじゃないか?」
「え?本当ですか?」
思わず褒められて笑顔になる。すると馬車の中からヘタレな皇子の声が聞こえる。
「この馬鹿っ!喜んでいる場合かっ?!」
「はい、すみません。」
注意されてしまった。
すると別の山賊が言う。
「オイオイ・・・俺たちゃ知ってるんだぜ?そのお嬢さんの後ろの馬車にはもう1人男が乗ってるんだろう?情けない奴だな~・・・女だけ馬車から降ろして自分は中で高みの見物か?」
「あ!中々いいこと言ってくれますね?本当にそう思いますよ。あなた方は山賊なのに良い人達ですね。」
思わず本音を口走る。
「ば・・馬鹿っ!山賊を褒めるなっ!」
再び声だけで文句を言ってくる皇子。
「おうおう・・気の毒になぁ・・お前さん・・あの馬車の中の男に酷い目に遭わされているんだろう?俺達の所へ来いよ。可愛がってやるぜ?」
別の山賊が言う。
「ええ・・・・でもせっかくのお誘いの言葉ですが・・私達、行かなければいけないところがあるんですよ。なので・・・すみません。なるべく手荒な真似はしたくないので見逃して頂けますか?」
そして頭を下げた。そんな私を見て山賊たちは顔を見合わせ・・全員で大笑いを始めた。
「おい!恐怖で気でも狂ったのかっ?!」
アレックス皇子が窓から顔を覗かせた。・・・全くうるさい人だ。
「アレックス様・・何も出来ないのでしたら、少しお静かに願います。」
私は背中を向けたままアレックス皇子に声を掛けた。
「は?!お、お前・・一体誰に向かってそんな・・・口・・を・・。」
ドサッ!
背後で崩れ落ちる音が聞こえた。・・・どうやら無事に眠ってくれたらしい。そして眼前の山賊たちはまだゲラゲラと笑っている。
「あの~ところで・・少し伺いたい事があるんですけど!」
私は笑っている山賊たちに向かって言った。
「ん?な、何だ?嬢ちゃん。」
リーダー格の山賊は笑いをこらえながらこちらを見る。
「あの、皆さんはずっとここで山賊業を営んでいるのですか?」
「ああ・・営むって言う言い方もなんだが・・・そうだな。」
「そうそう、これが俺達の生きる道よ!」
「嬢ちゃんも一緒に山賊になろうぜ!」
好き勝手な事を言う山賊たち。なら、もう遠慮はいらないだろう。
「そうですか・・・よく分りました。それなら・・やはり貴方達を見過ごすわけにはいきませんね。」
「な?何だ?」
リーダーが首を傾げる。さて・・どんな方法で懲らしめようかな・・?よし!あれにしようっ!幸いここは森の中だし都合がいい。
私は右手の人差し指と中指を口に当てると思い切り口笛を吹いた。
ピ~イッ!
ピ~イッ!
森の中に私の口笛が木霊する。すると・・・。
ドドドドドド・・・・ッ!
背後から物凄い地響き音と、鳥の鳴き声が響き渡って来た。
「な・・何だ?!」
「じ・・・地震なのかっ?!」
「な、何かこっちに向かて来てるぞっ!」
山賊たちは怯え始めた。すると・・・森中に住む動物たちがこちらへ向かって突き進んでくる姿が見えてきた。キツネやタヌキ、クマにシカ、中には小さなマウスまで混じっているが・・何十匹も集まれば彼らにとっては恐怖以外の何物でもないだろう。さらに頭上ではカラスがギャアギャアと鳴きながら彼らの頭上を旋回している。
「ギャアアアアッ!!」
大の男たちが揃いも揃って情けない声を上げて、一目散に逃げだして行く。そして私を追い越して山賊たちの後を追いかける動物たち・・。
やがて、地響きは収まり辺りは静寂に包まれた。
「ふう・・皆が眠っていてくれて助かったわ・・・。」
私は溜息をついた。
今私が使った力は全ての動物を操る力。意識がある人物だけを襲うように命令を下したので・・きっと彼らは気を失うまで襲われるだろう。
「手を抜くように命じたけど・・無事かな?」
私は青い空を見上げながらポツリと呟くとアレックス皇子以外の全員を起こし・・先を急いだ―。
19
お気に入りに追加
772
あなたにおすすめの小説
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・


前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる