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6.欲しいものは手に入れた②〜ロザリー視点〜

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――親友から大切な人を奪うことに意味があったのだ。



私は男の背中を容赦なく睨みつける。
視線に気づいているだろうに、一向に振り向く気配がないのでイライラしてくる。

でも苛立った口調は美しくないから、頬を引きつらせながらも優雅に話す。

「私達で決めたことよ。今の恋人は三等級のこの私でしょ? 覗き見なんて悪趣味な真似やめてね」

この男の性格を考えたら、こうなるだろうとは予想はついていたけど本当に女々しい男。

罪悪感? 情? 自己満足? それとも後悔している自分がお好きなのかしら?
 
彼の心の内を優しく尋ねたりしない。知りたくもないし、仮に知ったとしても寄り添う気などない。

 ふんっ、もう後戻りは出来ないというのにね。


それはこの男だけではなく私も同じ……。


私は絶対に振り返らないわ。


私は心の中で愚かな男をせせら笑う。
この男はそんな私を気にかけることなく、まだ視ていた。

本当に嫌になる、『私の親友は男の趣味が悪い』と思ってから訂正する――元親友と。


「私はお優しい八等級とは違うわ。ナメられるのが許せない質なの。もし今後こんな真似をしたら三等級の実力でお仕置きしてあげる。それともそれがお望みだった? それなら遠慮なく続けて、足腰立たなくしてあげるから」
「…………」

バチバチと私の手のひらの上で魔力が踊り始める。こんな脅しなんて最上位に通じるわけはないと分かっていた。
でも我慢の限界だったのだ。


視るのをやめた変態は、私の前を素通りして一人で塔を降りていく。

……結局一言も喋らなかった。本当に徹底しているというか、ぶれない男である。


あの男の心が欲しかったわけじゃない。
欲しいものは手に入ったのだから、後悔なんてしていない。けれども、流石にあれはないわ……。



「なんであの子は、あんな男と付き合ったりしたのかなー。あれじゃ金魚のほうがましっ! だって喋らなくともパクパクと健気に口を動かすもの」

南の方を見ながら絶縁宣言してきた元親友に愚痴ってみた。
もちろん返事はない。……まあいいけど。

これからあの子はど田舎で生きていく。きっと垢抜けない釣り合った相手と平凡な暮らしを手に入れるのだろう。

――私がそれを欲することはない、だって意味がないから。


「あっはは、だーいすきよ。元親友アリスミ

南の空に向かって声を限りに叫んでみる。すると、規則正しく聞こえていた階段を降りる足音が少しだけ乱れる。

どうやらあの男の耳に届いたようだ。

澄ました男が階段を無様に踏み外す姿を想像し、私は久しぶりに腹の底から笑えた。
 
 
 
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